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2009年2月の記事

2009年2月28日 (土曜日)

チェットの異色のライブ盤です

70年代はフュージョンの時代。70年代初頭、ジャズとロックの融合がメインの「クロスオーバー」というジャンルから端を発し、ジャズを基調にロックやファンク、R&B、電子音楽、ワールドミュージックなどを融合(フューズ)させた音楽のジャンルとして、「フュージョン」というジャンルが定着、一世を風靡する。特に、70年代は電気楽器をベースとしたロック、R&Bとの融合がメインだった。

そんなフュージョンの時代、50年代のハードバップ時代からのベテランミュージシャンは、どうしていたのか。意外と根強く、ガッチリと逆風の時代を生きていた様子が伺えるアルバムが多々あって、実に頼もしい限りである。そんな、ベテランミュージシャンを中心に、70年代ジャズの様子が垣間見えるアルバムの一枚が、Gerry Mulligan & Chet Bakerの『Carnegie Hall Concert』(写真左)。

マリガンとベイカーはもう晩年期に差し掛かっていたとは言え、なかなか小気味よい内容のある演奏を聴かせてくれる。でも、このライブ・アルバムの興味は、当時、まだ名前の売れていなかったギターのジョン・スコフィールド、ピアノ&キーボードのボブ・ジェームス、ドラムのハービー・メイソンの演奏。

特に、フュージョンの人気者ボブ・ジェームス(写真右)のアコースティック・ピアノとフェンダー・ローズを駆使した「純ジャズ」的な演奏は実に興味深い。ボブ・ジェームスのピアノは、直前の時代はフリー・ジャズをしていたにも関わらず、ビル・エバンスの流れを汲むリリカルな響きと、まるで、ハービー・ハンコックの様な新主流派的な節回しには「目から鱗」です。ボブが、こんなにアコースティック・ピアノを「純ジャズ」的に弾けるとは思わなかった。
 
 
Mulligan_baker_concert
 
 
しかも、そのアコースティック・ピアノの上をいくのが、ボブのフェンダー・ローズ。電気ピアノ系は、その独特な響きから、電気ピアノならではの弾き方をしないと、その電気ピアノ的な特徴が活きないのですが、このライブ・アルバムでのボブ・ジェームスのフェンダー・ローズの扱いは素晴らしい。フェンダー・ローズを純ジャズ的に弾きこなす名手としては、チック・コリアが一番に思い浮かぶのですが、このチックと比較しても遜色無い、なかなかのフェンダー・ローズを聴かせてくれます。

加えて、思わずニヤリとしてしまうのが、ジョン・スコフィールドのギター。この時代で、早くも彼独特の「アウト・フレーズ」を連発していて、一聴すると「誰や〜、この歪んだフレーズを連発するギタリストは〜」と思ってしまいます。パーソネルを確認すると、ジョン・スコフィールドと判り、至極納得します。

ドラムのハービー・メイソンも、トニー・ウイリアムス顔負けのスーパー・ドラミングを聴かせてくれる。デイヴ・サミュエルズの爽やかなヴァイブ・サウンドも良い。唯一、ロン・カーターのベースは、70年代特有の「ボヨン、ブヨン」とした増幅音豊かなベースで、ちょっと閉口するけど(笑)。でも、いつもよりピッチはあっているみたいなので、まあ「ええか」。

70年代、フュージョンの時代の中で、異色の「純ジャズ」ライブ・アルバムだと思います。LP時代では「2枚組」で出ていたものが、CDでは1枚に集約され、お値段も、amazonで690円(本日現在)と、相当にお得感があります。なかなか良い内容なので、一聴をお勧めしたい、異色のライブ・アルバムです。
 
 
 
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2009年2月26日 (木曜日)

Akiko Graceのピアノって

寒い一日。我が千葉県北西部地方は、2月の中旬は観測史上初の夏日も含めて暖かい日が多かったが、2月も終わりになって、鉛色の空と寒い日が続いている。まあ、2月下旬〜3月中旬の千葉県って、南岸低気圧の影響で、雪がふったり、寒い日が続いたりするので、慣れていると言えば慣れてはいるが...。

さて、ジャズの演奏では、カルテット(4人編成)やクインテット(5人編成)等々、数人で組んでのバンド演奏が主であるが、編成が少なければ少ないほど、そのアルバム・リーダーのミュージシャンとしての本質が露わになってくる傾向が強い。

究極の小編成が「ソロ」(一人だけ)で、これこそ、演奏するミュージシャンはひとりなので、一番にそのミュージシャンの本質が露わになるかと思いきや、なかなかそうならないところが音楽の面白いところで、他に影響する人がいないので、ソロのミュージシャンは、結構我が儘に振るまうことが出来る。つまり、ソロは、そのミュージシャンのグループサウンドを前提として本質が出てこないので、ちょいとバランスの悪い編成である。

では、ソロとしての本質とグループサウンドを前提としての本質の両方が現れ出て、そのミュージシャン本質を掴みやすい編成というのは「デュオ」(2人編成)若しくは「トリオ」(3人編成)だろう。

最近、レンタル落ちで、Akiko Grace(アキコ・グレース)の『WOWOW wave2 JAZZ Street ~The Duo+』(写真左)を手に入れた。アキコ・グレースが持っているラジオ番組から生まれた1枚で、タイトルをご覧頂ければ判るが、ラジオ番組のゲストとのデュオ曲集なのだ。
 

Akiko_grace_duo

 
ヴァイオリン、ギター、フルート、サックス、ベース。それぞれ、ラジオ番組のゲストとのコラボレーションなので、それぞれ、演奏の雰囲気から全体を覆う音のカラーが違っていて、実に楽しいアルバムである。加えて、デュオ編成の演奏ばかりが集められたアルバム故に、アキコ・グレースのピアノの本質が明快に出ていて、実に興味あるアルバムに仕上がっている。

アキコ・グレースのジャズ・ピアノは、意外に過去のジャズ・ピアニストの影響を受けていないように見受けられる。敢えて言うなら、ビル・エバンスの流れを汲むということになるのだろうが、タッチは硬質で、ジャズ独特の粘りが少ない。一聴するだけだと、クラシックのピアニストがジャズ・ピアノをやっている感じなのだ。

クラシックのピアニストがジャズをやる、というパターンで有名なピアニストに、アンドレ・プレビンがいるが、このプレビンに似ている。端正で硬質で粘らないタッチが特徴で、音の重ね方響きがクリア。それでいて、インプロビゼーションのノリは「ジャズ」のノリであるが、あからさまなノリでは無く、実に奥ゆかしいノリなのだ。この辺りが、アキコ・グレースのジャズ・ピアノの本質ではないかと、このデュオアルバムを聴いていて思った。

最近、新譜として『PIANORIUM』という四季折々のテーマが盛り込まれた書き下ろしの新曲を、スタインウェイのピアノで奏でるという、ソロ・ピアノ集をリリースした。このピアノのスタイルと響き、ノリがアキコ・グレースのソロとしての本質なんだろう。

『WOWOW wave2 JAZZ Street ~The Duo+』ではとグループサウンドを前提としての本質が良く判り、アキコ・グレースのピアノは、過去のジャズ・ピアニストの影響が少ない、新しいジャズ・ピアニストとしてのスタイルを持っていると思う。まだまだ時間はかかるとは思うが、先が楽しみなピアニストの一人であることは間違いない。

ガーン、ゴーンと弾きまくるだけがジャズ・ピアノでは無い。ジャズは、奥が深く、幅が広い、包容力のある音楽ジャンルの一つなんだから...。これはジャズではない、これはジャズである、と決めつける必要は無いと思いますね〜。アキコ・グレースのピアノの「これから」を見守って行きたいと思います。 
 
 
 
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2009年2月25日 (水曜日)

プログレも「ぶっ飛ぶ」内容

70年代ロックについては、プログレからドップリ浸かったので、70年代のプログレについては、造詣が深いつもりである。ロックの世界では「プログレ」は超絶技巧のテクニックで、明らかにアカデミックな内容を誇るのであるが、ジャズの世界に照らし合わせると、劣勢は否めない。

最近、ミシェル・ペトルチアーニやジョン・コルトレーンなど、純ジャズのハードな世界を聴きまくっていたので、さすがに「耳休め」のアルバムが聴きたくなる。通常は、70年代ロックに走るのだが、今回は、70年代フュージョンのシンセ・フュージョンに走る。

Billy Cobham(ビリー・コブハム)の『Inner Conflicts』(写真左)を聴く。gにJ.スコフィールド、S.カーン、hornにブレッカーBros.、E.ワッツ、bがA.ジョンソンで、keyにはD.グロルニック。参加メンバーが凄い。でも、固定メンバーを中心としたバンド的な演奏では無く、ゲスト・メンバーを要所要所に使っての、名実共に、ビリー・コブハムのソロ・アルバムである。
 

