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2009年2月 1日 (日曜日)

彼が音の「キーマン」である

ピンク・フロイド。実験的な音楽性やスペクタクル性に富んだライブ、現代社会における人間疎外や政治問題をテーマにした文学的・哲学的な歌詞で人気を博した、70年代プログレを代表する英国バンド。ブルースを出発点とする演奏は、独特な浮遊感・陶酔感を湛えている。

彼らの演奏技術は、細かい符割りや変拍子とは全く無縁なもので、どちらかと言えば「雰囲気で聴かせる」バンドである。まあ、ハッキリ言って、バンド全体の演奏技術は「下手」な部類である。その中で、演奏技術水準以上であるミュージシャンは二人。ギターのデヴィッド・ギルモアとキーボードのリック・ライト。

最近、デヴィッド・ギルモアのファースト・アルバム『David Gilmour』(写真左)を聴くんだが、このアルバムを聴くにつけ、ピンク・フロイド独特の音は、ギルモアのブルースを基調とした独特なギターのトーンにある、とつくづく思うのだ。1978年のリリース。時代は70年代ロックの黄金時代を過ぎて、プログレには逆風の「パンク」の時代。

音の雰囲気、フレーズの重ね方、タイムの取り方、間の取り方。このファースト・アルバムを聴いていると、「これって、ピンク・フロイドのアルバムか?」って思ってしまうほどの強烈な個性的なエレキ・ギターが素晴らしい。

でもアルバム全編を通じて、「これって、ピンク・フロイドのアルバムか?」って思われないように、曲調は若干「メジャー調」、神秘性を損ねない程度に「ポップな雰囲気」を意識的に前面に出していて、とにかく「工夫」を重ねている。涙ぐましい努力です(笑)。ピンク・フロイドの音との決定的な違いは「ちょっと明るくて、リズミカルでダンサフル」なことかな。

David_gilmour

「忍ぶれど色に出にけり・・・」というが、曲調がマイナー・キーに転調すると、たちどころに「ピンク・フロイド」になるところが面白い。やはり、ピンク・フロイドの独特な浮遊感・陶酔感は、ギルモアのギターに負うところが大きい。

ピンク・フロイドの独特な浮遊感・陶酔感を表現するブルージーな音の基盤はギルモアのギターが基点だということを、このギルモアのファースト・アルバムを聴いていて確信します。ギルモアのブルージーな音とリック・ライトの色彩豊かなキーボードが混ざり合って、ピンク・フロイドの音が出来上がるって寸法。

通常のバンドは、リズム・セクションであるベースとドラムが基調となってバンドのグルーブが創り出されるのだが、ピンク・フロイドは正反対。ベースとドラムは、お世辞にも上手いとは言えない。特にドラムは「雰囲気のみで聴かせる」ドラムで、ドラムというよりは、効果的な「音」の構成要素のひとつになっている。ベースは曲のベース音を押さえるのみで、決してグルーブを生み出す源にはなっていない。

デヴィッド・ギルモアとリチャード・ライト。この二人無くして、ピンク・フロイドの音無し。デヴィッド・ギルモア無くして、ピンク・フロイドの音無し。ベースのロジャー・ウォータースと袂を分かった時、「ピンク・フロイド」のバンド名を引き継いだのは、デヴィッド・ギルモアだったが、これは振り返って見れば、大正解だった。

ロジャー・ウォータースの「アジテーションな歌詞」も、デヴィッド・ギルモアとリチャード・ライトが創り出す「ピンク・フロイド」の音が無いと、ただの「アジテーションな歌詞」のままで、何の化学反応も起こさない。

このデヴィッド・ギルモアのファースト・ソロアルバムは、実に「意味深な」アルバムだった。ピンク・フロイドの「音」のキーマンは誰なのか。このアルバムを聴けば、自ずとその答が判る。そんな「深い内容」を伴ったソロアルバムだった。
 
 
 
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