Charlie Parker with Strings
寒い。季節が一ヶ月以上戻ったような、冷たい雨が降る一日。朝はまだ雨は無かったが、昼前から雨になり、午後には本格的に。最高気温が17度前後なので、確かに今日の雰囲気は、3月下旬の陽気。寒暖の差が激しい気候に弱い僕としては、今日は一日、なんとなく体調が良くない。
さて、今日の話題は『Charlie Parker with Strings』。最近、ビ・バップを計画的に再体験していて、バド・パウエルから、この2〜3日前から、チャーリー・パーカーに突入。いろいろ聴き漁っているんだが、今日のメインは『Charlie Parker with Strings』。
僕は、ジャズ初心者の頃から、この『Charlie Parker with Strings』(CDジャケットは左)には、あまり高い評価をつけていない。ジャズ初心者の頃は、ジャズの経験、チャーリー・パーカーの経験が少ないので、自分に理解できるまでの実力が伴っていないから、この『Charlie Parker with Strings』に高い評価がつけられないんだ、と思っていた。
なぜなら、ジャズ初心者向けの入門書や、ジャズ雑誌の特集には、この『Charlie Parker with Strings』が必ずと言っていいほど、紹介されているからだ。つまりは、ジャズ初心者であれば、チャーリー・パーカーのこの『Charlie Parker with Strings』は判らなければならないアルバムであって、これが判らないということは「ジャズを聴く資格無し」という位の評論が添えられているのだ。
でも、僕にとっては、ジャズ初心者の時代から今に至るまで、この『Charlie Parker with Strings』に高い評価がつけられないのは一貫している。
何故か? ジャズ初心者の時に感じたことがそのままなんだが、チャーリー・パーカーのアルトのバックで流れる「ストリングス」のアレンジと演奏が「イマイチ」なのだ。このアルバムに収録された演奏が収録されたのは、1950年。1950年当時は、もしかしたら斬新なアレンジ、斬新な演奏だったかもしれないが、それにしても、このバックのストリングスは、ちょっとレトロな、凡百なアレンジに、僕には聴こえる。
しかし、誤解することなかれ。凡百のストリングスをバックに、吹き続けていくチャーリー・パーカーのアルトは、溜息が出るほど素晴らしい。「with Strings」なので、バラードが中心の選曲なんだが、パーカーは、アルトで歌うように、素晴らしいフレーズを紡いでいくのだ。このアルバム、パーカーのアルトを愛でることが目的であれば、最適盤の一枚であろう。
ちなみに、僕はこの『Charlie Parker with Strings』は、LPバージョン(LPジャケットは右)で聴いて育ったので、先頭の曲が「What Is This Thing Called Love?」でないと、なんとなく据わりが悪い。CDバージョンは『Charlie Parker with Strings: The Master Takes』と銘打って、LPバージョンとは、全く異なる曲順で、収録曲もCDの方が圧倒的に多い(LP13曲・CD24曲)。しかも、LP時代に収録されていたA面の7曲目「You Came Along From Out Of Nowhere」が、CDの「Master Takes」に無く、他のCDを調べても見当たらなくなった。どこへ行ったんだ?
この凡百なアレンジと演奏をバックに、CDの様に24曲を聴き通すのは、ちょっと辛い作業だ。特に、初心者の方々にとってはそうだろう。そういう意味では、LP時代の13曲、約40分の収録時間はなかなかリーズナブルな曲編成だったと言える。
そういう意味では、僕はこの『Charlie Parker with Strings』については、LPバージョンの方がはるかに好きだ。よって、CD時代になって、見当たらなくなった「You Came Along From Out Of Nowhere」を除いて、iTunesのプレイリストを使って、CDの収録曲をLP時代の曲順に並べ替えて楽しんでいる。
しかし、日本人のジャズ評論家って「with Strings」ものが好きだよなあ。何故だろう、って考えてみたら、日本人って、ジャズの演奏についても、「メロディーを追う」傾向が強いことに気がついた。だから、スタンダード演奏が好きなんだ。
つまり、ジャズ初心者はついつい、今までの音楽教育の賜である「メロディーを追う」聴き方をしてしまう。だから、メロディアスな演奏以外受け付けない。でも、ジャズの楽しみって、メロディーってほんの一部で、メロディーを追う聴き方は、ジャズに対しては限界があるのだ。
それでも、ジャズを聴き続けて、ジャズ初心者を卒業することには、ビートを追い、奏法の個性を楽しみ、アドリブのヒップさを楽しみ、出てくる「音」のクールさを楽しむことができるようになって、ズブズブとジャズ地獄へ引きずり込まれて行くのだ(笑)。
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