Inner_conflicts

 
1曲目のシンセサイザー・ファンク・ジャズが凄まじい。70年代のプログレも「ぶっ飛ぶ」勢いである。2曲目の「Muffin Talks Back」、3曲目「Nickels and Dimes」、4曲目「Barrio」は、目眩くエレクトリック・ファンク・フュージョンのオンパレードで、聴きやすく、ノリのある、なかなかの内容で、やっぱり、ジャズ畑出身のロック的演奏は凄い。

そして、ラストの「Arroyo」は、再び、シンセサイザー・ファンク・ジャズに戻って、シンセサイザーの使い方などなど、その内容は素晴らしいの一言。ジャズのジャンルでこれだけシンセサイザーを駆使する演奏というのは、当時の環境では例を見ない。フュージョンの世界でも、これだけあからさまに、シンセサイザーを前面に押し出した演奏は例を見ないので、なかなか正統な評価を得られ無いのは仕方の無いこと。

でも、シンセサイザーを駆使している70年代プログレの演奏と比べると、このビリー・コブハムの『Inner Conflicts』が、如何に優れているかが判る。その「肝」は何か。それは、シンセサイザーの演奏を支えるバックの「ビート」である。ジャズで鍛えられた、正確で粘りのある「ビート」が、シンセサイザーの旋律の底辺を支える。そこが「肝」なのだと僕は睨んでいる。
 
 
 
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2009年2月24日 (火曜日)

ペトルチアーニとの出会い

昨日、Dreyfusレーベルのペトルチアーニのお話しをしたが、今日は、そのペトルチアーニとの出会いのお話しをしたい。

ペトと出会ったのは、1990年代前半だったと思う。ペトを初めて認めたアルバムが『Live at the Village Vanguard』(写真左)。Blue Noteレーベルの所属ミュージシャンだった頃のペトの傑作ライブアルバムである。

もともとは、1984年のリリースで、発表当時は2枚組LPだったこの作品。1984年当時は、全く注目しなかった。というか、僕もまだまだ若くて、仕事が忙しく、ジャズを聴く暇もない。落ち着いてジャズを聴くのは、1ヶ月に1〜2回、土日出勤した時の夕方、ジャズ喫茶に寄って、1枚だけリクエストして、他の人のリクエストと併せて、2〜3枚を聴くのが、ささやかな楽しみ。さすがに、ペトまで行き着かなかった。

1990年代前半、このアルバムをCDで聴いた。確かジャズ喫茶だったと思う。誰かがリクエストした。冒頭の「Nardis」で度肝を抜かれた。ビル・エバンスのようで、ビル・エバンスよりタッチが強力で、エッジが立って切れ味鋭く、重量級のジャズ・ピアノでありながら、疾走感溢れるテクニックで、展開は軽やか。決してシリアスに留まらない。ピアノの音色は美しく、それでいて太い。奏でる旋律はメロディアス。

Pet_village_vanguard

「なんや〜これ〜。誰や〜これ〜」と思って、思わずカウンターまでジャケットを見に行ったのを覚えている。ドラムはエイオット・ジグモンド、ベースにパレ・ダニエルソン。そういえば、エイオット・ジクモンドは、かつて、ビル・エバンスのバックで叩いているし、パレ・ダニエルソンは、かつて、キース・ジャレットのバックでプレイしている。う〜ん、最強のバックやなあ。

では、この『Live at the Village Vanguard』で、ペトは、ビル・エバンスとキース・ジャレットの2人のジャズ・ピアノ・スタイリストの影を追っているのか、と思うのだが、それが違うんですね。エバンスとキースのスタイルがほのかに見え隠れするだけで、ほとんどがペトルチアーニの個性的なピアノだらけ。このライブで、ペトルチアーニは完全に、ジャズ・ピアニストの「スタイリスト」の一人になっている。

凄いジャズ・ピアノ・トリオのライブ・アルバムですぞ。シリアスなジャズあり、メロディアスでポジティブな楽しいジャズあり、リリカルな美し響きのジャズあり。ライブ・アルバムならではのダイナミズムも抜群で、あっと言う間に聴き終えてしまいます。

ミシェル・ペトルチアーニを体験するなら、まずはこのライブ・アルバムではないでしょうか。良いアルバムです。
 
 
 
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2009年2月23日 (月曜日)

没後10年...ペトルチアーニ

今回、大のお気に入りジャズ・ピアニストの一人、Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ・以下ペトと略)の『Complete Dreyfus Recodings』を手に入れた。Dreyfusレーベルからリリースされたアルバム10作品(CD12枚)、未発表DVD2枚が入った、煌めきの超弩級ボックスセット。

Dreyfusレーベルのペトのアルバムは、単品で買うと、輸入盤の割に割高で、ちょと購入を躊躇っていた。それが、である。この煌めく超弩級のボックスセットが、なんとなんと、amazonにて、12,459円で手に入った(今日の時点では在庫切れみたいなんですが...)。DVDを除いても、1枚当たり1,250円。小遣い叩いても、全くのお買い得である。

ペトはフランス出身のジャズ・ピアニスト。遺伝的原因から、生まれつき骨形成不全症という障害を背負いながらも、その障害を克服しつつ、ジャズ・ピアニストとして、高い評価を得るまでになった。若い頃から体質上「寿命は20歳程度まで」と言われていたらしいが、実際にはそれよりはるかに寿命を長らえて活躍、NYで死去した時は36歳だった。
 

Petrucciani

 
ペトのスタイルは、ビル・エバンスに端を発するが、エバンスよりもタッチは硬質でエッジが立っており、欧州出身のジャズ・ピアニストに良くある特徴である「クラシック・ピアノの香り」がほのかにする端正なピアノが特徴。テーマ、インプロビゼーション共に旋律を追うことができるほどに美しく、メジャー調の曲のポップな雰囲気が特徴で、ジャズ・ピアニストの中で、唯一無二のスタイルを持った、いわゆる「スタイリスト」の一人。1980年代~1990年代を代表するジャズ・ピアニストの一人である。

Dreyfusレーベルのペトは、彼のミュージシャン生活の後半を彩るもので、確立されたスタイルと確信を持った演奏内容が素晴らしい、ペトを愛でるには絶対に外せないアルバム群である。それが、今回、手に入ったのである。もう心は「狂喜乱舞」である。

さあ、今年のジャズ・ライフの中心が決まったぞ。「ペト」だ。ミシェル・ペトルチアーニだ。ペトを愛で、ペトを研究し、ペトを極めたい。ブルーノート・レーベルの諸作はまあまあのレベルでコレクションしてあるので、さあ、ペトを聴き極めるのだ。
 
 
 
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2009年2月22日 (日曜日)

ジャズの小径・2月号の更新です

少し寒い日が続いている。でも、もうグッと冷え込むことは無いし、日中、風が止むと日差しが暖かい。よくよく見ると、日差しが豊かになってきている。日差しはもう「春の日差し」の雰囲気である。春は近い。季節の変わり目に差し掛かった感のある、我が千葉県北西部地方である。

さて、今朝、バーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」を更新しました。月1回の的更新の名物コーナー「ジャズの小径」2月号の更新です。

ジャズの世界は意外と広くて深い。ジャズの入門本やアルバムの紹介本で紹介されている、名盤、優秀盤、佳作の類はほんの一部、氷山の一角であって、隠れた名盤ってやつは意外と沢山ある。だから、ジャズのアルバム蒐集って趣味は面白いってこと。予期せず、この隠れた名盤って奴に出会った時、至福の時を感じます。

ということで、今月の「ジャズの小径」は、この『最近出会った隠れた名盤、優秀盤、佳作』と題して、渡辺香津美&小曽根真の『ダンディズム』と、70年代フュージョンの代表格ミュージシャンの一人、デオダートの『ラヴ・アイランド』の2枚をご紹介しています。

Komichi_200902

『ダンディズム』はタイトル通り、ちょっとオシャレな、そしてクールなピアノとのデュオ・スタイルが実に小粋。ジャズ・スタンダードもダンディにアレンジメントされていて、聴いていて、ちょっとビターで心地良い。

『ラヴ・アイランド』は、70年代フュージョンの代表格の一人、エウミール・デオダートが、78年にトミー・リピューマとともに作り上げたブラコン路線の第1作。ボサ・ノヴァとファンクの融合って言ったら良いのかな。70年代前半に流行った「クロスオーバー」という言葉の方が、ちょっとピッタリなデオダート。実に趣味の良いフュージョン・アルバムです。

「ジャズの小径」は、この「ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログ」で、過去に掲載されたブログ記事の中から、「ジャズの小径」の各月のテーマに合った「ブログ記事」に加筆・修正してアップしたものですので、もしかしたら、以前読んだことがあるなあ、と思われる方もあるかもしれませんが、ご容赦下さい。

それでは、皆さん、このブログの本家、バーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」(左をクリック)まで、遊びに来て下さいね。お待ちしております。
 
 
 
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2009年2月21日 (土曜日)

