デスモンドのアルトを堪能
涼しい。昨日から今日の午前中は、半袖だと肌寒いくらい。しかしながら、天気が悪く、湿度はそれなりに高い。それでも、この涼しさは何物にも代え難い(笑)。
昨日、一昨日と、デイブ・ブルーベック・カルテットについて語った訳だが、デイブ・ブルーベック・カルテットの管フロントは、アルトのポール・デスモンド。
デスモンドの柔らかで丸くスイングするアルトと、ブルーベックのパキパキとスクエアにスイングするピアノ、柔と剛、軟と硬、好対照なデスモンドのアルトとブルーベックのピアノが、デイブ・ブルーベック・カルテットの個性だった。
1967年、デイブ・ブルーベック・カルテットを解散して、それぞれ、ソロの道を歩むわけだが、ポール・デスモンドのアルト・サックスの本質が聴けるのは、このデイブ・ブルーベック・カルテットを離れて、ソロになってから。つまり、バックに、パキパキとスクエアにスイングする、ブルーベックの実に個性的なピアノをバックにしなくなってからである。
RCAレコード時代の諸作も良い出来だが、僕は、1970年代、CTIレーベル時代のデスモンドが、結構、好きだ。CTIレーベルは、ジャズ・フュージョン時代を代表するレーベルで、このレーベルのデスモンドについては、いかにもフュージョンという演奏の中でのデスモンドより、フュージョン最大レーベルであるCTIの中で、フュージョンというよりは、純ジャズに近い演奏をするデスモンドにより強い魅力を感じる。
CTIレーベルの諸作の中で、そんな「純ジャズ」的な魅力が溢れているアルバムが『Pure Desmond(ピュア・デスモンド)』(写真左)である。パーソネルは、Paul Desmond(as), Ed Bickert(g), Ron Carter(b), Connie Kay(ds) 。1974年9月の録音。プロデューサーは当然、クリード・テイラーである。
収録された曲は全て他人の曲、スタンダード中心の、パーソネルの顔ぶれから見ても、これはどう見ても「純ジャズ」のアルバムである。まず目を惹くのは、MJQの伝説的ドラマー、コニー・ケイの参加。このケイのドラミングが、このアルバム全体の「純ジャズ」トーンを決定付けている。
実に趣味の良いアルバムである。感心するのはギターのエド・ビッカート。ビッカートのギターの音色は、デスモンドの柔らかで丸くスイングするアルトに相性ピッタリ。出過ぎず目立た過ぎず、それでいて、ソロの時にしっかりと存在を主張する、これぞ、サイドメンという演奏に好感度アップ。
ロン・カーターのベースも、フュージョンの総本山CTIのアルバムでありながら、純ジャズ的な内容のこのアルバムでは、アタッチメントを付けての無駄なベース音の増幅も無く、よく問題視されるベースのピッチについても、このアルバムについては、まずまず合っていて、耳障りにならない。それどころか、マイルス五重奏団時代を彷彿とさせる、柔軟で硬質な「骨太ベース」を披露する。ここでのロンのベースは聴き応え十分。
主役のアルト・サックスのデスモンドは貫禄十分。従来からの、柔らかで丸くスイングするアルトは当然のこと、スタンダード演奏の中で、ハードなブロウを見せたりして、デスモンドのアルト・サックスの全貌を、このアルバムでは感じることが出来る。
僕にとって、大学時代、行きつけのジャズ喫茶での、お気に入りのアルバムでした。良くリクエストしました。冒頭「Squeeze Me」のデスモンドのアルトを聴くだけで、ほのぼのとした雰囲気につつまれます。フュージョン時代の「純ジャズ」アルバムとして、屈指の出来だと思います。
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