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2009年3月11日 (水曜日)

心地の良いエモーション

1960年代の終わりから、1970年代前半は、メインストリーム・ジャズの暗黒時代であった。米国のジャズ・シーンは、クロスオーバーからフュージョン全盛となり、電気楽器中心のジャズにシフトした。

といって、アコースティック・ジャズが廃れた訳ではない。意識あるミュージシャンによって、しっかりと引き継がれてはいた。しかし、環境は厳しく、生活に事欠くことがほとんどだったらしい。欧州へ移住する者も多々いた。

欧州では、ジャズは芸術として扱われていた。パリのサンジェルマンなど、多くの好意的な観客の中で、演奏することが出来た。昨日ご紹介したデックスや、アルト・サックスのジャキー・マクリーン、ピアノのケニー・ドリューやデューク・ジョーダンなどがそう。

そして、その欧州で活躍するミュージシャンの演奏をアルバムとしてリリースし、世界に紹介し、情報を発信したレーベルのひとつが「スティープル・チェイス」である。このレーベルからリリースされているアルバムは、どれもなかなかの内容を誇るものばかり。ジャケ買いしても「ハズレ」が少ない、優れたアルバムが目白押しである。

Archie Shepp (ts) & Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) の『Looking At Bird』もその一枚。あまり、ジャズ紹介本などでは見かけないアルバムなんだが、さすがスティープル・チェイス、実に素晴らしい内容のデュオ・アルバムである。
 

Looking_at_bird

 
フリー・ジャズを経験した、正統でテクニックが確かなテナー奏者が、メインストリーム・ジャズの枠の中で、抑制の効いた演奏をさせると、それはそれは素晴らしい演奏を聴かせてくれることが多いが、このアルバムでのArchie Sheppは、実に素晴らしい。低音〜高音まで、実に幅の広い音域で、これぞテナーというブロウを聴かせてくれる。心地良いエモーションとはこのこと。

そのArchie Sheppにも増して素晴らしいのが、Niels-Henning Ørsted Pedersen(写真右)のベース。もともとこの人のベースは、音が太くて、ブンブン唸りを上げ、メロディアスかつエモーショナルな、ビートの効いたベースをコンスタントに聴かせてくれるが、このアルバムは、何時にも増して、ベースの躍動感が凄い。

しかも、ピッチがぴたっと合っていて、旋律を弾き進めていく音の響きは、唄うような、エモーショナル溢れる、タイトで鳴り響くようで、これはもう「快感」に近い。これ、なかなかお目にかかれない、いや、お耳にかかれないベースの至芸だと思います。

『Looking At Bird』は、アルバム・タイトルどおり、バード、つまり、不世出の伝説のアルト奏者、チャーリー・パーカーにまつわる楽曲を集めて演奏されており、これが、パーカーの演奏をなぞらえるのではなく、Archie Shepp と Niels-Henning Ørsted Pedersen で、個性溢れる演奏に仕立て上げられているところが聴き所である。

ジャケット・デザインもさりげないが、ジャズらしいジャケットで好感が持てる。スティープル・チェイスというレーベルは、ジャケット・デザインも優れたものが多く、さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良いかもしれない。
 
 
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