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2008年12月 2日 (火曜日)

「冷たい雨」は好きじゃない 『Sweet Rain』

寒い一日。昨晩遅くからの雨は意外と結構強く降って、朝まで残った。低い鉛色の雲が残って、寒々とした風景。12月初旬ながら、冬たけなわ、厳冬2月の風景。結局、気温はまったく上がらず、10度止まり。そりゃあ寒いわな。

さて、昨晩遅くからの「冷たい雨」は好きじゃない。「冷たい雨」は人を内省的にさせる。「冷たい雨」は僕に「若かりし頃の辛い思い出」を思い出させる。空を見れば、低く鉛色の雲が垂れ込めている。暗い。う〜ん、これはいかん、落ち込むぞ。ということで、雨にちなんではいるが、ちょっと心が温まるジャズは無いかと探し始める。

あった、あった。今日のアルバムは、スタン・ゲッツの『Sweet Rain』(写真左)。1967年リリースのスタン・ゲッツの快作である。パーソネルは、Stan Getz (ts), Chick Corea (p), Ron Carter (b), Grady Tate (ds) 。Chick Corea (p)の参加が目を惹く。

1曲目の「Litha」を聴くだけで、このアルバムは名盤の類であることが判る。チックの筆なる、優しい旋律が溢れんばかりのモーダルな曲。緩やかなテンポと速いテンポが、交互に柔軟に入れ替わり、緩急自在の優しくウォームな演奏。スタン・ゲッツのテナーは1曲目から絶好調。フロートな節回しとガッツのある芯のあるブロウが絶妙にブレンドされた「ゲッツ節」全開である。

2曲目の「O Grande Amor」は、ゲッツお得意のボサノバ・ジャズ。これはもう手慣れたもので、安心して聴ける4分半である(笑)。
 

Sweet_rain

 
この演奏は、ゲッツの手慣れたボサノバ・ジャズを聴くのでは無く、バックのリズム・セクションのボサノバ・ジャズへの対応度合いを聴くべき演奏だろう。チック・コリアは完全にボサノバ・ジャズに順応し、ベースのロン・カーターは複雑なラインを軽やかにボサノバに適用し、ドラムスのグラディ・テイトは文句無し。以前のボサノバ・ジャズより、完成度が高く、モダンな響きがするのは、バックのリズム・セクションの演奏レベルの高さに因るところが大きいと思う。

3曲目の「Sweet Rain」がこのアルバムのハイライト。この演奏で、スタン・ゲッツの底力を思い知る。優しくフロートな、囁くような、音量を抑制したテナー。テクニック的に難度の非常に高い奏法。ゲッツはその難度の高い奏法を、何気無く、当たり前の様に吹き上げていく。このゲッツの演奏に聞き耳を立てていると、ゲッツのテナーの凄みを感じる。「Sweet Rain」=「優しい雨」、ゲッツの素晴らしいテクニックのお陰で「優しい雨」を耳から体感できる。で、バックのリズム・セクションといえば、この曲でも、完全に順応した、結構複雑なアプローチをしていて、聴いていて実に楽しい。

ラストの「Windows」は、ゲッツとチックの相性の良さを物語る。チックのモーダルで先進的な作曲とバッキングによって、フロートな節回しとガッツのある芯のあるブロウが絶妙にブレンドされた「ゲッツ節」が、ワンランク・アップの実にアーティスティックな響きを獲得している。チックの音楽監督としての才能と力量がこの1曲に集約されている。

『Sweet Rain』は表題通り「優しい雨」。その表題通りの雰囲気溢れる演奏の中で、ゲッツのテナー奏者としての力量が実感でき、チックの音楽監督としての才能が確信できる佳作です。そうそう、ベースのロン・カーターも複雑なライン・アプローチが素晴らしく、ドラムのグラディ・テイトのタイム感覚とテクニックは目を見張るものがあります。

そう、名盤って、どの盤も、メンバー全員が優れたパフォーマンスを繰り広げているんですよね。
 
 
 
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