Crusaders の傑作中の傑作
ジャズの歴史の中で、1970年代を席巻したフュージョンというジャンルは、「時代のあだ花」だったと決めつける人もいる。今では、フュージョンはノスタルジアを求めて聴く、一部のマニアのみが聴いているだけだと決めつける人もいる。
そうかなあ。フュージョンって、そもそもがレコード会社や職業評論家の方々のいわゆる「売る側」と、我々ファンである「聴く側」が、ジャンル分けの為に便宜上付けた「ジャンル名」であって、明確なスタイルや内容の定義がある訳では無い。そもそも曖昧なんだよね。
確かに、アコースティック楽器が中心の純ジャズ、メインストリーム・ジャズこそが、唯一ジャズである、という観点から、フュージョンと呼ばれる音楽を見ると、絶対にジャズじゃないだろうな。でも、それだけのことでしょう。
音楽、つまりはポップ・ミュージックという広い観点から見ると(ジャズもポップ・ミュージックの一種なんだけど)、フュージョンって呼ばれるジャンルにも、音楽的に「かなりの成果」を上げたアルバムは多々ある、と僕は思っている。
ポップ・ミュージックという観点から見たフュージョンとして、傑作と呼ばれるアルバムは多々あるが、フュージョン・ブームもピークを越え始めた1979年にリリースされた、クルセイダーズ(The Crusaders)の『ストリート・ライフ』(写真左)も、その傑作の一枚。
ランディ・クロフォードの歌をフィーチャーしたタイトル曲、冒頭の「ストリート・ライフ」を始めとして、このアルバムに収録した全ての曲が傑作であり、演奏も白眉なもの。確かに、このアルバムは「ジャズ」では無い。でも、ジャズのテイストを底に偲ばせ、ポップス、R&B、ファンク等々、当時の米国ポップス音楽の数々の要素を織り交ぜて、素晴らしくポップでファンキーな「フュージョン」が展開されている。
ジョー・サンプルのキーボード、ウィルトン・フェルダーのサックス、スティックス・フーパーのドラムス。どれを取ってみても優れた演奏ばかりで、スカッとした爽快感が溢れていて、実に気持ちが良い。インプロビゼーション部の展開も切れ味良く、収録された6曲を一気に聴き通してしまう。
このアルバムって、傑作だと思うし、名盤だと思う。1970年代当時、「売る側」と「聴く側」が便宜上名付けた「フュージョン」というジャンル名の音楽って、決して「時代のあだ花」だとも思わないし、今の時代にマニアだけの「オタクな音楽」とも思わない。
音楽には「良い音楽」と「悪い音楽」の2種類しかない、という名言があるが、その名言を借りるなら、フュージョンの中にも「良い音楽」は多々ある、ということ。
アコースティック楽器が中心の純ジャズ、メインストリーム・ジャズこそが、唯一ジャズである、っていう決めつけはしたくないなあ。「良い音楽」であれば、ジャズとかフュージョンとか、あんまり「ジャンル分けの言葉」なんて関係ないと思うけど・・・。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« ジャズの小径・09年3月号の更新 | トップページ | ペトルチアーニの「音の礎」 »
コメント