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2008年4月 4日 (金曜日)

「作曲&アレンジ」が素晴らしい

今日もハービー・ハンコックの話である。昨日は、ピアニストとしては、その特徴が複合的で判りにくい、と書いた。つまりは、ジャズ中級者向けのジャズ・ピアニストだと言える。しかし、である。ハービーの「作曲&アレンジ」の才能は一聴して判る、それはそれは素晴らしいものである。

若き日のハービー・ハンコック、1960年代の彼の「作曲&アレンジ」の最高傑作が『Speak Like a Child』(写真左)。1968年3月の録音。1960年代ジャズの総決算というか、成果の集大成的なアルバムである。パーソネルは、Thad Jones (flh) Peter Phillips (btb) Jerry Dodgion (afl) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Mickey Roker (d)。フロントの管3本が、ちょっと変わった楽器で構成されている。

このアルバムでは、このちょっと変わった管3本にハーモニーとアンサンブルだけを演奏させ(アルバム全体を通じて、アドリブは一切無い)、そのハーモニーとアンサンブルをバックに、ハービーのピアノ・トリオが縦横無尽に演奏を繰り広げる。まず、この演奏コンセプトだけでも、実にユニーク。

そして、管3本のハーモニーの重ね方、アンサンブルの展開の仕方が実に個性的。印象派の絵画を見るような、広がりのある、それでいて、重厚な、そして繊細な、ハービーならでは音世界である。これは一聴して、直ぐにそれと判る。ハービーの自作曲、ハービーのアレンジ、これは独特のものがある。実に美しい、実にアースティスティックな世界である。

Maiden_speak

「聴けば判る」。ハービーの「作曲&アレンジ」の才能を感じたければ、このアルバムが一番。ジャズで、ここまで、アーティスティックな世界が表現できるのか、と感動すら覚える、それはそれは美しく、芸術的な音世界である。

かの有名な『Maiden Voyage(邦題:処女航海)』(写真右)も良い。題名からも判るとおり、「海」をテーマにした自作曲を配した、いわゆるコンセプト・アルバムである。1965年3月の録音。パーソネルは、Freddie Hubbard (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (d)。当時の若手の精鋭ミュージシャンで固めたクインテットである。

冒頭のタイトル曲「Maiden Voyage」やラストの美しい「Dolphin Dance」をはじめ、収録されたどの曲も実に良い、美しい。モード・ジャズを基調に、フリーな要素とアーティスティックにアレンジされたアンサンブル。判り易く、美しく、キャッチャーなテーマ。そして、それぞれのミュージシャンが溌剌とした、最先端のインプロビゼーションを繰り広げる。

『Speak Like a Child』と比べて、それぞれの曲が、あまりに「判り易くて、キャッチャーなテーマと展開」を持っているので、曲のメリハリが効きすぎて、繰り返し聴くと、お腹一杯状態になって、ちょっと飽きる感じがあるが、ジャズ初心者の方々には、こちらの『Maiden Voyage』のほうが、聴き易いかと思う。

『Speak Like a Child』も『Maiden Voyage』も、まさに「ハービー・ハンコックの世界」である。ハービー・ハンコックにしか書けない音世界。彼の「作曲&アレンジ」の才能がフルに発揮された、素晴らしい音世界である。しかも、この彼の「作曲&アレンジ」の世界で、彼のピアノが、彼のピアノの個性が、くっきりと浮き出てきて、キラキラと輝いて響くのだ。

「作曲&アレンジ」が素晴らしい。ジャズの世界で、ここまで、ストイックに、アーティスティックな世界が表現できるのか。ジャズの定番である「恋愛の歌もの」のスタンダードでも無く、黒人の自由を主張するプロテスタントな響きからも全く離れた、ハービー・ハンコックならでは音世界がここにある。
 
 
 
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コメント

お久しぶりです
ブログ開設2周年との事、おめでとうございます。『松和』のマスターの硬派でチョッピリ辛口のブログ内容を感心して読まして頂いております。
この厳しい経済状況下において、企業の最前線で働きながら、趣味の音楽にも真剣に取り組んでおられる姿勢に心から敬意を表したいと思います。
『松和』のマスターと私とは、少し音楽観が違うように思いますが(私は感覚で楽しむタイプなので・・笑)マスターのような聴き方をすれば、もう少し音楽を聴く世界が広がり、楽しむ世界も広がるかな等思っております。
これからも楽しみに拝読させていただきます。
それと私はJAZZギターが好きなのですが、それらのアルバムの評価についてマスターの評価が聞きたいですね・・。
それでは・・・。

いらっしゃい、minato-uchidaさん。松和のマスターです。

>ブログ開設2周年との事、おめでとうございます。

ありがとうございます m(_ _)m。
 
>硬派でチョッピリ辛口のブログ内容を感心して読まして頂いております。

「硬派でチョッピリ辛口」ですか。う〜ん、元々、仕事柄、右左をはっきりとさせることが習慣ついてますので。でも、確かに、できる限り、曖昧な表現は避けるようにはしてます。自分の意見はしっかりと、はっきりと、です(笑)。

>マスターと私とは、少し音楽観が違うように思いますが

「感覚で楽しむ」のも「アリ」と思います。音楽の聴き方に「これが正解」と言われる「聴き方」は無いので、それぞれの聴き方で音楽を楽しみ、様々な意見交換して見識が深まれば良い、と思っています。ただ、やってはいけないのは、その「聴き方」について、自分の「聴き方」を正しいものとして、他の「聴き方」を否定・批判することです。それから、意見の違いを「見解の相違」として無視してしまうこと。これは相手に対して失礼ですよね。ジャズ評論家の方の中にもそんな方が散見されますが、プロとしての見識では無いですね。

あと、僕の「聴き方」は、自分でも楽器をやっていたことがバックにあると思います。ピアノは中学時代まで、かなり入れ込みました。ブラスバンドの助っ人で、アルトサックスも吹いていましたし、高校〜大学時代はフォーク・デュオを組んでいました。今でも、スコアを読むのも好きですし、たまに楽器演奏を楽しんでいます。そんなバックボーンがあって、どうしても「演奏家」「作曲家」の視点で聴いてしまうんですよね(ちょっと偉そうで申し訳ありません)。そんな雰囲気が、何となく「硬派」な感じがするんでしょうね。
 

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