昔々、ソウル・ジャズという・・・

ファンキー・ジャズは、1960年代中盤がピーク。ファンキー・ジャズに「R&Bの要素」を積極的に取り入れ、教会音楽の影響が色濃く、より「ポップなアレンジ」を施したジャズのジャンルに「ソウル・ジャズ」というのがある。ちょうど1960年代の終わりから、70年代前半にかけてかな〜。

「ソウル・ジャズ」も、ファンキー・ジャズの一種なので、僕にとっては、やはり精神的に元気が無い時、萎えた精神を揺り動かしたい時に聴く「カンフル剤的」なジャズである。でも、昔々、僕がジャズを聴き始めた時は、この「ソウル・ジャズ」というジャンルのジャズは、ファンキー・ジャズ以上に、「俗っぽく猥雑で下品」なジャズとして、日本では人気が無かった、というか、なんとなく蔑まれていた感が強い。

だから、僕がジャズを聴き始めた頃から、つい最近まで、この「ソウル・ジャズ」というジャンルのジャズ・アルバムは、日本で再発されることは、ほとんど無かった。しかしながら、クラブ・ジャズの台頭で、この「踊れるジャズ」の典型的なケースのひとつとしての「ソウル・ジャズ」は、日本で、やっと正統な評価をされるようになってきたと思う。

Soul_symphony_2

その「ソウル・ジャズ」というのは如何なるものか。どんな雰囲気な演奏なのか。その典型的な例のひとつが、The Three Sounds『Soul Symphony』(写真左)である。

スリー・サウンズとは、ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンの肝いりで結成されたピアノ・トリオ。ブルーノート・レーベルに20作近くの作品を残し、シングルカットされた曲も多数、その典型的なハードバップなジャズ・ピアノ・トリオとして、その演奏の楽しさと安定感から、当時、アメリカでヒットした(ジャズとしてだけど)。

その『Soul Symphony』、リーダーでピアニストのジーン・ハリス率いるザ・スリー・サウンズ。ブラック・ジャズのヘンリー・フランクリン(b)を加えたトリオでの、1969年発表のアルバムである。

ファンキー・ジャズを踏襲した、従来どおりのファンキー色の濃いピアノ・トリオ・サウンドに、モンク・ヒギンズの指揮によるストリングスが加わることで、よりポップになり、曲的には、R&Bの要素が色濃く反映され、ゴスペルの要素をふんだんに取り入れ、ファンキー・ジャズとは一線を画した演奏にステップアップしている。そして、意外と俗っぽい雰囲気は無く、結構、アーティスティックな香りがする、端正な演奏である。

良い出来の「ソウル・ジャズ」だと思います。「俗っぽく猥雑で下品」と誤解されがちなソウル・ジャズですが、このアルバムを聴けば、その印象はガラッと変わるかな、っと。「俗っぽく猥雑で下品」なジャズもあるにはあるが、それもジャズ。でも、この『Soul Symphony』は一聴の価値があります。
 
 
 
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2009年2月19日 (木曜日)

ファンキー・ジャズの愛聴盤

動機はともあれ、ファンキー・ジャズをとっても聴きたい精神状態なので、ファンキー・ジャズ三昧の毎日である。昨日は、Nat Adderley(ナット・アダレイ)のアルバムをご紹介した。今日は、ナットの兄貴、アルト・サックス奏者の Cannonball Adderley(キャノンボール・アダレイ)のアルバムをご紹介したい。

『74 Miles Away』(写真左)。1967年の作品。ファンキー・ジャズ・ブーム、真っ只中。パーソネルは、Nat Adderley (cor, vo) Cannonball Adderley (as) Joe Zawinul (p, el-p) Victor Gaskin (b) Roy McCurdy (ds)。後のスーパーバンド、Weather Report の Joe Zawinul(ジョー・ザビヌル)の参加が目を惹く。

そのザビヌルが作曲した4曲目「74 Miles Away」が素晴らしい出来である。実にアーティスティックなファンキー・ジャズなんだろう。ファンキー・ジャズの本質である「俗っぽさ」と「過剰な粘り」を、しっかりと踏襲しつつ、実にアーティスティックな響きを持つ、優れた出来の楽曲と演奏である。
 

74_miles_away

 
この「74 Miles Away」を聴くと、やはり、ファンキー・ジャズは良い。やはり、ファンキー・ジャズは立派に「純ジャズ」の範疇に留まっている、と思う。この「74 Miles Away」は、ファンキー・ジャズの名曲、名演のひとつではないか。初めて聴いた時、ビックリしたのを覚えている。

そして、冒頭の「Do Do Do (What Now Is Next) 」の、最高に「俗っぽい」、最高に「猥雑で、過剰なノリ」に、ファンキー・ジャズの真髄を感じる。単純にエンターテインメントを追求した、オーバー・ファンクなノリ。うねうねと腰をくねらすようにアルトを吹き上げるキャノンボール。その官能的なノリに呼応する聴衆。熱気溢れるパフォーマンス。

高中音域を中心に吹き上げることの出来るアルト・サックス。アルト・サックスがファンキー・ジャズのシンボルかな。そして、キャノンボールのアルトは、そのファンキーさに「黒さ」と「俗っぽさ」と「熱気」を含ませる。ファンキー・ジャズの巨匠。キャノンボールは僕のお気に入りである。
 
 
 
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2009年2月18日 (水曜日)

That's 「ファンキー」

心が沈んだ時には「ファンキー・ジャズ」が良い。心が辛い時は「ファンキー・ジャズ」が良い。

日本のジャズ・ファンの間では、長年「ファンキー・ジャズ」は評価が低かった。「俗っぽい」「商業主義」など、あまり良い評判は聞かなかった。が、僕は好きだ。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャースの『Moanin'』を聴いて以来、「ファンキー・ジャズ」は、僕の元気の源のひとつだった。

いろいろあって心が辛い。どうしても気分転換がしたくて、今日は久しぶりに、ファンキー・ジャズにドップリ浸かる。Nat Adderley『Autobiography』(写真左)を聴く。1965年の作品。とにかく、冒頭の「Work Song」には、いつ聴いても痺れる。ゴスペルの手法を取り入れた、ファンキー・ジャズの代表的楽曲の一つ。僕の大のお気に入りの1曲。
 

Nat_autobiography

 
ナット・アダレイ。キャノンボール・アダレイの実弟にしてハード・バップ・コルネットの名手。この『Autobiography』は、ナット・アダレイが自作の曲のみを取り上げた「自叙伝的」な一枚。「Work Song」「Jive Samba」、陽気なカリプソ「Junkanoo」, ラテン・ロック的なアプローチの「Stony Island」。ファンキー・ジャズ、ラテン・ジャズの名曲ばかり。

アルバム全体に、ゴスペル、ラテン・フィーリングが溢れていて、聴いていてとにかく楽しい。ワクワク、ウキウキする。このファンキー・ジャズを聴くだけで、直ぐに気分は晴れはしない。でも、ほんの少しだけ、ほんの少しだけ、心は軽くなる。

人生はいろいろある。しかし、今回は久々に参った。でも、音楽を愛でる心の余裕は持ち続けたい。う〜ん、一生懸命頑張っているんだけどなあ〜。「人間万事塞翁が馬」。後に振り返って、自分の人生はそうあって欲しい。
 
 
 
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2009年2月16日 (月曜日)

凄いぞ〜、若かりしBenson

今日は、会社で歓迎会があって、ちょっと飲んで食べて帰って、ほろ酔い気分で「こんばんは」です。

さて、George Benson(ジョージ・ベンソン)と言えば、ソフト&メロウな、歌えるジャズ・ギタリストというイメージが強い。心地良い歌とそれに付随する趣味の良いジャズ・ギター。でも、違うんだな〜。

ベンソンといえば、若かりし頃、マイルスの下で、エレクトリック・ギターの新進気鋭なミュージシャンとして参加して『Miles In The Sky』をリリース。そう、あのマイルスに見初められたジャズ・ギタリストなんですぞ。

その証明というか、その新進気鋭な、当時にして新しい感覚のジャズ・ミュージシャンとしての証のアルバムの一枚が『George Benson Cookbook』。1966年の録音。ベンソン23歳の時の録音である。
 

George_benson_cokbook

 
これがですね〜、凄い内容なんですよ。冒頭の2曲「Cooker」「Benny's Back」の圧倒的な早弾きの疾走感は、とにかく「凄い」。よくこの速さでフロント楽器とユニゾンが弾けるもんだ。そのめくるめく疾走感。この冒頭の2曲目だけで、ベンソンの才能と先進性が聴いて取れる。

残りの収録曲も、心地良いテンションと疾走感溢れ、切れ味鋭いジャズ・ギターで切りまくる。ロックでも無ければ、従来のジャズ・ギターでも無い。確かに、ウエス・モンゴメリー直系の雰囲気が溢れているが、ベンソンのプレイを聴けば聴くほど、ウエスとは違った独特の個性が煌めく。

