この一曲で、ジャズ名盤だけど
ジャズ入門書には、初心者向けのジャズ名盤の紹介が多々されているが、よく見るアルバムの一枚が、Mal Waldron『Left Alone』(写真左)。マル・ウォルドロンが、ジャズ・ヴォーカル史上最高の女性歌手といわれたビリー・ホリディの死後に捧げた追悼アルバム。
このアルバムの冒頭「レフト・アローン」が人気の秘密。 しみじみと心に染みいる哀歌。生前ホリディが歌っていたパートを、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが、情感豊かに、切々と語りかけるように、唄うように、吹き上げていく。本当に、心に染みるアルトなのだ、これが。なんて表現したら良いんだろう、本当に切々と唄い上げる。アルトの音が、アルトの音程がピッタリ。
「レフト・アローン」以降の曲は、上質のハード・バップではあるが。マル・ウォルドロンのピアノは、執拗に同じフレーズを重ねる、硬質のタッチ。ちょっと初心者には、ハードなピアノかもしれない。でも、ジャズ中級者以上には、結構、イケるジャズ・ピアノなんだけど。っていうことは、何故、初心者向けの入門盤なんだろう。
冒頭の「レフト・アローン」は判りやすい。誰が聴いても良い演奏、良い曲だ。LPの時代は、A面が3曲。「レフト・アローン」「キャット・ウォーク」「恋の味をご存知ないのね」は、初心者でもなんとかなるし、我慢できる演奏時間でもある。LP時代、ジャズ喫茶で良くかかったのも、このA面。
でも、今はCDの時代。LP時代のA面の3曲に加えて、「マイナー・パルセーション」「エアジン」と続く。そして、最後に「ビリー・ホリデイを偲んで」という題で、なんとマル・ウォルドロンのインタビューが入っている。これは、初心者ならずとも、ちょっとジャズに慣れ始めたジャズ・ファンも、ちょっと戸惑うだろう。
このアルバムって、実は、ジャズ中級者向けだと僕は思います。LP時代の3曲であれば、初心者向けのジャズ名盤として、ギリギリセーフだと思いますが、CD時代ではちょっときついかな。でも「レフト・アローン」は本当に良い名演です。この曲だけは、ジャズ初心者の方々には、是非、聴いて頂きたい。ジャズの良さ、ジャズの格好良さが、しっかりと実感できます。
ということは、やっぱりジャズ初心者向けの名盤ってことか? いやいや、冒頭の「レフト・アローン」はジャズ初心者向け。それ以降の曲は、ジャズを親しむにつれて、徐々にジワジワと、その良さが判ってくる曲たち。そんな構成をした、言い換えれば、初心者から中級者まで聴き続けることが出来る、実に「長持ちな」名盤といえるでしょう(笑)。
でも、振り返ってみると、マル・ウォルドロンのインタビューを除けば、演奏部分は、僅か35分しかない。ちょっとコストパフォーマンスは良くないよな〜(笑)。
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