猫も杓子も「スワンプ」な時代
1960年代の終わりから1970年代初頭、ロック界は「スワンプ」な時代だった。猫も杓子も「スワンプ」な時代。1960年代半ばは、ブルースな時代。ブルース・ロックに飽きて、次はスワンプ・ロック。特に、英国系ロック・ミュージシャンほど、スワンプへの憧れは強かった。
スワンプとは、もともとはアメリカ南部の湿地帯を指す言葉。ロックの世界では、ゴスペルやブルース、それにカントリーやリズム&ブルースといった米国南部の音楽に憧れ、様々な米国南部の音楽をミックスしたロックのことを指す。そのスワンプは、サイケデリック・ミュージック全盛時代に出現し、ポジションを入れ替わるようにしてシーンの主流となった。
英国ロック・ミュージシャンにその傾向が強かったが、米国西海岸も負けてはいない。Creedence Clearwater Revival を始めとして、こぞって「スワンプ」。まあ、英国ロックよりも米国西海岸の方が、スワンプへの傾倒はスマートだったけど。サイケデリック・ロックの喧噪の後、癒しを強く求めていたのが西海岸。米国南部そのもののゴツゴツしたスワンプより、洒落てスマートなスワンプが求められたのだろう。
1970年にリリースされた、Stephen Stills(ステーブン・スティルス)の『Stephen Stills』(写真左)も、バリバリ「スワンプ」な一枚。
冒頭の「Love the One You're With(邦題:愛の賛歌)」は、ゴスペルチックな高揚感を湛えたスワンプ・フォーキー・ファンクとも言うべき名曲。というか、これってもうゴスペル。あまりに「ど真ん中」なゴスペルなノリには、ちょっと苦笑。冒頭の「Love the One You're With」だけでは無い。このアルバム全編に渡って、ゴスペル的な雰囲気が蔓延している。
リズム&ブルース的雰囲気はどこへ行ったと思ったら、4曲目「Old Times Good Times」、5曲目「Go Back Home」に辺りからしっかり漂っていました。と思ったら、4曲目はジミ・ヘンのギター、5曲目はクラプトンのギターが大活躍。この2曲のリズム&ブルース的雰囲気は、この2大伝説的ギタリストに負うところが大きい。でも、このアルバムの後半からラストに進むに従って、リズム&ブルース大会になって、あまりのリズム&ブルースさに、これもちょっと苦笑気味。
いや〜、1960年代の終わりから1970年代初頭って、ホントにロック界は「スワンプ」な時代だったんですね。ラストの「We Are Not Helpless」は、これまたゴスペル色満点。
いやいや、『Stephen Stills』ってアルバム、スワンプというよりは、ズバリ、ゴスペル調とリズム&ブルース調ロックの大宴会の様なアルバムですね。クールなオルガンの音色、パーカッションが弾むリズム、軽快に刻まれるギター、ゴスペル色の強いハッピーなコーラス。アメリカン・ルーツ・ロックが好きな方には絶対お勧めの名盤です。
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こんばんは!
「スティーヴン・スティルス」いいですね!
ニールに比べて、この1stからマナサス(それも2枚組で・・・)でほとんど燃え尽きてしまったのではないかと思っています。
CS&Nの日本グラモフォンのLPと当時のミュージックライフ誌のスティルスの記事の切り抜き未だに持っています。宝物です!
投稿: N1号 | 2009年1月15日 (木曜日) 22時39分
いらっしゃい、 N1号さん。松和のマスターです。
そうですね、「スティーヴン・スティルス」良いですよね。
このアルバム、僕にとって、ちょっと「ツボ」にはまるアルバムで
昔から、たまに引きずり出してきては聴いています。あからさまな
ゴスペル調が良いんですよね〜(笑)。
そうそう、それから「マナサス」。懐かしいですね〜。07年6月6日の
ブログでご紹介しているので、そちらもご覧いただければと思います。
投稿: 松和のマスター | 2009年1月16日 (金曜日) 21時02分