とにかく、ジャズ・ギターの好きな人は必聴の一枚です。これだけ切れ味鋭い、疾走感溢れる「純ジャズ」のジャズ・ギターはなかなかお目にかかれない(お耳にかかれない、か)。とにかく、聴いて欲しい。そんな一枚です。

実は、この一枚、その存在を、長らく忘れていたんですよね(面目ない)。最近、ベンソンを組織的に聴き直していて、久しぶりにその存在に気がつき、聴き直して、改めて「ぶったまげた」次第。いや〜、ジャズって面白い。いや〜ジャズって奥が深い。
  
   
 
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2009年2月15日 (日曜日)

まだまだ暖かいですね〜

昨日は記録的な暖かさ。2月で夏日とは、ビックリするやら不安になるやら。でも、今日は寒気が流れ込んできたのか、時雨雲が流れて、時々日が射すんだが、なんだかドンヨリした一日。ちょっと時雨れたりしたが、まだまだ、昨日の余韻で、2月にしては暖かい一日。

昨日の散歩では、もう街のあちらこちらで梅が満開でした(写真下)。今年は梅の開花、満開が早い早い。寒桜もほぼ8分咲き。今年になってから暫く寒い日が続いただけで、この1〜2週間は、ちょっと暖かいなあ、と感じる日が続いたからねえ。

Img_0021

昨日のブログに書きましたが、CDの安売りバーゲンでは、実は新譜の在庫処分品もあったんですね。全く封を開けていない新品のCDがどれも500円。さすがに、新譜の処分品なので、なかなかお値打ち品が見当たらない(当たり前か・・・)。

それでも、スティービー・ワンダーの『Conversation Peace』(写真下左)や、3年ほど前にリリースされた、70年代湘南フォーク・デュオのブレッド&バターのセルフ・カヴァー・アルバム『SHONAN BOYS for young and young-at-heart』(写真下右)をゲット。

Stevie_bread_butter

特に、ブレッド&バターのセルフ・カバー・アルバムは「お値打ち品」やね。このアルバムが新品で500円で手に入るなんて、売る方が、このアルバムの価値を知らない、としか言いようが無い。売れるアルバムだけが優れた音楽では無いんですがね〜。でも、店にとっては「売れるアルバム」が一番良いんでしょうね。でも、音楽を扱う者としては、それでいいのかなあ〜、なんて「青い」ことを思ったりします。

それって、スティービー・ワンダーの『Conversation Peace』にも言えることかな。10年以上前のアルバムですが、さすがにスティービー・ワンダー、全く古さを感じさせない、上質で洗練されたR&Bを聴くことが出来ます。これだけ洗練されたR&Bを演奏し、アルバムに出来るのは、スティービー・ワンダーしかいない。そんなアルバムが新品で500円。ほんまにええんかいな。

まあ理屈はとにかく、良いアルバムを一律500円でゲットしました。CDの安売りバーゲンでは、当然、J-Popが中心なのですが、そんな中にあるロック・アルバムとジャズ・アルバムが狙い目なんですね。経験から言うと、意外な掘出し物に出くわす可能性大です。とにかく、今回は「ホクホク」です(笑)。
 
 
 
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2009年2月14日 (土曜日)

いや〜、今日は暑かった

いや〜、今日は暑かったですね〜。僕の住む千葉県北西部地方では、最高気温が25度。朝方、にわか雨が降ったみたいでしたが、天気予報は、これまた案の定外れて、午前中は全く雨が降らないどころか、日差しが降り注いでいる。

それでは、ということで、近くの大型ショッピングセンターまで、散歩がてらに買い物へ。気温が20度位までは上がるという予報だったので、春は3月下旬の出で立ちで家を出る。10分ほど歩いて、既に日差しがきつい。暑い。嫁はんと「これって、4月中旬って感じだよね」。汗が出る。長袖シャツ一枚で十分な暖かさ。ほんまに今2月かいな?。

異常に暖かい中、汗をかきながらも、なかなか美味そうな芋焼酎を手に入れ、単行本用の日本風のオシャレなブックカバーも手に入れ、ハワイ名物のサンドウィッチなどを食して、ご満悦な中、CDの安売りに出会う。在庫処分の新品CD、レンタル落ちのCDが、なんと一枚「500円」。これは物色しない手は無い。ジャズを中心に探す。

レンタル落ちのCDでも、ジャズのジャンルになると借りる人はほとんど無く、新品同様の状態で、レンタル落ち処分で出てくることが多い。今回もそうだった。これは、と感じたアルバムをレンタル落ちで2枚ゲット。

その一枚が、ケイコ・リーの『キッキン・イット(Kickin' It)』(写真左)である。プロデューサーにベテラン名プロデューサー、ジョン・サイモンを迎えてのセカンド・アルバム。ファースト・アルバムと同様、ニューヨーク録音。まさか、このアルバムがレンタル落ちとは言え、500円で手にはいるとは・・・。嬉しいなったら、嬉しいな。

 

Kickin_it

 

このアルバム、欲しかったんやな〜。ファースト・アルバムの『イマジン』を聴いて、ぶっ飛んだのが1995年。それ以来、ケイコ・リーについては常に注目している。日本人ジャズ・ボーカルの中では、突出した才能であり、突出した個性で、特に女性ジャズ・ボーカルの世界で、世界に通用するのは彼女だけだろう。

そんな彼女のセカンド・アルバム。バックのサポート陣も、リー・ロスネス(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、リー・コニッツ(アルト・サックス)辺りが目を惹く。そんな充実したバックを従えて、ケイコ・リーは淡々と上質のジャズ・ボーカルを聴かせてくれる。

ケイコ・リーのボーカルは、歌うだけでジャジーな雰囲気が漂う程の「良い声」をしている。しかも音程がしっかりしており、声量も豊富。その豊富な声量をセーブしながら、叫ぶようにでは無く、8割の力で「抑制の美」を前提とした、「ほど良いテンション」のボーカルを聴かせてくれる。

加えて、スタンダードの解釈が良い。今まで、名だたる先輩が歌い上げてきたジャズ・スタンダードの定盤アレンジを敢えて採用せず、実に斬新で個性溢れるアレンジを採用している。特にそれが如実に表れているのが、7曲目の「The Man I Love」。通常はスローなバラードなんだが、ここでは速いテンポでのジャジーな表現が斬新。

そしてラストの「God Bless the Child」のケイコ・リーの堂々たる歌いっぷりはどうだ。声量タップリ、抑制が効いて、ジャジーな雰囲気が溢れ、情感タップリに歌い上げていく。そしてバックのピアノ、リニー・ロスネスの、これまた抑制の効いた、ファンキーなピアノ伴奏が光る。

バックと言えば、ベースのロン・カーターは、このアルバムではなんとかピッチも合っていて、印象的な低音で、ロンの個性溢れるベースを聴かせる。ケイコ・リーのボーカルのバックを努めているんだ、という意識があったんだろう、前へ出る「出しゃばり」な面もここには無い。でも、ロンとしては控えめなんだろうが、逆にその控えめなベースが、印象的なベースの音色と共に、しっかりとした存在感を示しているのだから、ジャズって不思議。

バックも良い。でも、やっぱり、このアルバムの主役はケイコ・リー。その独特なハスキーなボーカルで、全編に渡って、心地良いジャジーな雰囲気に包まれる。そして、彼女の卓越したテクニックのボーカルとストレートな表現が、新しいジャズ・ボーカルの響きを僕たちに伝えてくれる。良いアルバムです。中古品一掃セールのお陰ですね。
 
 
 
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2009年2月12日 (木曜日)

初心者向けのコルトレーン

コルトレーンは絶対に避けられない。ジャズを聴き始めて、ジャズを聴き進めようと思った時、コルトレーンは絶対に避けられない。当然、ジャズのテナー・サックス奏者を志す時、当然、コルトレーンは避けられない。

ストレートなブロウを武器に、速いパッセージから、スローなバラード表現まで、コルトレーンの奏法ほど適応性に富んだ奏法は見当たらない。しかも、コルトレーンのテクニックは超一品である。テナー・サックスを聴き極める「ジャズ者」も、テナー・サックスをジャズとして演奏するミュージシャンも、コルトレーンは絶対に避けられない。

でも、コルトレーンは、ジャズ初心者にとって、聴き易いミュージシャンかと言えば、そうではない。彼のテナー奏法の特徴である「シーツ・オブ・サウンド」は、音符を速いパッセージで敷き詰めたような、高速+超絶技巧な奏法で、ジャズ初心者の耳には、ちょっとうるさくて、なにがなんだか判らない奏法に聴こえるのではないか、と思われる。

後期のコルトレーンのアルバムは、この「シーツ・オブ・サウンド」をベースに、フリーなスピリチュアルな演奏がほとんどであり、メロディーも旋律も無視して、本能のおもむくまま、感情のおもむくまま、フリーに雄叫びのようなブロウを繰り広げている。これを、ジャズ初心者の時代に聴いたら、ジャズが嫌いになること必至である(笑)。

