« ノンビリ、ホンワカなジャズ | トップページ | ウィントンの「考えるジャズ」 »

2008年7月 1日 (火曜日)

ジャズ・オルガンの「ベース」

70年代のプログレの世界やジャズの世界での、オルガンの音が好きである。オルガンの音って、ゴスペル風の雰囲気が色濃く漂い、アメリカン・ルーツ・ミュージックの大好きな僕にとっては、実に心地良い音色である。

ピアノ・トリオというと、バド・パウエル以降、ポピュラーな編成は「ピアノ+ドラム+ベース」。ところが、オルガン・トリオは「オルガン+ドラム+ギター」が定番。ジャズ初心者の頃、「ベースはどこへいった」と思っていたのだが、オルガン奏者はベースも自分で演奏するというのを知って、ビックリした。

恐らく、エレクトーン演奏の影響が強いと思われるのだが、このジャズ・オルガンでの「ベースの部分の演奏」を足鍵盤で弾いていると思っている人が多い。しかしながら、これは大いなる誤解である。僕もジャズ初心者の頃、そう思っていた。よくもまあ、これだけグルーブ感溢れるベース音を足鍵盤で出すもんやなあ、と感心していたが、これが違う。

ジャズ・オルガンではベースは「左手で演奏する」。左手でベースラインを弾くのに合わせて、足鍵盤をスタカートで弾くことによって、アクセントを付ける。そうやって、ウッドベースのようなアタックのついたサウンドとスイング感を出すのが、ジャズオルガンの基本奏法なのだそうだ。いや〜、勉強になりますな〜。

Shirley_scott

さて、ほとんどのジャズ・オルガン奏者がその奏法を踏襲しているが、中には、そうでないオルガン奏者もいる。シャーリー・スコットがそう。シャーリー・スコットのオルガンは「左手でベースラインを弾かない」。しかも、あまり音を重ねない、単音のインプロビゼーションが多く、他のジャズ・オルガン奏者に比べると実にシンプルな印象です。

このシンプルさが実に個性的で、あっさりとしたファンキー・ジャズとでも言うのでしょうか、不思議な感じのジャズ・オルガンです。ベースがしっかりと入っていますので、「オルガン+ドラム+ベース」という、ジャズ・オルガン・トリオとしては異色の編成で、ちょっと風変わりなオルガン・トリオを体感できます。

彼女のオススメは『On A Clear Day』(写真左)。Shirley Scott (org) Ron Carter (b) Jimmy Cobb (d)のトリオ編成です。スタンダード曲で、実にアグレッシブな演奏を繰り広げており、ジャズを感じるには、このアルバムが一番でしょう。

ジャズのアルバム紹介では、彼女の代表作として、『Latin Shadows』(写真右)が紹介されることが多いのですが、選曲が当時のポップス系ヒット曲のカバーが中心で、弦も入っていて、ゴージャズなバックを従えての演奏ですが、どこかムード音楽っぽいアルバムです。気軽に聴けますが、ジャズを感じるにはちょっと、という感じですね。

なお、シャーリー・スコットは、1967年以降、この「当時のポップス系ヒット曲のカバー中心」の路線をひた走り、どのアルバムも「ジャズの雰囲気をベースにしたムード音楽」になってしまい、純粋にメインストリーム・ジャズ・オルガンを楽しむという雰囲気では無くなりました。加えて、1970年代後半からは、ピアノに進出し、オルガン半分、ピアノ半分になりました。そして、2002年の3月に逝去。

左手でベースラインを弾かない、単音中心のシンプルな演奏が個性的だったのに、実に惜しいですね。今一度、スタンダード中心の選曲で、彼女独特の、バリバリのメインストリーム系のジャズ・オルガンを聴いてみたい気がします。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 
 

« ノンビリ、ホンワカなジャズ | トップページ | ウィントンの「考えるジャズ」 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャズ・オルガンの「ベース」:

« ノンビリ、ホンワカなジャズ | トップページ | ウィントンの「考えるジャズ」 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー