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2009年4月14日 (火曜日)

う〜ん、これはバラバラだなあ

長年、ジャズや70年代ロックのアルバムを漁っていると、アルバムの当たり外れもたまにはある。70年代ロックは、ジャズに比べて範囲が狭いのと、聴いたことのないアルバムでも、今までの知識と経験の中で、ある程度、想像できるので、滅多に「外れ」に当たることはない。

でも、ジャズのアルバムは、なかなかに手強い。素晴らしく優れたミュージシャンでも、ジャズの時代時代のトレンドを一線級の立場で渡り歩くのは容易では無い。ハードバップ時代に活躍した優れたミュージシャンでも、フュージョンの時代を経て、メインストリーム・ジャズ復古の80年代まで、一線級で活躍し続けたミュージシャンは数少ない。

最近、ひょんなことで手に入れたアルバムを聴いて、その印象を新たにした。そのアルバムとは、Cannonball Adderleyの『Experience In E』(写真左)である。パーソネルは、Nat Adderley (cor) Cannonball Adderley (as) Joe Zawinul (p) Walter Booker (b) Roy McCurdy (d) William Fisher, Lalo Schifrin (cond) unidentified orchestra、とある。1970年6月の録音。

いや〜、アルバムを聴き終えて、大きく溜息ひとつ。う〜ん、これはバラバラだなあ。ファンク・ジャズあり、フリーキーな演奏あり、ジャズ・オーケストラがバックの大がかりな演奏あり、前衛的な響きがあると思えば、懐かしのハードバップ的な響きも見え隠れする。

とにかく、アルバムとしての、バンド演奏としての統一感は皆無。いかに、キャノンボールのアルバムとはいえ、これはちょっとなあ。内容がバラバラ。何が言いたいのか判らない。当時の流行とジャズとしての根本が「ゴッチャ煮」になった混沌とした内容。
 

Experience_in_e

 
録音した年は、と見れば「1970年」。ジャズは、クロスオーバーと呼ばれるロックとの融合が始まり、ファンキー・ジャズは更にポップとなり混迷を極め、アーティスティックな新しいジャズの演奏形態と旧来からのジャズの俗化が「まぜこぜ」になって、コルトレーンが亡くなって、フリー・ジャズは迷走し、ジャズとしての根本が崩壊寸前の「混沌の時代」。

世間は、ベトナム戦争が長期化し、混迷を極め、フラワー・ムーブメントが横行し、ヒッピー文化が「あだ花」の様に咲き乱れ、秩序も序列も歴史も、何もかもが混沌とした時代で、何が良くて何が悪いか、つまりはスタンダードが判らない様な状況だった。

そんな世情を、そのまま反映したような、Cannonball Adderleyの『Experience In E』。とても、何回も繰り返して聴くような内容ではない。ジャズ・マニアであれば、一度は聴いてみなければならないかもしれないが、ファンの方々には決してお勧めしない内容。このアルバムは聴かなくても問題は無い。

でも、ジャズも大衆音楽のひとつ。この当時の流行とジャズとしての根本が「ゴッチャ煮」になった混沌とした内容を聴くにつけ、録音された1970年という時代を、とても強く感じる。音楽は世相を反映する。音楽は時代を反映する。そんな言葉を再認識させるような、バラバラな内容。

ハードバップ時代から一線級に君臨してきたキャノンボールの、その才能の限界を感じるような、混沌とした内容のアルバムである。ジャズのトレンド毎に、時代の流行毎に変遷を繰り返しながら、進化してきたミュージシャンでも、この時代を乗り切るのは容易ではなかったようだ。

そんな、時代背景に思いを馳せることが出来るのも、ジャズならではのこと。う〜ん、だからジャズは面白い。外れのアルバムにも、それなりの存在価値がある。それがジャズの面白いところである。
 
 
 
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