これは「ジャズ入門盤」じゃない
涼しくなったというか、寒くなった。今日の東京は、11月中旬の陽気とか。冷たい雨、冷たい風。風邪をひかぬよう気をつけないと。家に帰り着くと、ホッとする。家の中が暖かいと感じるようになった。秋たけなわである。
さて、ジャズの話を。ジャズ入門書には、当然のことながら、ジャズ初心者向けのお勧めアルバムがズラズラと並んでいる訳であるが、その中には、どうしても、これは「ジャズ入門盤」じゃないやろう、と思われるアルバムが幾つか含まれているから不思議だ。
その一枚が、キース・ジャレットの『Somewhere Before(サムフォエア・ビフォア)』(写真左)である。1968年10月の録音。パーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, reco) Charlie Haden (b) Paul Motian (d)。「セピア色の旧市街といった風景写真」のジャケットは、実にノスタルジックで、魅力的。
でも、このジャケットから想起されるような内容ではないんですよね、このアルバムって。率直に言うと、このアルバムが、どうして「ジャズ入門盤」に推されているのかが判らない。実は、僕も、ジャズ初心者の時代、このアルバムを手にして、何が良いか良く判らず、暫く、自分の耳と感性がおかしいのか、と思って悩んだ思い出がある。
冒頭の「My Back Pages」も、そんなに良いとは思わない。確かに、キースのピアノはリリカルで、たっぷりエコーのかかった音は魅力的。でも、演奏全体を見渡すと、アレンジ、展開共に、優秀とは言い難い。
他の収録曲についても、アレンジ、展開共に、ストレートで素直なものは無く、なんとなく、捻くれた感じのする演奏ばかりで、どう聴いたって、ジャズ初心者向けではないだろう。収録曲の中には、「Moving Soon」の様な、完全にフリーな演奏もあるが、このフリーな演奏も、フリー・ジャズとして成功していると思えない。
当時のキースって、新しいジャズのアプローチ、新しいジャズの響きについて、模索、チャレンジ、実験を繰り返している時代である、その成果のひとつである、この『Somewhere Before』だって、キースの発展途上の記録のひとつであって、決して、完成された内容のアルバムではない。
どうして、このアルバムが「ジャズ入門盤」なのかが判らんなあ。譲って、ジャズ中級者向け。完成された内容では無く、キースの発展途上の記録として考えると、キース・マニアとしてのコレクターズ・アイテムだろう。
ジャズ入門書に「ジャズ入門盤」として挙がっているからといって、安心してはいけない。複数のジャズ入門書を読み比べたり、ネットの情報をしっかり収集したりしないと、たまには、とんでもない「ジャズ入門盤」を手にしてしまったりするので、ご用心、ご用心。
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