« これは「ジャズ入門盤」じゃない | トップページ | AORの「伊達男」・その2 »

2008年9月30日 (火曜日)

AORの「伊達男」・その1

僕が密かに、AORの「伊達男」と呼んでいる男がいる。その男の名前を言う前に、AORとはなんぞや、という問いに答えておく。日本で「AOR」とは、「Adult Oriented Rock(大人が心を向けたロック)」の略と解釈される。まあ、大人向けのロックということですか。1970年代後半から1980年代にかけて流行しました。

さて、AORの「伊達男」とは、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs・写真右)のこと。ボズ・スキャッグスは、オハイオ州出身の米国ミュージシャン。AORサウンドを代表するシンガー。R&B色が濃い泥臭い音楽を中心に、サンフランシスコを拠点に活動していたが、ちっとも売れなかった。しかし、1976年、突如、大幅なイメージ・チェンジを断行、ソフィスティケートされた『シルクディグリーズ』(写真左)というアルバムを出して、一躍、AORの代表格になった。

「ウィアー・オール・アローン(二人だけ)」という曲は、実に良い曲である。この曲を初めて聴いた時、良い曲だなあ、と感じ入ったのを覚えている。1976年のことである。この「ウィアー・オール・アローン」をLPのB面のラストに収録した、「AORの名盤」と誉れ高いアルバムが『シルク・ディグリーズ』。

この『シルク・ディグリーズ』というアルバム、確かに良く出来ている。まず、ボズ・スキャッグスの声が、太く丸くて、少しくぐもっていて、ソフトな声なので、この声を活かすには、ポップで、ソフィストケートされた雰囲気が必要。
 

Silk_degrees

 
そのソフィストケートされた雰囲気を出すのにはどうしたらいいか、ロック・ファンのみならず、一般の人々にアピールするにはどうしたらいいか、FMで取り上げられてバンバン、オンエアされるにはどうしたらいいか、を考え抜いて考え抜いて、このアルバムにある「秀逸なアレンジ」が生まれたんだろう、と思う。

とにかく、アレンジが素晴らしいんですね。ブラスの使い方、女性コーラスの使い方、弦の使い方、エレピの使い方、どれもが、後のAORアルバムに応用され尽くした、数々の「定番アレンジ」がてんこ盛り。良いステレオ装置で、じっくりと聴き返すと、ほんと、良くできたアレンジに感じ入ってしまう。

でも、この『シルク・ディグリーズ』、ブラスと弦、女性コーラスを大々的に前面に押し出したおかげで、ロックのアルバムというよりは、ちょっと硬派なアメリカン・ポップ的な雰囲気になってしまって、ロック・ファンからすると、ソフト&メロウな世界へ行き過ぎた感じは否めない。

でも、それがかえって、ロック・ファンというマニアックな世界から飛び出して、一般の人々にも十分にアピールし、当時としては爆発的に売れた。AORの初期の代表的なアルバムになり、ボズ・スキャッグスの代表盤となった。

最後に「ウィアー・オール・アローン」という曲なんだが、曲としてはとても良く出来ているんだが、この曲だけはアレンジがいただけない。弦が、あからさまに出過ぎていて、どうしても、なんだかチープな感じがしてならない。

この「ウィアー・オール・アローン」を聴く度に、ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を思い出す。弦を入れたら良いってもんじゃない。弦の入れ方ひとつで、曲の印象はガラリと変わる。この「ウィアー・オール・アローン」って、良い曲なのになあ〜。弦の入れ方だけがいただけなくて、この『シルク・ディグリーズ』、僕の中では佳作どまりなのである。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

保存

« これは「ジャズ入門盤」じゃない | トップページ | AORの「伊達男」・その2 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: AORの「伊達男」・その1:

« これは「ジャズ入門盤」じゃない | トップページ | AORの「伊達男」・その2 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2020年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

カテゴリー