続・Prestigeのコルトレーン
ここ千葉県北西部地方は、昨晩の激しい雨もすっかり上がり、朝起きたら、ちょっと曇り空。でも、急速に天気は回復していく。雨上がり、お決まりの北風であるが、寒くない。ちょっと冷たいけど、暖かい湿気を含んだ、ちょっと優しい冷たさの北風。今日は暖かくなる予感。
朝の8時頃から、豊かな日差し。ぐんぐん気温は上がる。週に一度の買い出しに出た朝の10時には、もう春の暖かい日差しと風が心地良い。う〜ん春です。千葉県北西部地方は春になりました(笑)。
さて、昨日、Prestige時代のコルトレーンの話をした。昔からジャズ入門本で紹介されて来た『コルトレーン』と『ソウルトレーン』の2枚だけでは、Prestige時代のコルトレーンを体感するには、ちょっと役不足だとした。それでは、Prestige自体の他のアルバムで、Prestige時代のコルトレーンを体感できるものはあるのか。
まずは『Black Pearls』(写真左)と『The Last Trane』(写真右)がお勧め。
『Black Pearls』は、Donald Byrd (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (d)がパーソネル。昨日ご紹介した『Soultrane』に、Donald Byrdのトランペットを加えたクインテット編成。1958年5月の録音。そう、あの『Soultrane』から、3ヶ月後の録音。
『The Last Trane』は、幾つかの録音が混在しているが、1曲目「Lover」と4曲目「Come Rain or Come Shine」は『Black Pearls』とほぼ同じだが、ドラムがLouis Hayesに変わるクインテット、1958年1月の録音。2曲目「Slowtrane」は、John Coltrane (ts) Earl May (b) Art Taylor (d)のピアノレス・トリオで、1957年8月の録音。そして、3曲目「By The Numbers」は『Soultrane』と同じ面子で、コルトレーンのワン・ホーン作、1958年3月の録音。
特に『Black Pearls』を聴いてみると面白い。どの曲も皆で演奏するテーマの部分は、上質なハード・バップの響きが心地良い。ハード・バップの成熟した演奏がここにあるのだが、コルトレーンにソロが渡ると雰囲気は一変する。「シーツ・オブ・サウンド」を駆使して、疾風怒濤のソロが繰り広げられる。
でも、バックはハード・バップのまま。もう、この頃は、バックはコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」に慣れているみたいで、無理してコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」を理解し、追従しようとはしていない。この時期のコルトレーンの孤独を感じる。
そして、ソロが、ドナルド・バードに渡ると、これまた雰囲気は一変して、ご機嫌なハード・バップに早変わり。これ、本当に雰囲気が一変する、というか、激変する。この「激変」の度合いが、当時、如何にコルトレーンが、ハード・バップの世界の中で「異端児」だったのかが良く判る。
『The Last Trane』では、「真っ直ぐ伸びてシンプルでストレート」な、コルトレーン独自の音色と、彼の「シーツ・オブ・サウンド」という独自の奏法が、荒削りな演奏である分、生々しく体感できる。57年から58年にかけて録音されたテイクで構成されたアルバム。
1957年〜58年の2年間がコルトレーンにとって、いかに重要な時期だったことかが良く判る。この時期のアルバム群は、振り返ってみると、特別に突出した名演がある訳では無い。グループ演奏としてはアベレージ的演奏。しかしながら、コルトレーンの演奏自体はどれも出色の出来。この2年間で、コルトレーンの個性が確立されており、確立された時点で、当時、ジャズの本流本筋であるハード・バップから大きく逸脱した個性だったことが確認できる。
今の時代にも「コルトレーンのフォロワー」という言葉があるが、Prestige時代のコルトレーンを聴き通すと、コルトレーンの個性は「ワン・アンド・オンリー」であることが確認出来る。とても、真似することの出来ない、唯一無二の個性なのだ。「コルトレーンのフォロワー」という言葉は虚言に過ぎない。「コルトレーンのフォロワー」はあり得ない。
他のPrestige時代のコルトレーンのアルバムも演奏自体は、コルトレーンの個性を確認するには、良い演奏ばかりです。時々「あれ〜っ」という内容のアルバムもありますが、コルトレーンの演奏自体は「聴く価値あり」のものばかりです。
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