気になるけど、なかなか・・・
さて、長年、ジャズと付き合っていて、ふと振り返ってみると、いろいろと面白いことに気が付いたりする。
ジャズ初心者の頃、「これ、なんか良いアルバムっぽいんやけどなあ」と手に取るが、購入するまでに思い切ることが出来ず、一旦諦め、また、幾季節か過ぎて、「そう言えば、これって昔、良いアルバムっぽいんやけどなあ、って思ったことがあるなあ」と思って手に取るんだが、結局、購入にまで至らない。
そうこうしているうちに幾年月。ジャズを聴き始めて、早30余年。こんな基本的なアルバムも持ってないんや、と思うアルバムが幾枚かある。つまりは、縁が無いんやね。
最近、初めてレコード屋で手にして以来、30年経って、やっと今回目出度く手に入れたアルバムが、チャールズ・ミンガスの『道化師』(写真左)。
この『道化師』のジャケット、LPサイズで見ると、結構迫力のあるもの。このアルバムを初めて手に取ったのは、ジャズを聴き始めてまだ2年位の「超ジャズ初心者」の頃。収録されている曲名を見ると、「ハイチ人の戦闘の歌」や「ラヴバードの蘇生」など、魅力的な邦題が並ぶ。なんか良さそうだ、と思うんだが、この迫力あるジャケットデザイン、道化師のアップに気圧されて、購入には至らず。
やっと最近手に入れたんだが、聴いてみると、さすがチャールズ・ミンガス、ミンガス・ミュージック満載の内容。ミンガス独特の癖のある旋律、癖のあるアレンジ。そして、ミンガス・ミュージックを最大限に表現する素晴らしいバンド・メンバー。これぞジャズ、これぞモダン・ジャズって雰囲気で満足、満足。
ミンガス独特の癖のある曲がズラリと並ぶので、やっぱりジャズ初心者の方は、初めて聴いた時、面食らうかもしれない。でも、繰り返し聴くうちに、その癖がジャズ独特の響きを伴った、言い換えると、ミンガスの癖のある音を追う毎に、ジャズ演奏の特徴を感じて、聴くのが面白くなる、そんな不思議な魅力を持ったアルバムではある。
学生時代、例の「隠れ家的な音楽喫茶店」で、この『道化師』をリクエストしたことがある。僕以外、誰も他の客がいない時を見計らってリクエストした。一瞬「えっ」という顔をする妙齢の女性店主。でも、ちょっと微笑んで、すっとこのアルバムが出てくるところが、この音楽喫茶店の素晴らしいところ。
店内に流れるミンガスの『道化師』。癖のあるミンガスの旋律。ミンガス・ミュージックを最大限に表現する、素晴らしいメンバーの演奏。「良いアルバムですよね、これ」と妙齢の女性店主。「まだ初心者なんで、良く判らないんですが、良い感じだと思います」と僕。「ご自分が良いと思えば、良いアルバムなんですよ」と微笑む店主。「そうですよね」と僕。学生時代の懐かしい、そして、甘酸っぱい思い出である。
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