Coltrane_sound

では、初心者向けのコルトレーンのアルバムにはどんなものがあるのか、つらつら思いを巡らすと、パッと『Coltrane Sound』(写真左)が思い浮かぶ。マッコイ・タイナーとエルビン・ジョーンズを得たコルトレーンが、とことんモード・ジャズを追求したアルバムで、『マイ・フェイバリット・シングス』と対をなすもの、とされる。でも、この『Coltrane Sound』の方が聴き易く、コルトレーンの本質を感じ取り易いと僕は思っている。

邦題が『夜は千の眼を持つ』。冒頭の1曲目が「Night Has a Thousand Eyes」。この1曲目の直訳なんだが、これが実に妖しい。邦題『夜は千の眼を持つ』って言われたら、ジャズ初心者だったら、ちょっと「引く」よね。しかも、ジャケットデザインをご覧あれ。このジャケットだと、絶対に「引く」よな。僕もジャズ初心者の頃、このアルバムを手にして、購買意欲が萎えていくのを感じたのを覚えている(笑)。

でも、このアルバム、コルトレーンを体験するには絶好の一枚ではあるんです。超絶技巧の「シーツ・オブ・サウンド」も控えめ、この頃、既に完成されていたコルトレーンのバラード奏法は堪能できるし、「Night Has a Thousand Eyes」,「Central Park West」, 「Body and Soul」など、スタンダードを中心とした曲は実に美しく楽しい。コルトレーンのハードな面とソフトな面が絶妙にバランスしていて、最後までコルトレーンを楽しませてくれる一枚なのだ。

コルトレーンを知るアルバムとして、意外と話題に上ることが少ないアルバムのなのですが、特に、Atlanticレーベル時代のコルトレーンのアルバムの中では「イチ押し」のアルバムです。ちょっとハードではあるが「比較的聴きやすい」コルトレーンのアルバムはありませんか、というお問い合わせには、格好の一枚です。
 
 
 
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2009年2月11日 (水曜日)

記念コレクターズBOX・簡易盤

朝から、どんより鉛色の雲が垂れ込めて、気温の上がらない寒い一日。せっかくの祝日なのに出かける気にもならない。運動不足になりかねないが、風邪気味で体調が思わしくないので、大人しくしていないとね。

さて、昨年の8月30日のブログ(左をクリック)でご紹介した、マイルス・デイヴィスの『Kind Of Blue 50周年記念コレクターズBOX』の簡易盤が登場した。

『50周年記念コレクターズBOX』は、完全未発表テイクも収録した2CD、特大ポスターや未発表写真を掲載した60ページに及ぶ豪華ブックレット、55分のドキュメンタリーなどを収録したDVD、180グラムの青盤カラーLP(アナログ)という重厚なもので、完全な「コレクターズ・アイテム」ものでした。

でも、さすがに、今の一般の人には、LPは必要無いですよね。必要無いというか、まずLPを再生するレコード・プレイヤーが無い(笑)。LP世代だった僕は、まだレコード・プレイヤーは持っているし、どうしてもLPでしか聴けない音源は、今でもLPで聴いている。でも、普通は必要ないよね。

でも、この『50周年記念コレクターズBOX』の中のCD2枚+DVDはとても内容が良く、これが、この『50周年記念コレクターズBOX』でしか体験出来ないのは実に惜しい、と思っていたら、恐らくそんな声が多くあったのか、『50周年記念コレクターズBOX』からCD2枚+DVDのみをセットにした簡易盤が登場した。

Kind_of_blue50

ジャズ・ファンの方々には、是非この簡易盤を体験していただきたいくらいの、とても充実した内容である。ボーナスCDは、これって単品販売も可能でないかと思う位の優れモノ。ライブの「So What」は凄い。これまた、DVDも実に内容が良い。こいつも単品販売可能な代物。しかも輸入盤にもかかわらず日本語字幕が付いている。

正式リリース盤の『Kind Of Blue』も勿論ついていますし、リマスタリングも施されていて音質も良い。これが3000円以下(2/11現在、UK盤がamazonで2,959円!)で買えるなんて、なんて幸せなことでしょう。

『Kind Of Blue』は、ジャズのアルバムの中でも定盤中の定盤なのですが、初めて買うのなら絶対にこれです。また、『Kind Of Blue』を一枚所有していても、この簡易盤の「ボーナスCDとDVD」を手に入れることだけを目的として購入するのもアリですね。

今日は久しぶりに、マイルスの『Kind Of Blue』を聴きましたが、やはり素晴らしい内容です。でも、モード奏法を中心に演奏されているので、ジャズ初心者の方々にとっては、音の気持ち良さ、心地良さは感じることはあっても、何が素晴らしいのか良く判らないのが本音では無いでしょうか。そういう意味では、この『Kind Of Blue』は中級者向けのアルバムですね。

でも、このアルバムは絶対に体験すべきアルバムだと思います。ジャズ・ファンのみならず、他のジャンルの音楽ファン、音楽家の皆さんもこのアルバムだけは聴いておくべきかと。ジャズのアーティスティックな面がダイレクトに体験できます。即興演奏をベースとしたジャズの厳しくも美しい側面を目の当たりにすることが出来ます。
 
 
 
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2009年2月10日 (火曜日)

究極の「癒しジャズ」ですね

もう少し、リラックスして聴けるアルバムを選ばなければ・・・、ということで考えた。そう言えば、あったあった。精神的にヘトヘトに疲れた時に良く聴くアルトが。ポール・デスモンドである。

ポール・デスモンドのアルト・サックスは、究極の「癒しのジャズ」である。そのソフトでクールなアルトは究極の「癒しのジャズ」である。そのソフトでクールなだけでは無い。優れたテクニックに裏打ちされた、唯一無二の個性的なアルト。こんなに優しくソフトでクールな音色を出すアルト・サックス奏者は他に無い。

そのポール・デスモンドの「癒しのジャズ」の究極のアルバムの一枚が『Easy Living』(写真左)である。若い頃、この妙齢の女性が寝そべった、あからさまなアルバム・ジャケットは苦手だったが、その内容は素晴らしい。

ジャズに刺激を求める向きには、絶対に相応しくないと思うが、音楽には「良い」音楽と「悪い」音楽しかない、とすると、このポール・デスモンドのソフトでクールなアルトが奏でる、ソフト&メロウな音世界は「良い」音楽だろう。

Easy_living

改めてパーソネルをご紹介すると、Paul Desmond(as), Jim Hall(g), Gene Cherico(b), Gene Wright(b), Percy Heath(b), Connie Kay(ds)。1963年から65年にかけて、分散されて録音されたアルバムである。パーソネルをよくよく見ると判るが、ギターが入った「ピアノレス・カルテット」である。サックス奏者が、ピアノにブロックされずに、自由に吹きまくりたい時に、よく採用するメンバー構成である。

ギターのジム・ホールが良い。コニー・ケイの見事なシンバルワークと、ユージン・ライトの強靱なベースにも目を見張るものがある。バックの強力なサポートを得て、とても気持ちよさそうに、ポール・デスモンドは、アルト・サックスを吹き上げていく。

収録されたどの曲もどの曲も、スローテンポからミッドテンポの緩やかなものばかり。その緩やかなテンポで、これだけテンションの高い、ソフト&メロウな演奏を繰り広げるなんて、これぞプロ中のプロのなせる技だろう。緩やかなテンポの曲ばかりで構成されながら、飽きの来ない曲の構成。プロデュースの勝利であり、アレンジの勝利であり、取りも直さず、それを演奏したミュージシャン達の勝利である。

このアルバムは、究極の「癒しジャズ」アルバムの一枚。このアルバムが、冬の昼下がり、豊かな昼下がりの陽光降り注ぐ中、ゆったりと優しくクールに鳴り響くと、いつの時代も「もうたまらない」。心が解放され、心が癒される。ちょっとばかし精神的に不安定な時は、目頭が潤んだりするのだ。

「癒しのジャズ」ここに極まれり。このアルバムこそは、本当にリラックスして聴くことが出来るジャズ・アルバムの一枚ですね。ジャズに「癒し」を求める方には絶対にお勧めです。
 
 
 
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2009年2月 9日 (月曜日)

たまには初心にかえって

なんだか精神的に疲れが出た。体調が思わしくないので、音楽も聴き慣れたアルバムが良い。たまには初心にかえって、ジョン・コルトレーンを聴く。

昔々、ジャズを聴き始めた頃、やはりジャズと言えば、聞きかじりの知識だけで、マイルス、コルトレーン、バド、パーカーなどを聴かなければならない、と思い立つ。何から聴いて良いかも判らない。今からかれこれ30年以上前のことである。情報と言えば、ジャズの入門本、アルバム紹介本が数冊。ネットで色々と情報の取れる今とは違う、圧倒的に情報不足の時代。

ジョン・コルトレーンには苦心した。まず最初に購入したアルバムが『至上の愛』。これが曲者だった。なにが良いのか判らない。ジャズの紹介本には「名盤中の名盤」とある。これが判らない奴はジャズを聴く資格がない、って感じの評論がズラリと並ぶ。大いに自信が揺らいだ。

