一石二鳥な「お得な」アルバム
昔、若かりし頃、このアルバムが好きじゃなかった。ケニー・ドリューは「トリオ」に限る、と若い頃、思いこんでいたので、このアルバムを認めることが出来なかった。そう、ブルーノートの4059番『Undercurrent』(写真左)である。
パーソネルは、Freddie Hubbard (tp) Hank Mobley (ts) Kenny Drew (p) Sam Jones (b) Louis Hayes (ds) 。リーダーのケニー・ドリュー (p) に、フロント2管+若き優秀なリズム・セクション。若かりし僕にとっては、このハバードとモブレーの2管が「邪魔」だった。もっともっと、ドリューのピアノが聴きたい。まあ、簡単に言うと、ドリューのピアノが気に入っていたんだろう。
でも、今では違う。このハバードとモブレーの2管のユニゾン、ハーモニーに、ハード・バップの「美味しいところ」を感じて、ウキウキしてしまう。サム・ジョーンズのブンブン唸るベース。ヘインズのドライブ感溢れるドラミング。冒頭の「Undercurrent」を聴いて思う。このアルバムって、一石二鳥な、実に「お得な」アルバムではないのかと。
冒頭の「Undercurrent」。出だしの前奏は、ハバードとモブレーの2管のユニゾンが実に小気味良い。ハードバップ全盛期の良き雰囲気がプンプンする。う〜ん、ええなあ。
そして、疾走感溢れるテーマの演奏があって、そしてそして、きた〜っ、ドリューのソロ。超絶技巧、良く回った右手、力強い左手のブロック・コード。そこはかと漂う、優雅さと気品。ドリューのピアノは、単に黒くてファンキーなだけでは無い。この「優雅さと気品」が彼の個性。
そしてそして、ラストの「Ballade」。絶品のバラード。ケニー・ドリューのピアノの素晴らしい展開。素晴らしいテクニックに裏打ちされた「力強いタッチ」。そして、そのフレーズに、そこはかと漂う「優雅さと気品」。このラストの「Ballade」は絶品である。さすが、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン。この、ドリューの一番美味しいところを、最後の最後に「もってきた」。
昔、ドリューはトリオに限ると思いこんでいた「若かりし頃」。僕は、この『Undercurrent』が理解できなかった。でも、今は違う。ハバードとモブレーの2管は素晴らしい。特に、ハバードのソロは輝かしい。そして、サム・ジョーンズとヘインズのリズム・セクションは、重量感と疾走感があって、とても良い。
そして、ケニー・ドリューは言わずもがな。早いテンポの曲は、超絶技巧で手が良く回る。スローなバラードは優雅で優しい。そして、早いテンポの曲でも、スローなバラードでも、漂う「気品」はドリューならではである。
良いアルバムです。一石二鳥な「お得な」アルバム。ブルーノートの4000番台には、そんな「お徳用な」アルバムがごろごろしている。
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