このシルバーは上級者向けです。
昨日、ブルーノートの1518番、ファンキー・ジャズの原点と言われる『Horace Silver and the Jazz Messengers』をご紹介しました。実は、ブルーノートの1520番に同じジャケット写真で、赤いシルバーのアルバムがある(1518番は青のシルバーでしたね)。
そのアルバムとは『Horace Silver Trio And Art Blakey-Sabu』(写真左)。1952年、1953年にそれぞれ録音されたアルバムです。昨日ご紹介した1518番は、1954年、1955年の録音ですから、カタログ番号が後でも、今回ご紹介する『Horace Silver Trio And Art Blakey-Sabu』の方が古い録音になります。
さて、このアルバム、ピアノのホレス・シルバーとドラムのアート・ブレイキー、そして曲によってベースが変わり、コンガのサブーが加わる変則ピアノ・トリオ編成。ファンキー・ピアノでならしたシルバーのピアノ・トリオですから、変則編成とはいえ、期待が高まるのですが、これがそうではない。
このアルバムは、シルバーの初の自己名義アルバム。しかも、録音年は1952ー53年。まだ、ファンキー・ジャズの言葉は無い。冒頭の一曲目「Safari」を聴けばビックリ。ファンキー・ジャズどころか、最初聴いた時は、バド・パウエルが弾いているのかと思った。1952ー53年のジャズ界。ジャズ・ピアノについては、まだまだバド・パウエルの影響が大きかったんだろう。
このアルバムでのシルバーは、バド・パウエルによく似ていて、まだ、彼特有の個性が前面に出ていない。左手の使い方が、ちょっとパウエルとは違うかな、くらい。楽曲は全てビ・バップ調。しかし、ブレイキーのドラムは違う、ビ・バップのドラミングとは明らかに違う。ハード・バップにつながるドラミングをこのアルバムで既に自分のものにしているのは立派。
加えて、このアルバム、4曲目「Message from Kenya」で、ブレイキーのドラムとサブーのコンガのデュオが展開される。出だし、いきなりサブーの雄叫び。ビックリである。加えて、またまたビックリなのが、10曲目「Nothing But the Soul」。ここでは、ブレイキーのドラムソロが展開される。この2曲でのブレイキーのドラミングは凄い。でも、このアルバムって、ホレス・シルバー名義のトリオアルバムじゃなかったっけ。
このアルバムは、何をテーマにとりまとめたのか? プロデューサーのアルフレッド・ライオンに訊いてみたい。よく判らん。でも、1952ー53年のジャズ・シーンが、このアルバムを透して見えるようで、ジャズの歴史、スタイルの歴史に興味のある方には、実に面白い聴きものだと思います。決してジャズ初心者向けのアルバムではありません。どちらかと言えば、上級者向けかと思います。
ちなみに、このアルバムの1952年の録音は、当初は、ルー・ドナルドソン(as)のリーダー・セッションの予定だったのが、ドナルドソンが都合で来られず、やむなくリズム隊だけで録音することになったそうです。その時、シルバーはオリジナル曲を持ち合わせており、この録音になった次第。シルバーのリーダー・デビュー録音はひょんなことから生まれたんですね〜。
ということで、ビートルズのベスト盤「青盤」「赤盤」のように、このシルバーの「青盤」と「赤盤」は、必ずしも対で所有しなくても良いと思われます(笑)。「青盤」はジャズ初心者の方々にお勧め、「赤盤」はジャズ上級者の方々にお勧め、って感じですね。
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