「サウンド・オブ・ミュージック」という映画が大好きだ。何度繰り返し見ただろう。その中の有名曲に「My Favorite Things」というのがある。雷を怖がる子供たちを「楽しいことを考えて」とマリアが励ます場面で使われる曲。そうそう、JR東海「そうだ 京都、行こう」のコマーシャルにも使われている(笑)。

このちょっと風変わりなコード展開を持つ名曲をアルバム・タイトルに頂いた『My Favorite Things』(写真左)。ジャズを聴き始めて、手に入れたコルトレーンの2枚目のアルバム。ジャケットは平凡。でも、ジャズの紹介本からすると「これも名盤中の名盤」。

My_favorite_things

初めて聴いた時、冒頭のタイトル曲「My Favorite Things」のコルトレーンのソプラノ・サックスについては「なんて下手なんだ」。一応、幼稚園の時からクラシックに親しんだ経験がある。オーケストラも生で何回も何回も聴いた。アルト・サックスも吹くことができる。その経験に照らし合わせると、どうしても、このコルトレーンのソプラノ・サックスが下手に聴こえて仕方がない。

でも、ジャズの紹介本には「コルトレーンのソプラノは素晴らしい」とある。当時、自信を無くしたなあ。最近のジャズ本や雑誌を見ると、この『My Favorite Things』のソプラノ・サックスはイマイチという評価になって「ホッ」としている。そうだよな、あまり上手くないよね。

それよりも、2曲目のバラード「 Ev'ry Time We Say Goodbye」の、ビブラートの無い、真っ直ぐなサックスの音。そのストレートな音のシンプルなバラード表現に、コルトレーンの個性を感じるし、高速シーツ・オブ・サウンドの3曲目「Summertime」の目眩くバカテクの世界に、コルトレーンの魅力を感じる。

バックの、エルヴィン・ジョーンス(ds), マッコイ・タイナー(p), がやっとコルトレーン好みの機能を果たしだした跡が良く判る。あとはベースを待つだけ。スティーヴ・デイヴィスのベースはちょっと不安定で、他のメンバーと少し距離がある。

聴き直してみて、この『My Favorite Things』って、結構、難しいアルバムですね。とても、ジャズ初心者の方が聴いて楽しめるアルバムでは無いですね。コルトレーンが初めてソプラノ・サックスに手を染めた記念すべきアルバムではあるんですが、手に取るのは、ジャズ中級レベルになってからでも遅くはありません。ゆめゆめ焦ることなかれ、です(笑)。

体調が思わしくなくて、聴き慣れたアルバムをゆったりとリラックスして聴こう、と思ったんですが、ちょっと真剣に聴いてしまいました。これでは体調が回復しない(笑)。もう少し、リラックスして聴けるアルバムを選ばなければ・・・。 
 
 
 
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2009年2月 8日 (日曜日)

フュージョンもここまで来ると

ジャズは絶対にライブが良い。じっくり腰を据えて作成されるスタジオ・アルバムも良いが、ジャズ特有の、その場その場のアドリブ性やハプニング性を考えると、やっぱりライブの方がスリリングである。

もちろん、その場その場のアドリブ性やハプニング性ということからすると、ライブには「出来の良い」ライブもあれば、「出来の悪い」ライブもある。ライブ・ハウスに自腹を切って足を運ぶ場合、この「出来の悪い」ライブに当たると酷い目にあうことになる。

その点、正式な形でリリースされた「ライブ・アルバム」は、ライブ・レコーディングの後、その出来を吟味して、出来の良いライブ音源をアルバム化するのが通例なので、実際のライブよりは安心である。

まあ、後で、オーバーダビングや編集が出来たりするんで、本当の、そのままの生の姿を記録したライブ・アルバムは少ないんでしょうね。それでも、ジャズの場合、ジャズ特有の、その場その場のアドリブ性やハプニング性は十分に確保れたライブ・アルバムが多い。

最近、Billy Cobham(ビリー・コブハム)のアルバムを組織的に聴き直しているんだが、このライブ・アルバムを初めて聴いた時は唖然とした。1974年リリースの『Shabazz』(写真左)。

Shabazz

フュージョン界の「千手観音ドラマー」ビリー・コブハム率いるグループが、1974年7月4日、モントルー・ジャズフェスティバル(2曲目 :「Taurian Matador」のみ)と、同年7月13日、ロンドン・レインボーシアターで行ったライブを収めた作品。

その内容は「凄まじい」の一言。メンバーは、John Abercrombie(g), Michael Brecker(ts), Randy Brecker(tp), Glen Ferris(tb), Milcho Leviev(kb), Alex Blake(b), そしてBilly Cobham(ds) という構成。メンバーを見渡すだけで「眩暈がする」(笑)。よくこれだけ「トンガッた」メンバーが揃ったもんだ。
 
地鳴りのようなダイナミズム溢れるビリー・コブハムのドラムを筆頭に、ブレッカー兄弟のファンキーで躍動感のあるサックス&ペット。グレン・フェリスのトロンボーンが彩りを添える。そこに、捻れたギターのアバークロンビーが絡み、ジャズの文法からしっかり「はみ出た」キーボードとベースがガッチリとサポートする。

本来は、である。リーダーであるドラマーは、フロントをはじめとするメンバーの手綱をしっかり取ってコントロールするんだが、コブハムは違う。自分が真っ先に荒れ狂って叩きまくる(笑)。きっと、当時のこのバンドのライブって、出来不出来の差が激しかったんでしょうね〜。でも、このアルバムでのライブ・パフォーマンスは凄まじく、素晴らしいものがあります。

フュージョンもここまで来ると「バカテク自慢の、耳当たりの良い音楽」なんていう陰口が霞んでしまいます。「泣く子も黙る」って感じですね。これだけのノリと迫力は、当時のロックの世界でも、なかなかお目に(お耳に?)かかれない。

ジャズあがりのフュージョン奏者が本気を出すと、こんな感じになります。ということで、ジャズあがりのフュージョン奏者をなめると、痛い目に会うことがあります(笑)。ご注意あれ。
 
 
 
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2009年2月 7日 (土曜日)

正に、これは「絶品」である

昨日は懇親会で、久しぶりに大いに飲みました。有名なちゃんこ鍋に舌鼓。で、味を覚えて、コツを教えて貰って帰って、今日の晩ご飯は、我が家の「ちゃんこ鍋」。実に美味く出来ました。美味しい「ちゃんこ」のコツがちょっと判ったような気がします。

さて、話題は変わって、ジャズのアルバムの話題へ。最近、これは「絶品」である、と感心したアルバムが、秋吉敏子&ルー・タバキンの『VINTAGE (DUKE ELLINGTON SONG BOOK)』(写真左)。秋吉敏子と、彼女の夫君であるルー・タバキンのデュオ・アルバムである。デューク・エリントンの佳曲を、絶妙のデュオ(ピアノ+テナーサックス or フルート)で堪能できる「絶品」の一枚。

冒頭の「TAKE THE A TRAIN(A列車で行こう)」を聴いて欲しい。列車が力強く動き出す様子をピアノで弾むように表現し、走り出した列車の様に、躍動感溢れるグルーヴ感を生み出す。タバキンのテナーは、ストレートで、太く豊かな音色で、歌心たっぷりにスインギーなブロウで応える。この冒頭の「TAKE THE A TRAIN(A列車で行こう)」は絶品です。聴いていて、心躍り、感じ入り、心から感動しました。

デューク・エリントンが、2度目のスウェーデン・ツアーの後に書いたという5曲目の「SERENADE TO SWEDEN」は、あまり他では聴いたことの無い、珍しい曲だと思います。

Vintage

ここでは、雰囲気的に明るく、ちょっと都会的なニュアンスで、実にモダンな演奏です。デューク・エリントン独特の「和音の使い方、節回し、リズム」がしっかり反映されていて、どこから見ても「エリントン・ミュージック」。その独特の旋律をタバキンのテナーが悠然と吹き上げていきます。この曲、この演奏も「絶品」。

とにかく、収録されている、どの曲も「エリントンらしさ」が溢れていて、秋吉敏子&ルー・タバキンお二人の、選曲も妙と表現の妙には、大いに感心します。

どの曲も秋吉敏子&ルー・タバキンお二人の息はピッタリ。二人のデュオは、穏やかでありながら一瞬のたるみもなく、心地良いテンションがピーンと張っていて、「洗練」の言葉がピッタリ。エリントンへの敬愛の想い、ジャズへの真摯な想いが溢れていて、どの曲もどの曲も感動に次ぐ感動で、全ての曲を聴き終えた時、久しぶりに目頭が熱くなるのを感じました。

加えて、8曲目「I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD"」では、ルー・タバキンがフルートを披露していますが、これが実に素晴らしいフルートです。空高く駆け上がる様に、伸びやかにフルートを吹き上げ、かすれるような繊細なビブラートが、これまた泣かせる。秋吉敏子=ルー・タバキン・ビックバンドの時代から、ルー・タバキンのフルートは素晴らしかったのですが、この『VINTAGE』で再認識です。

