味のあるキャノンボールを愛でる
ジャズの入門書やそのミュージシャンの紹介記事にも、ほとんど顔を出さないアルバムだけれども、自分の中で、密かに愛聴しているアルバムがある。
このキャノンボール・アダレイの『Cannonball Takes Charge』(写真左)。ハードバップ全盛期の1959年4月の録音。パーソネルは、Cannonball Adderley (as) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)。アルトのキャノンボールに、ケリーのピアノ・トリオがバックについた、いかにもハードバップらしい布陣である。
ワンホーン・カルテットということもあり、キャノンボールの歌心が満喫できる。曲目もスタンダード中心で、聴きやすく魅力的。キャノンボールは、軽やかにノリのいいアルトを満喫させてくれる。いや〜、ホントに上手いですね。しかも歌心もあり、そこはかとなく漂うファンキーの香りも芳しく、心からスカッとしますね。
過去、上手すぎるとか、健康優良児っぽい「明るすぎる」アルトとか、ファンクの商人などと、とかく陰口を叩かれがちなキャノンボールであるが、絶対にそうではない。
上手くてどこが悪いのか。憂いを帯びていなくて「明るすぎる」などと誰が言うのか。ファンキーさが受けて、ヒットして売れてどこが悪いのだろう。どうも過去のジャズメンに対する評価は屈折していていけない。ジャズに何か途方もない別の何か求めていたんだろう。
2曲目のバラード「 I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」を聴いて欲しい。フレーズの美しさ、愁いを帯びたダルな雰囲気も良い。キャノンボールの引きずるような感じのアルトが癖になる。キャノンボールは、脳天気なアルトでは無い。これだけ優れた演奏が出来る、数少ない伝説のアルト奏者なのだ。
収録されているどの曲も聴いても、惚れ惚れするわ、楽しいわ、ノリノリになるわ、グッと聴きこむわ、どの曲もアピール・ポイントがしっかりとあって、良い出来の演奏ばかりです。気軽に聴ける割に、聴くとどんどん引き込まれて、ついつい聴きこんでしまう、磁力のような不思議な魅力のあるアルバムです。
バックのウィントン・ケリーを始めとするピアノ・トリオも良いバッキングをしています。特に、ケリーは、ハッピースインガーな面をグッと押さえて、シックにまとめているところがニクイ。
決して、ジャズの入門書やキャノンボールのアルバム紹介には、なかなか顔を出さないアルバムですが、お勧めです。キャノンボール・アダレイは優れたアルト奏者です。このアルバム一押しです。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« 聴き手を悩ませるアルバム | トップページ | 猫も杓子も「スワンプ」な時代 »
コメント