『My Favorite Things』を聴く。
なんだか精神的に疲れが出た。体調が思わしくないので、音楽も聴き慣れたアルバムが良い。たまには初心にかえって、ジョン・コルトレーンを聴く。
昔々、ジャズを聴き始めた頃、やはりジャズと言えば、聞きかじりの知識だけで、マイルス、コルトレーン、バド、パーカーなどを聴かなければならない、と思い立つ。何から聴いて良いかも判らない。今からかれこれ30年以上前のことである。情報と言えば、ジャズの入門本、アルバム紹介本が数冊。ネットで色々と情報の取れる今とは違う、圧倒的に情報不足の時代。
ジョン・コルトレーンには苦心した。まず最初に購入したアルバムが『至上の愛』。これが曲者だった。なにが良いのか判らない。ジャズの紹介本には「名盤中の名盤」とある。これが判らない奴はジャズを聴く資格がない、って感じの評論がズラリと並ぶ。大いに自信が揺らいだ。
「サウンド・オブ・ミュージック」という映画が大好きだ。何度繰り返し見ただろう。その中の有名曲に「My Favorite Things」というのがある。雷を怖がる子供たちを「楽しいことを考えて」とマリアが励ます場面で使われる曲。そうそう、JR東海「そうだ 京都、行こう」のコマーシャルにも使われている(笑)。
このちょっと風変わりなコード展開を持つ名曲をアルバム・タイトルに頂いた『My Favorite Things』(写真左)。ジャズを聴き始めて、手に入れたコルトレーンの2枚目のアルバム。ジャケットは平凡。でも、ジャズの紹介本からすると「これも名盤中の名盤」。
初めて聴いた時、冒頭のタイトル曲「My Favorite Things」のコルトレーンのソプラノ・サックスについては「なんて下手なんだ」。一応、幼稚園の時からクラシックに親しんだ経験がある。オーケストラも生で何回も何回も聴いた。アルト・サックスも吹くことができる。その経験に照らし合わせると、どうしても、このコルトレーンのソプラノ・サックスが下手に聴こえて仕方がない。
でも、ジャズの紹介本には「コルトレーンのソプラノは素晴らしい」とある。当時、自信を無くしたなあ。最近のジャズ本や雑誌を見ると、この『My Favorite Things』のソプラノ・サックスはイマイチという評価になって「ホッ」としている。そうだよな、あまり上手くないよね。
それよりも、2曲目のバラード「 Ev'ry Time We Say Goodbye」の、ビブラートの無い、真っ直ぐなサックスの音。そのストレートな音のシンプルなバラード表現に、コルトレーンの個性を感じるし、高速シーツ・オブ・サウンドの3曲目「Summertime」の目眩くバカテクの世界に、コルトレーンの魅力を感じる。
バックの、エルヴィン・ジョーンス(ds), マッコイ・タイナー(p), がやっとコルトレーン好みの機能を果たしだした跡が良く判る。あとはベースを待つだけ。スティーヴ・デイヴィスのベースはちょっと不安定で、他のメンバーと少し距離がある。
聴き直してみて、この『My Favorite Things』って、結構、難しいアルバムですね。とても、ジャズ初心者の方が聴いて楽しめるアルバムでは無いですね。コルトレーンが初めてソプラノ・サックスに手を染めた記念すべきアルバムではあるんですが、手に取るのは、ジャズ中級レベルになってからでも遅くはありません。ゆめゆめ焦ることなかれ、です(笑)。
体調が思わしくなくて、聴き慣れたアルバムをゆったりとリラックスして聴こう、と思ったんですが、ちょっと真剣に聴いてしまいました。これでは体調が回復しない(笑)。もう少し、リラックスして聴けるアルバムを選ばなければ・・・。
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