夫婦だから「息の合った」素晴らしいデュオを聴かせてくれるのでは無い。そんな「夫婦だから」という安易な言葉で表現して欲しくない。双方が、真摯で優れた演奏家だから「息の合った」素晴らしいデュオを聴かせてくれるのだと思います。どちらも真剣勝負、一期一会のジャズ・パフォーマンスの素晴らしさと厳しさを、身をもって教えてくれるような、そんな「清廉」さを、ひたひたと感じます。良いアルバムです。
 
 
 
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2009年2月 5日 (木曜日)

『南から来た男』リターンズ

AOR。懐かしい響きである。Audio-Oriented Rock(オーディオ・オリエンテッド・ロック)、Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)の略であり、音楽のジャンルの一つ。日本では、Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)と訳される。

AORの時代をリアルタイムで生きた男の一人として言いたい。AORを「軟弱ロック」と評する人は、もう一度、その頃の名盤を聴き直してみると良い。

米国で「Audio-Oriented Rock」と解釈された。こちらの解釈の方が、僕にとっては座りが良く、 「音を重視するロック(音志向ロック)」とは、ただ、がさつに主張するだけのパンクムーブメントとは違い、歪みのない楽器音と怒鳴らない声が特徴の「成熟したロックの一形態」だったと僕は思っている。

例えば『Christopher Cross(邦題:南から来た男)』を聴いてみれば良い。丸くて柔らかい極上サウンド。天使のようなハイトーンボイスが特徴で、一躍AORを代表するアルバムとして一世を風靡した、AORの名盤である。

僕は当時、大学生だった。この『Christopher Cross(邦題:南から来た男)』を聴いた時、僕は硬派なロック少年からの脱皮を図るべく、ジャズにアプローチをし始めた頃、1979年のリリースである。このアルバムを初めて聴いた時、かなり心を動かされた。とにかく美しい。演奏もボーカルの一流の響き。テクニックも素晴らしく歌心もある。
 

Christopher_cross

 
「こんなアルバムに騙されてはいけない」と強く思った。純ジャズの難解さに手を焼きながらも、その良さが何となく感覚で判り始めた頃である。ロックに戻ってはいけない、と思った。しかも、当時は「何て軟弱なロックなんだ」と思ったのは事実。

でも、「とにかく美しく、演奏もボーカルも一流の響きで、テクニックも素晴らしく歌心もある」というところが実に「困った」。夜な夜な聴きながら「こんな音楽に浸っちまってええのか」と後ろめたさを感じながらも、ヘビーローテーションになった。

純ジャズを聴き疲れた耳への「耳休めなんだ」という言い訳で、この『Christopher Cross(邦題:南から来た男)』は良く聴きました。良い音楽は良い音楽だから、素直に聴けば良いのにね。大学時代は、その若さ故、なにか「高邁な」理屈付けが必要で、今から思えば「ウザい」時代だったなあ、と苦笑することしきりである(笑)。

ハイトーンボイスが心地良く、収録されたどの曲も、雰囲気があってとても優れていると思います。売れて当たり前のアルバムですね。

バック・コーラスを紐解くと、ニコレット・ラーソン、マイケル・マクドナルド、ヴァレリー・カーター、ドン・ヘンリー、JDサウザーが参加。ギター・ソロでは、ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドンなどが参加する、マニアックな楽しみも満載で、初心者からマニアまで、「気軽に楽しむ」〜「ディープに楽しむ」まで、楽しみ方も様々なバリエーションを誇る、奇跡の様な名盤です。

このハイトーンボイスって、どんな人が歌っているのか、興味津々でしたが、クリストファー・クロスが素顔を初めて世間にさらした時、その顔写真(写真右)を見て、至極納得したというか、改めて、クリストファー・クロスに親近感を持ったというか、改めて、クリストファー・クロスのファンになりました。味のある、渋いキャラクターのミュージシャンだと思います。僕はファンです。
 
 
 
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2009年2月 4日 (水曜日)

フュージョン界の千手観音

70年代のフュージョン全盛時代をリアルタイムに生きた僕にとっては、フュージョンのアルバムは手放すことの出来ない、思い入れの強いアルバムが多々ある。

初めて聴いたのは『Crosswinds』というアルバムだった。『Crosswinds』は組曲 "A Sound Portrait"(風の印象)と3曲の独立した曲で構成されています。特に前半の組曲組曲 "A Sound Portrait"は素晴らしい出来でした。自然をテーマにした、当時クロスオーバーと呼ばれた演奏は、それはそれは新しく、ロックで染まった僕を一気にフュージョンの世界に誘ってくれました。

このアルバムの主は、Billy Cobham(ビリー・コブハム)。マハヴィシュヌ等でも活躍したドラマー、ビリーコブハムの1974年発表のソロアルバムです。

ビリー・コブハムは、その手数の多い、表情豊かなドラミングから、僕は「フュージョン界の千手観音」と呼んでいます。ほんと、彼のドラミングを聴くと、一体手が何本あって、足が何本あるのか、と思ってしまうほど、手数が多く、表情豊かなドラミングです。

で、大学に入って、アルバム・ジャケットに惹かれて聴いた、ビリー・コブハムのアルバムが『Total Eclipse』(写真左)。Total Eclipse=皆既日食。これも、また自然現象というか天文現象をテーマにした組曲を冒頭に据えた、実に魅力的な内容のアルバムです。『Crosswinds』と同じく、1974年のリリース。
 

Total_eclipse

 
ゲストメンバーが豪華で、Michael Brecker(ts), Randy Brecker(tp)の「Brecker兄弟」に加えて、ギターには、John Abercrombieが参加しています。また、1曲だけですがCornell Dupree(g) の名前も見えます。これだけのメンバーが集っての演奏です。普通のクロスオーバーであるはずが無い(笑)。

John Abercrombieのギターが捻れに捻れる。Randy Breckerのペットはワウワウし、Michael Breckerのテナーが吠えまくる。忘れてはいけないのが、Milcho Levievのキーボード。実に表情豊かなキーボードに、思わず耳を奪われます。

面白いのは、「Brecker兄弟」をフューチャーした演奏は、ジャズ・ロックというよりブラス・ロックしていて、既に、後の「Brecker Brothers」を彷彿とさせます。自然をテーマにした曲に交えてブラス・ロック的な曲をフューチャーする。リーダーのBilly Cobhamの節奏の無さにはビックリします(笑)。

でも、どちらの雰囲気も全く遜色なく、自然のテーマとブラス・ロックが混じっても、この時代のBilly Cobhamバンドとしての音にしっかりとまとまっており、個々のメンバーの演奏力、表現力はずば抜けたものがあったんやなあ、と感心することしきり。

Billy Cobhamのリーダー・アルバムの「おきまり」である、Billy Cobhamの延々と長時間続くドラム・ソロのみの曲も収録されていますが、彼の「千手観音」ドラミングは、流石に飽きが来ない。特に、ちょっと音の良い再生装置で聴くと、本当に「千手観音」的な、その手数の多い、表情豊かなドラミングが堪能できます。ドラム・ソロをこれだけ長々と聴かせることのできるジャズ・ドラマーはなかなかいません。

70年代フュージョンとリアルタイムで付き合っていた頃、『Crosswinds』と併せて、この『Total Eclipse』は良く聴きましたねえ。今でも時々引っ張り出しては聴くんですが、やはり素晴らしい内容ですね。70年代ジャズ・ロック、70年代フュージョンの名盤の一枚だと思います。
 
 
 
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2009年2月 3日 (火曜日)

The Curtis Fuller Jazztet

「with Benny Golson」と続くのが、このアルバムの「ミソ」。改めてアルバム名をご紹介する。『The Curtis Fuller Jazztet with Benny Golson』(写真左)。

ジャケットを見て貰いたいんだが、かなり「トホホ」なジャケット・デザインである。でも、これが「サボイ・レーベル」独特のジャケット・デザイン。一目見ただけで「サボイ」のレコードだと判るジャケット。ジャズ・ファンの中では、アーティスティックな目で見ると「トホホ」かもしれないが、「サボイ」のジャケットとして一目で見て判るところは一目置くところである。

そして、「with Benny Golson」と続くのが、このアルバムの「ミソ」と書いたが、このアルバムの収録された曲全てに「Golson Harmony(ゴルソン・ハーモニー)」が満載で、とにかく、徹頭徹尾、ハードバップらしいアルバムなのだ。

そうそう、このアルバムのパーソネルをご紹介しておくと、Lee morgan(tp), Benny Golson(ts), Curtis Fuller(tb), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Charlie Persip(ds) と、ハードバップ時代を代表するミュージシャンがズラリと並ぶ。壮観である。

