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2009年3月 6日 (金曜日)

「ピアノ商人」とは彼のこと

ジャズのミュージシャン達は、どちらかと言えば「職人」の部類に属する人達が多く、あまり商売に長けているという感じでは無い。しかし、中には「機を見て敏なる」を地で行くミュージシャンもいて、これはこれで「たくましいのお〜」と感じ入ってしまう。

商才に長けたミュージシャンとして印象深いのは、ジョー・ザビヌル(Joe Zawinul)。彼はウィーンの出身で、奨学生としてウィーン音楽院に入学するも、自分の求めるものがクラシック音楽ではない事を悟り、バークリー音楽院の奨学生募集の記事を見つけ、これを利用して渡米、 しかし学業もそこそこに3週間後に、メイナード・ファーガソンのバンドオーデションに合格し、ボストンを後にした、とある。これだけでも、いかに「機を見て敏なる」というか「如才ない」というか、ちょっと呆れてしまう。

そんなザビヌルである。ジャズの世界に身を投じた後も、それはそれは「機を見て敏なる」経歴を誇っている。とにかく、その時代その時代の「トレンド」というか「売れ筋」を見極めるのが、実に上手い。ファンキー・ジャズ華やかかりし頃には、キャノンボール・アダレイのバンドメンバーとなり、およそ9年間在籍。キャリア・アップの為に、ちゃっかりとマイルス・デイヴィスのバンドにも在籍。

そして、エレクトリック・ジャズに商機を見いだしたザビヌルは、1970年、ウェイン・ショーター、ミロスラフ・ヴィトウスらとともにウェザー・リポートを結成。初期の頃はコズミックなジャズを展開するが、受けが悪いと感じると、直ぐにアーシーでポップなフュージョン・ジャズに鞍替え。時代の寵児となる。

そして、晩年、ワールド・ミュージックのトレンドが到来すると、かねてより積極的に取り入れていたワールドミュージックの要素を前面に押し出し、再び大きな話題を呼ぶ事に成功する。いやいや、これだけ、ジャズの流行を追い求め、それぞれの流行の中で成功し続けたミュージシャンは、ザビヌルだけだろう。

Money_in_the_pocket

そんな商魂たくましいザビヌルのファースト・リーダー・アルバムが『Money in the Pocket』(写真左)。1966年のリリースである。このファースト・アルバムを聴くと「三つ子の魂百まで」という諺を思い出す。とにかく、実に商才に長けたアルバム内容である。

このファースト・アルバムを聴くと、ザビヌルの自信と商魂が見え隠れするのが面白い。とにかく「俺はなんでも出来るんだ」と高笑いしているような、当時、ジャズの世界で流行っていたスタイルを全て総動員したような内容に、ちょっと「呆れる」(笑)。

出だしは、キャノンボールのファンキー・ジャズ、そして続くは当時アーティスティックなスタイルとして持てはやされた「新主流派のモーダルなジャズ」、バド・パウエルばりのバップ・ソロ、コルトレーン・カルテットのマッコイ・タイナーの様な硬質でパーカッシブなタッチ、ホレス・シルバーのようなファンキー・ジャズ。ゴスペルチックなソウル・ジャズ。いやはや「俺は何でも出来るもんね〜」と言わんばかりの「ジョー・ザビヌル・ショーケース」(笑)。

確かに「器用貧乏」的なバラバラさは気になるが、ザビヌルのピアノは、個性は見えないにせよ、しっかりしているし、各曲の作曲、アレンジは秀逸。ポップスの世界に、ヒット曲を量産する「職業作家」というジャンルの人々がいたが、さしずめ、ザビヌルは、ジャズ界の「職業作家」と言って良いと僕は思う。

「ピアノ商人」とは彼のこと。別に悪い意味で揶揄しているんではありません。ジャズの世界にも、商才に長けたミュージシャンがいるっていうこと。商才に長け、如才なく立ち回っているけれど、ザビヌルの残した曲やアルバムは、後生に伝えられるべき水準をクリアしていると思います。

でも、このファースト・アルバムの『Money in the Pocket』の根底に流れる商魂には、凄まじいものを感じますね〜。「俺はなんでも出来るんだ。どうだ、どの路線が一番ジャズ・ファンに受けるんだい」と言いながら、ニンマリと笑うザビヌルがそこに立っているようです(笑)。
 
 
 
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