気になるジャケ『Ole Coltrane』
ジャズのジャケット・デザインには秀逸なものが多い。なぜだか判らないんだが、デザイン的にも優れたものが多い。不思議なんだけど、アートとして十分に通用するものも多々ある。このジャケット・デザインを愛でるのも、ジャズの楽しみでもある。
コルトレーンのアルバムも、ジャケット・デザインの優れたものが多いが、高校時代からズ〜ッと気になるジャケットがある。アトランティック・レーベルからリリースされた『Ole Coltrane』(写真左)。1961年5月の録音。
パーソネルは、Freddie Hubbard (tp) John Coltrane (ss, ts) Eric Dolphy (as, fl) McCoy Tyner (p) Reggie Workman (b-3) Art Davis (b -1,2) Elvin Jones (ds)。
「Ole」という印象的な真っ赤な大文字なロゴタイプ、下に黒字で「Coltrane」。黄色と薄い朱色のツートンカラーがバック。写真は全くあしらわれていない。でも、凄いインパクトのある、印象的なデザイン。
このジャケット・デザインが高校時代から、ズ〜ッと好きで、ロックのアルバムを選びながら、ジャズのコーナーにも立ち寄り、ジョン・コルトレーンという名前だけは知っていたので、そのコルトレーンの箱の中からLPを一枚一枚見ていって、このジャケットに出会った。実に良い感じのジャケット。収録されている音が聴こえてきそうな、迫力あるジャケット。
確かに、このアルバムは、この黄色と薄い朱色のツートンカラーと「Ole」の真っ赤な文字色どおりの、熱気あふれる演奏を収めたもの。伝統的なハード・バップの演奏スタイルを踏襲しつつ、出来る限りフリーに演奏する、そんな次のインパルス時代を予告するような、熱くてフリーな、長尺な演奏が3曲収録されている。
ドルフィーは、結構伝統な枠の中での演奏で収まりながらも切れ味鋭いアルトを聴かせてくれる。ハバードは、フリーキーな演奏を装いながらも、しっかりと、底はハード・バップなトランペットでご機嫌。ベースの二人、ワークマンもアート・デイヴィスも、どちらもブンブン唸りをあげる重量級ベース。どちらも決して悪くない。というか「良い」。敢えて、ジミー・ギャリソンを迎えることも無かったのに、と思うくらいの素晴らしいベース・ワーク。
そして、タイナーのピアノは、ここではもう「打楽器化」している。フリーキーで途切れなく流れるような、コルトレーンの、ドルフィーの、ハバードのソロのバックでは、合いの手のように、打楽器化したピアノを、小粋に挟み込みしかない。和音コードをキープした「打楽器化」したピアノが「和音なビート」を供給する。これが「ミソ」。
コルトレーンは、相変わらず、高中音域だけでテナー・サックスを吹きまくる。高中音域だけで、これだけ多彩な音が表現できるなんて、素晴らしいテクニックである。ここでも「実験、チャレンジ、鍛錬」である。この『Ole』も、コルトレーンらしいアルバムではないか。
良いジャケット、良い演奏。真っ赤な「Ole」の文字。熱い演奏。録音日的には、インパルス時代に入ってからの、アトランティック・レーベルとの契約を消化する為の様な、微妙なタイミングでの録音なんだが、インパルスで残した同時期の録音よりも、僕の耳には「コルトレーン・ジャズ」しているように聴こえる。
伝統の枠の中での、最大限フリーキーな演奏。決して、まだ「スピリチュアルな世界」に足を踏み入れていない、伝統の枠の中での「自由」。僕はこの辺りのコルトレーンが好きだ。
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