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2009年5月23日 (土曜日)

ケニー・ドリューのトリオ名盤

米国活動時代は、そのテクニック、その個性の割に、あまり受けなかったケニー・ドリュー。1970年、人種差別問題に嫌気が差し、ついにデンマークに移住。しかし、この北欧移住が大正解。テクニックは超一流。ドライブ感十分。切れ味あるテンションはあるが、そんなテンションの中に、ほのかに優しさというか、丸さというか、ロマンチックな雰囲気がそこはかとなく感じるところが、ドリューの「個性」。その、そこはなとなく漂う「優しさ、丸さ、ロマンチック」な雰囲気が欧州では「うけた」。

さすがに欧州。クラシック音楽を育んだ大陸である。野趣、猥雑、熱気優先のジャズよりも、アーティスティックで、ロマンチシズム漂うジャズの方が「うけた」。しかも、ジャズという音楽を芸術のジャンルのひとつと位置づけ、評価してくれる。ケニー・ドリューも、米国とは違う、この欧州のジャズに対する評価の違いに「救われた」。

その成果の一枚が、1974年5月に録音された『Dark Beauty』(写真左)。パーソネルは、Albert "Tootie" Heath (ds) , Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b)。ドリューにとって、ドラムのヒースとベースのペデルセンは最高のパートナー。

冒頭「Run Away」の出だし、ピアノとベースのチェイスを聴くだけで、もう心は「ワクワク」。う〜ん、ジャズやなあ、これがジャズの音やで〜、と心から思う。そして、ドリューのテクニック溢れるテーマ弾き。バックに、ペデルセンのベースとヒースのドラムが、ドドドドドド〜ンと重量級のビートを供給する。

米国時代のドリューは、超絶技巧なテクニックとドライブ感溢れるアドリブが特徴の割には、なんとなく暗い印象を感じるピアノだった。おそらく、ドリューのピアノのタッチの強さ、少し引きずるようなノリの重さが、そう感じさせるのだろう。でも、そのタッチの強さとノリの重さが、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」で緩和される、というか、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」に置き換わる。

Dark_beauty

(LP時代の収録曲の構成に敬意を表して・・・)

この重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」の存在が、このトリオの肝で、重量級のリズム・セクションをバックにしてこそ、ドリューのそこはなとなく漂う「優しさ、丸さ、ロマンチック」が前面に押し出されてきて、ドリューの個性が良い形で浮き彫りになる。やはり、北欧に来て正解だった。北欧に来たからこそ、ドリューはペデルセンと出会うことが出来たのだ。

2曲目「Dark Beauty」、続く3曲目「Summer Nights」の落ち着いたスローテンポのバラードの美しさはどうだろう。素晴らしいの一言。先に述べた、ドリューの「個性」が最大限に活きている。そして、4曲目の「All Blues」。前の2曲とは打って変わって、ハイテンポのブルースだが、これが絶品。祖リューのタッチの強さとノリの重さが、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」で緩和されて、ドリューのタッチの「明るい」だけが浮き出てきて、聴いていて、実にポジティブな印象を受ける。

LP時代にB面を占めた「It Could Happen To You」「Love Letters」「Silk Bossa」「Blues Inn」は、いずれも名演。ドリュー、ペデルセン、ヒースのトリオの良い面だけが前面に出ていて、実に素晴らしい。LP時代、僕はこのB面を通して聴くのが、実は密かな楽しみだった。特に、ペデルセンのベースが凄まじい。ブンブン音を立てていて、それはそれは、ジャズ・ベースの醍醐味を聴かせてくれている。

ペデルセンのボウイングについては、なかなかのものだ。これくらいの演奏レベルだと、十分、鑑賞に耐える。さすが、クラシックも経験しているペデルセン。ベースのピッチも合っているし、ボウイング時の指のポジショニングも良い。米国で活躍したベーシストは、おしなべてボウイングに何らかの課題を抱えていたが、さすがに、欧州出身のベーシストとのボウイングは頭一つ抜きんでている。ベースなどの基本楽器は、やはりなんらかの形で、クラシックの素養、体験だった教育経験が必要なんだと思う。単なる独学ではきつい。

最後に、CDの収録曲についてクレームを。CDの5曲目「Felicidade」10曲目「In Your Own Sweet Way」11曲目「Stranger in Paradise」は、LP時代未収録。 さすがに、LP時代未収録だけあって、その内容はあまり誉められたものではない。特に「Stranger in Paradise」は酷い。収録する意味は無かったように思う。しかも、最後はフェードアウト。ラストのラストでこれか。一気に興ざめしてしまう。加えて、5曲目に「Felicidade」を入れられたおかげで、LP時代のオリジナルの曲順での雰囲気を頭から通して楽しめなくなった。まったく「いらんこと」をしてくれたもんだ。
 
 
 
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