「ゴルソン・ハーモニー」とは、ジャズ・メッセンジャースの『モーニン』で有名になった、テナー奏者のベニー・ゴルソンが編み出したアレンジ手法で、「ボワン」とした「まん丸」な音感ながら、しっかりとエッジの立った独特のハーモニーとユニゾンが特徴で、一聴しただけで「それ」と判る、ジャズ界の中では有名なアレンジ手法である。
 

Curtis_fuller_jazztet

 
冒頭の「It's All Right With Me」を聴くと、その特徴が直ぐ判る。この速いテンポの、コール・ポーターの印象的なフレーズを、その「ゴルソン・ハーモニー」でアレンジすると、こんなにもジャズらしく、こんなにも聴いていて心地良い響きになるってことを実感する。ゴルソン・ハーモニーを実感するには打って付けの演奏です。

このゴルソン・ハーモニーに更なる彩りを添えるのが「トロンボーンの音色」であることが、このアルバムを聴いていて実に良く判る。このアルバムで、その「ゴルソン・ハーモニー」を引き立たせているのが、カーティス・フラーのトロンボーン。「ボワン」とした「まん丸」な音感ながら、しっかりとエッジの立った、輪郭のあるトロンボーンが全編秀逸である。

そして、その「ボワン」とした「まん丸」な音感ながら、しっかりとエッジの立った、輪郭のあるトロンボーンと相対する、切れ味鋭い、ファンキーで、ちょっと「ヤクザ」なトランペットがリー・モーガン。このリー・モーガンのトランペットが、カーティス・フラーのトロンボーンと絡み合って、素晴らしい「化学反応」を起こしていて、聴き応え抜群です。

そうそう、うねうねテナーのベニー・ゴルソンも頑張っています。ゴルソンは時々、うねうね、もわもわと輪郭のあやふやな、寝ぼけたようなテナーを吹いたりするのですが、ここでは、なかなかハードバップしていて、テナーの音の輪郭がはっきりしていて、これはいけます。

『The Curtis Fuller Jazztet with Benny Golson』、ハードバップ時代を感じるなら、モダンジャズを感じるなら、「サボイ」レーベルの音を感じるなら、最適な一枚では無いでしょうか。
 
 
 
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2009年2月 2日 (月曜日)

ジョージ・ベンソン「再認識」

ジャズ・ギターを勉強している。学生時代、ジャズを聴き始めた頃、楽器の中で一番長くやっているのがピアノだったので、ジャズ・ピアノから入った。やはり、楽器が演奏できる人は、その楽器からジャズに入った方が、実感を持って、その演奏を聴けるので具合が良い。

次に、楽器の中で演奏できるのがアルト・サックスだったので、サックスのアルバムに走った。テナー、バリトン、そしてソプラノ。サックスはジャズ・ミュージシャンの数も多い。次いでトランペット、ドラムと回り道をしたので、ジャズ演奏の中では、ギターが一番最後になった。

といって、有名盤は一通り聴いている。でも、ジャズ入門書で紹介されているアルバムだけでは、絶対に偏りがあるし、隠れた名盤は、他に多々あることは経験で判っているので、ジャズ・ギターも、紹介本に惑わされずに、自分の耳と自分の方針で聴き進めている。

で、今回、再認識したのが、ジョージ・ベンソン。『ブリージン』で大ブレイクし、「マスカレード」の歌唱がクローズアップされて、AORジャズってな感じの「ソフト&メロウ」な歌えるギタリストとして、印象付けられたジョージ・ベンソン。マイルスにも見初められた先進的なギタリストなんだが、「どこがマイルスに見初めたれたのかなあ」と不思議に思っていたのも事実。

Bad_benson

最近、ジョージ・ベンソンのアルバムを組織的に聴き直しているんだが、『Bad Benson』(写真左)を聴いて、いや〜ビックリ。ジョージ・ベンソンを再認識しました。ジョージ・ベンソンのファンの方からすれば「何をいまさら」なんでしょうが、どうも『ブリージン』の印象が強くて、彼の「純ジャズ・ギタリスト」としての凄さを見過ごしていたようです。

冒頭の「Take Five」の凄いこと凄いこと。もうこれはこれは「弾きまくり」の世界である。ウエス・モンゴメリーの延長線上にありながら、感覚的には全然違うイメージ。途中、繰り返しフレーズを延々と続けるところなどは、ウエス・モンゴメリーの「ハーフノート」を彷彿とさせるが、フレーズのテイストは全く違う。ウエスは「モダンなテンション」、ベンソンは「攻撃的なテンション」ですね。

さすがに、CTIレーベル発のアルバムなので、途中、クラシカルな木管のアンサンブルや弦のバックが入る「メロウ」な演奏もあるんですが、ベンソンのギターだけは「弾きまくり」の世界を維持しています。とにかく凄いギターです。ケニー・バロン~ロン・カーター~スティーブ・ガッドという強力なトリオをバックに新しい感覚のギターが響きまくっています。

CTIのベンソンって侮れないぞ。というか、凄いのではないか。やはり、マイルスに見初められたギタリストでした。これからもっと、ジョージ・ベンソンを深く掘り下げていく気になりました。どうも、ジョージ・ベンソンは、暫く僕のヘビー・ローテーションの仲間入りになりそうです。
 
 
 
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2009年2月 1日 (日曜日)

彼が音の「キーマン」である

ピンク・フロイド。実験的な音楽性やスペクタクル性に富んだライブ、現代社会における人間疎外や政治問題をテーマにした文学的・哲学的な歌詞で人気を博した、70年代プログレを代表する英国バンド。ブルースを出発点とする演奏は、独特な浮遊感・陶酔感を湛えている。

彼らの演奏技術は、細かい符割りや変拍子とは全く無縁なもので、どちらかと言えば「雰囲気で聴かせる」バンドである。まあ、ハッキリ言って、バンド全体の演奏技術は「下手」な部類である。その中で、演奏技術水準以上であるミュージシャンは二人。ギターのデヴィッド・ギルモアとキーボードのリック・ライト。

最近、デヴィッド・ギルモアのファースト・アルバム『David Gilmour』(写真左)を聴くんだが、このアルバムを聴くにつけ、ピンク・フロイド独特の音は、ギルモアのブルースを基調とした独特なギターのトーンにある、とつくづく思うのだ。1978年のリリース。時代は70年代ロックの黄金時代を過ぎて、プログレには逆風の「パンク」の時代。

音の雰囲気、フレーズの重ね方、タイムの取り方、間の取り方。このファースト・アルバムを聴いていると、「これって、ピンク・フロイドのアルバムか?」って思ってしまうほどの強烈な個性的なエレキ・ギターが素晴らしい。

でもアルバム全編を通じて、「これって、ピンク・フロイドのアルバムか?」って思われないように、曲調は若干「メジャー調」、神秘性を損ねない程度に「ポップな雰囲気」を意識的に前面に出していて、とにかく「工夫」を重ねている。涙ぐましい努力です(笑)。ピンク・フロイドの音との決定的な違いは「ちょっと明るくて、リズミカルでダンサフル」なことかな。

David_gilmour

「忍ぶれど色に出にけり・・・」というが、曲調がマイナー・キーに転調すると、たちどころに「ピンク・フロイド」になるところが面白い。やはり、ピンク・フロイドの独特な浮遊感・陶酔感は、ギルモアのギターに負うところが大きい。

ピンク・フロイドの独特な浮遊感・陶酔感を表現するブルージーな音の基盤はギルモアのギターが基点だということを、このギルモアのファースト・アルバムを聴いていて確信します。ギルモアのブルージーな音とリック・ライトの色彩豊かなキーボードが混ざり合って、ピンク・フロイドの音が出来上がるって寸法。

通常のバンドは、リズム・セクションであるベースとドラムが基調となってバンドのグルーブが創り出されるのだが、ピンク・フロイドは正反対。ベースとドラムは、お世辞にも上手いとは言えない。特にドラムは「雰囲気のみで聴かせる」ドラムで、ドラムというよりは、効果的な「音」の構成要素のひとつになっている。ベースは曲のベース音を押さえるのみで、決してグルーブを生み出す源にはなっていない。

デヴィッド・ギルモアとリチャード・ライト。この二人無くして、ピンク・フロイドの音無し。デヴィッド・ギルモア無くして、ピンク・フロイドの音無し。ベースのロジャー・ウォータースと袂を分かった時、「ピンク・フロイド」のバンド名を引き継いだのは、デヴィッド・ギルモアだったが、これは振り返って見れば、大正解だった。

ロジャー・ウォータースの「アジテーションな歌詞」も、デヴィッド・ギルモアとリチャード・ライトが創り出す「ピンク・フロイド」の音が無いと、ただの「アジテーションな歌詞」のままで、何の化学反応も起こさない。

このデヴィッド・ギルモアのファースト・ソロアルバムは、実に「意味深な」アルバムだった。ピンク・フロイドの「音」のキーマンは誰なのか。このアルバムを聴けば、自ずとその答が判る。そんな「深い内容」を伴ったソロアルバムだった。
 
 
 
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