通なウエストコースト・ロック
夏のロックは、どうしても耳当たりの良いウエストコースト・ロックに偏りがち。しかも、イーグルスやドゥービー・ブラザースなど、有名どころのアルバムは、サウンドやアレンジがゴージャスで、酷暑の夏には「トゥー・マッチ」。
シンプルで、爽やかって感じを求めると、有名どころの、それぞれのバンドメンバーのソロアルバムに行き着く。イーグルスのメンバーだった、ランディー・マイズナーのソロ・デビュー・アルバム(写真左)などは、夏になると、結構、CDのトレイに載る回数が多い。
ランディー・マイズナーには、自分の名前がタイトルになっているアルバムが2枚あって紛らわしいんだが、このソロ・デビュー・アルバムは、日本では『テイク・イット・トゥー・ザ・リミット』という邦題で発売されました。確か、1978年だったはず。
マイズナーのペンによる新曲はひとつも収められない、加えて、バック・メンバーも、有名人が一部参加しているものの、無名で演奏的に可もなく不可もない「普通のミュージシャン」が中心など、制作の準備は不十分だったらしく、評論家筋では、アルバム自体の評価はあまり芳しいものではありません。
でも、そんなに言うほど、バック・バンドの演奏も酷くなく、確かにテクニック的には普通ですが、どちらかといえばシンプルで聴きやすく、アマチュアっぽいんだけど、プロとして最低限のツボは押さえている感じが、僕は結構気に入っています。
4曲目のドリフターズがヒットさせたオールディーズ「Save The Last Dance For Me(ラスト・ダンスは私に)」にはちょっと引きますが(マイズナーはお気に入りらしい)、その他のひとつひとつの曲はなかなか良い感じです。僕にとっては、マイズナーのリード・ヴォーカルを全編にわたって楽しむことができるってことが嬉しいですね。
そして、このアルバムの最大の聴きものは、イーグルス時代のマイズナーの代表曲である「Take It To The Limit」の再演。イーグルスでの荘厳で壮大なアレンジは、ちょっと「トゥー・マッチ」なところがあって、体調不良の時に聴くと耳にもたれたものですが、ここでのヴァージョンはピアノとアコースティック・ギターだけをバックにしたシンプルなもの。マイズナーのヴォーカルも丁寧に感情を込めて歌っていて、しみじみ聴けます。飽きが来ない名演です。
アレンジ、演奏とも決してクオリティが高いとはいえないのですが、何か惹かれるものが、このアルバムの「そこかしこ」にあって、実に不思議な魅力を持ったソロ・アルバムです。
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