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2009年3月16日 (月曜日)

狸's Night Out

ジャズのアルバムを聴いていると、時々、ドキッとするくらい素晴らしい演奏に出会うことがある。それが、アルバムに収録されている曲が全て素晴らしいとなると、それはもう至福の時を味わうことになる。まあ、それがジャズ鑑賞の、ジャズ盤のコレクションの醍醐味ではあるんだが・・・。

最近、「これは凄い、これは素晴らしい」と感動したアルバムがある。ルー・タバキンの『狸's Night Out』(写真左)である。2001年11月17日、岐阜県、笠松町、スタジオ「F」で録音されたルー・タバキンのトリオ作品。パーソネルは、Lew Tabackin (fl, ts), Boris Kozlov (b), Mark Taylor (ds) 。

『狸's Night Out』、面白いアルバム・タイトルだなあ、と思って購入して、聴いてみてビックリ。凄い。ルー・タバキンのフルートは尺八のように太く幽玄、かつスピリチュアル。しかも、テナー・サックスのブロウは、ロリンズ直系と言っていい、太くて、低音から高音まで幅広い音階を駆使して、大らか、かつスピード感溢れる、雄大なスケールが聴きもの。

Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Bandの、1980年リリース、偉大なるベース奏者チャールス・ミンガスに捧げられた『Farewell』に収録されている「Autumn Sea(秋の海)」と、1978年にディスコメイト・レーベルからリリースされた、フルート演奏で固めたルー・タバキンのソロ・アルバム『Rites of Pan(邦題:牧羊師の祭典)』で、ルー・タバキンのフルートの凄さは体験済み。

Tanukis_night_out

特に、両方のアルバムに収録された「Autumn Sea(秋の海)」は、邦楽の「春の海」のモチーフが元になった曲で、ルー・タバキンの身の毛がよだつような入魂のフルート・ソロが圧巻。

とにかく、この『狸's Night Out』での、ルー・タバキンのフルートは凄い。その至芸は、1曲目「Wise One」、2曲目「Tanuki's Night Out」、4曲目「Dancing Maja」で聴くことができる。それはそれは、エモーショナルなフルート。幽玄かつ切れ込む様な鋭さ、丸く迫るような音圧。尺八の様な、というのは簡単だが、ルー・タバキンのフルートは、そんな一言で済むような単純なものでは無い。

4曲目は、フラメンコ・タッチな3拍子曲。 ドラマーはカスタネットに徹し、 ベースはフラメンコ風にパーカッシヴで、アルコ弾きも取り混ぜ、バックを支える。 ここでのルー・タバキンのフルートは実にスパニッシュ。これだけ、フルートに様々な音楽の要素を反映できるテクニックの持ち主って、他にいるだろうか。

バックのBoris Kozlov (b), Mark Taylor (ds)も実に良い。ベースはブンブン唸りを上げ、図太いビートを供給し、ドラムも純ジャズよろしく、硬軟自在のドラミングで見事という他に無し。メインストリーム・ジャズここにあり、と言わんばかりの、素晴らしい演奏のオンパレード。

ルー・タバキン、テナーも素晴らしいが、フルートは更に素晴らしい。1978年にリリースされた、ルー・タバキンが、全編フルートを吹きまくっている『Rites of Pan』、誰でも良い。是非ともCD化してくれないだろうか(LPで手に入れておくんだった・・・後悔)。
 
 
 
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コメント

初めまして。

>1978年にリリースされた、ルー・タバキンが、全編フルートを吹きまくっている『Rites of Pan』、誰でも良い。是非ともCD化してくれないだろうか(LPで手に入れておくんだった・・・後悔)。

「牧羊師の祭典」はこの7月にInner CityからCD化されましたが、日本に入ってきた様子はなく、1ヶ月も経たないうちにアメリカのAmazonでも在庫切れ。オーダーはまだ受け付けているようです。

http://www.amazon.com/gp/product/B002FWD544/

私もジャズ・フルートの最高傑作としてCD化を待ち望んでいた1人です。Amazonの在庫の最後の1枚をGetでき、首を長くして到着を待っているところです。

初めまして、hyper_resonanceさん。松和のマスターです。
 
さっそく、米国amazonを覗いてみました。おお、仰るとおり、『Rites of Pan』が
再発されているではありませんか。情報、ありがとうございます。わたしもこの
名盤をゲットすべく努力したいと思います。

いやいや、本当に貴重な情報ありがとうございました m(_ _)m。
 
 

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