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2008年10月27日 (月曜日)

RCA時代のソニー・ロリンズ

昨日、再結成後のモダン・ジャズ・カルテットは、なぜか日本では評価が低いと書いた。他にも、日本で、不当に評価が低いアルバムが幾つかある。昨日、そう考えて、パッと思い浮かんだのが、RCA時代のソニー・ロリンズ。

ロリンズは、1950年代末には人気の絶頂にあった。が、ジョン・コルトレーンの台頭により、ロリンズは自分のテナーの実力に疑問を感じる。ロリンズは自分の演奏を見つめ直すため、突如引退(実は2度目)。最初は近所の公園で練習に励んだが、苦情が来たため、練習場所をウィリアムズバーグ橋に移した。これは、ジャズ界で有名なエピソード。

そして、1961年11月に突然活動を再開し、ほどなくRCAビクターと契約。そして、1959年の夏から3年間の沈黙を経てリリースした復帰第1作が『橋(The Bridge)』(写真左)。

ジム・ホールなどを従えて、久し振りの新作レコーディング。アルバムのタイトルは、引退時代の練習場所にちなんで『橋』。そんなセンセーショナルな話題にも関わらず、ロリンズは絶好調にも関わらず、ちょっと煮え切らない内容。う〜ん、惜しいなあ。

これは明らかにプロデュースの失敗だろう。天才ロリンズとして、ネームバリューは申し分無い。しかも、2度目の引退後の「奇跡の復活」。RCAはきっとロリンズのアルバムを売りたかったに違いない。ロリンズの意向である「ピアノレス」を受け入れながらも、何故かギターを入れる。しかも、シンプル・ギターが売り物のジム・ホールである。

確かに、ジム・ホールのギターはシンプルで聴きやすいかもしれないが、ロリンズの豪放磊落なテナーとの相対は、ちと荷が重い。ジム・ホールの起用がロリンズのオファーだったとしても避けるべきだったと思う。豪放磊落なロリンズのテナーには、やはりスケールで相対できるピアノだろう。でなければ、ピアノレスを全うして、テナー、ドラム、ベースの「ピアノレス・トリオ」の方が、ロリンズのテナーが自由に動けたし、当時、センセーショナルな話題を提供した、ロリンズのテナーのみを前面に押し出せただろう。

Sonny_rollins_bridge

しかも、十分なリハーサルを積めたのかどうかも疑わしい。3曲目の「ジョン・S」のオープニングとエンディングの、テナーとギターとドラムのユニゾンは「たどたどしいこと」と言ったら、聴いてきてイライラする。パーソネルを眺めると、いずれも職人揃い。このたどたどしさはいったい「なんなんだ」。

他の曲もアレンジ優先で、グループサウンド優先の演奏で、ロリンズの自由奔放なブロウに、少しだけブレーキがかかっているよう。ロリンズのテナーを型にはめてはならない。型にはめられたロリンズのテナーは、その持ち味が半減する。

ロリンズはかなり良いブロウを展開しているんですが、どうしても、この『橋』というアルバム全体を覆う「隔靴掻痒の感」はぬぐいされない。やっぱり、アレンジ優先、グループサウンズ優先の「聴き易さ」追求のプロデュースが問題だったと、僕は睨んでいます。

売らんが為のプロデュース。でも、ロリンズの演奏力のみで「売る」のは辛い。やはり「売る」には、曲作りでしょう。メロディーが印象的で、旋律が追えるフレーズが無いと、FMやジュークボックスで売るのは辛い。2度目の引退後の「奇跡の復活」アルバムだったのですから、まずはロリンズの好きなように吹かせて、「ロリンズここにあり」と、その存在感をアピールすることが先決だったのでは、と思います。

この『橋』ってアルバム、実に惜しいアルバムです。ロリンズは絶好調なんですよ。しかも、テクニック的に引退前より遙かにグレードアップしている。予定調和的なジョン・コルトレーンと比べると、その自由奔放、豪放磊落ぶりは凄まじいものがあります。

それでも、なんか煮え切らない感じはぬぐえない。ジャズの世界でも、プロデュースの良し悪しで、名盤にもなれば凡盤にもなる。プロデュースの重要性を再認識させてくれるアルバムの一枚が、このロリンズの『橋』だと思います。
 
 
 
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