ペトルチアーニとの出会い
昨日、Dreyfusレーベルのペトルチアーニのお話しをしたが、今日は、そのペトルチアーニとの出会いのお話しをしたい。
ペトと出会ったのは、1990年代前半だったと思う。ペトを初めて認めたアルバムが、Michel Petrucciani『Live at the Village Vanguard』(写真左)。Blue Noteレーベルの所属ミュージシャンだった頃のペトの傑作ライブアルバムである。
もともとは、1984年のリリースで、発表当時は2枚組LPだったこの作品。1984年当時は、全く注目しなかった。というか、僕もまだまだ若くて、仕事が忙しく、ジャズを聴く暇もない。落ち着いてジャズを聴くのは、1ヶ月に1〜2回、土日出勤した時の夕方、ジャズ喫茶に寄って、1枚だけリクエストして、他の人のリクエストと併せて、2〜3枚を聴くのが、ささやかな楽しみ。さすがに、ペトまで行き着かなかった。
1990年代前半、このアルバムをCDで聴いた。確かジャズ喫茶だったと思う。誰かがリクエストした。冒頭の「Nardis」で度肝を抜かれた。ビル・エバンスのようで、ビル・エバンスよりタッチが強力で、エッジが立って切れ味鋭く、重量級のジャズ・ピアノでありながら、疾走感溢れるテクニックで、展開は軽やか。決してシリアスに留まらない。ピアノの音色は美しく、それでいて太い。奏でる旋律はメロディアス。
「なんや〜これ〜。誰や〜これ〜」と思って、思わずカウンターまでジャケットを見に行ったのを覚えている。ドラムはエイオット・ジグモンド、ベースにパレ・ダニエルソン。そういえば、エイオット・ジクモンドは、かつて、ビル・エバンスのバックで叩いているし、パレ・ダニエルソンは、かつて、キース・ジャレットのバックでプレイしている。う〜ん、最強のバックやなあ。
では、この『Live at the Village Vanguard』で、ペトは、ビル・エバンスとキース・ジャレットの2人のジャズ・ピアノ・スタイリストの影を追っているのか、と思うのだが、それが違うんですね。エバンスとキースのスタイルがほのかに見え隠れするだけで、ほとんどがペトルチアーニの個性的なピアノだらけ。このライブで、ペトルチアーニは完全に、ジャズ・ピアニストの「スタイリスト」の一人になっている。
凄いジャズ・ピアノ・トリオのライブ・アルバムですぞ。シリアスなジャズあり、メロディアスでポジティブな楽しいジャズあり、リリカルな美し響きのジャズあり。ライブ・アルバムならではのダイナミズムも抜群で、あっと言う間に聴き終えてしまいます。ミシェル・ペトルチアーニを体験するなら、まずはこのライブ・アルバムではないでしょうか。良いアルバムです。
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