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2008年4月21日 (月曜日)

時には新譜を...「西山瞳」

ちっともスカッと晴れないし、ちっとも暖かくならない千葉県北西部地方。もう4月も21日やぞ。昨年も4月は寒かった。今年も昨年ほどでは無いが「寒い4月」である。

さて、今日は、西山瞳の最新作『Many Seasons』(写真左)を聴く。といっても、初めてではない、そう4〜5回は聴き返している。といって、気に入ってのヘビー・ローテーションでは無い。どこか、ひっかかるところがあって、どこか足りない部分があって、それがなんだか判らないまま、5回は聴き直した。

西山瞳。1979年11月生まれ。大阪音楽大学短大部ジャズピアノクラス卒業。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。04年9月には、自主制作によるCD「I'm Missing You / 西山瞳トリオ」をリリース。05年横濱ジャズプロムナード・ジャズコンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。

07年7月には、ストックホルム・ジャズ・フェスティバルに日本人として初めて参加、そのパフォーマンスが大手地元新聞に取り上げられるなど、現地で大好評を得る。写真を見る限りは容姿端麗(ごめんね西山さん、実際にお会いしたことが無いので...)、期待の若手ジャズ・ピアニストの一人に数えられる。

経歴をみると、西山瞳は、ヨーロピアン・ジャズ・ピアノにグルーピングされる若手ピアニストになる。確かに、彼女のピアノの響きは、ヨーロピアン・ジャズ・ピアノのそれ。決してファンキーにならず、決してブルージーにならない、クラシック・ピアノの様な豊かな響き。和声的処理に優れて、テクニックよりも「響き」を聴かせる、雰囲気型のジャズ・ピアノである。
 

Hitomi_many_seasons

 
どの曲も、その「響き」が特徴的。意識してなのか、本能的にそうなのかは、本人に訊かないと判らないが、ファンキー&ブルージーな要素はほとんど見受けられない。そう言う意味では、レイ・ブライアントの6曲目「Sneaking Around」は選曲ミスだろう。逆に、冒頭の「Flood」は、そのリズムがユニークで、そのユニークなリズムにのって、西山瞳の「響き」のピアノが浮き上がってきて、実に印象的。

気になるのは、西山瞳の自作曲。どの曲も、覚えやすい、親しみやすいフレーズが不足しているので、同じ曲想、同じ曲調に聴こえてしまう。どの自作曲も曲自体の雰囲気は結構良いのに、これは実に惜しい。

アルバムを通して、これは良いフレーズを持った曲で、聴いていて楽しいと思ったのは、6曲目の「Sneaking Around」と、9曲目の「Hermitage」。彼女の自作曲と思いきや、「Sneaking Around」はレイ・ブライアント、「Hermitage」はパット・メセニーだった。

恐らく、自作曲のバリエーション不足が、それぞれの自作曲でのアドリブのバリエーション不足につながっているようだ。自作曲については、彼女のピアノの特徴である「響き」は十分活かしているので、あとは、フレーズの部分の改善が必要だろう。

彼女自らも「毎月1曲作ることを課題にしていたら、難化の一途をたどってしまって。この課題を1回リセットしようかと思うぐらい、エスカレートしているんですよ」と苦笑いしているらしい。 苦笑いしている場合では無い。それでは、彼女自身の才能が気の毒である。自作曲がシンプルになって、覚えやすい、親しみやすいフレーズが増えれば、彼女の「響き」と「音の重ね方」が個性的な「ヨーロピアン・テイストのピアノ」が、絶対に活きると思います。

そういう意味で、次作のスタジオ録音が楽しみな『Many Seasons』。『Many Seasons』は、課題を内包した、発展途上の一枚と言えるでしょう。でも、そのヨーロピアン・テイストのピアノ、その「響き」と「音の重ね方」は、彼女の個性が十分出ていて、ヨーロピアン・ジャズ・ピアノ系で、雰囲気型のジャズ・ピアノが好きな方にはお勧めです。これからの彼女の成長が楽しみです。
 
 
 
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