ジャズの世界のソロ・ピアノ
「ジャズって難しいですよね」とよく言われる。で、「そうやねえ、難しいよね」と正直に応えると、決まって「えっ」という顔をされる。
何と比べて難しいのか、比較の対象にもよるが、ポップスや歌謡曲など、印象的で判りやすく心地良い旋律の連続、主役が必ず全面に出ずっぱりな展開、飽きない程度の曲の長さ、という観点からみると、ジャズって難しいと思う。
僕も、ジャズ初心者の頃、印象的なテーマが出てきたと思ったら、いきなりインプロビゼーションに突入すると何がなんだか判らなくなったもんな。だけど、このインプロビゼーションの部分が、ジャズって面白くて、演奏家の個性が、モロ出るところなんだけどね。
ジャズって、ポップスの様に、曲の心地良さを愛でるのではなく、演奏家の個性を愛でるのが中心になっていて、これって、なかなか他の音楽ジャンルでは無いことなので、最初は戸惑うんだよな〜。
その最たる例が、ソロ・ピアノ。ドラムやベースのバックも無く、トランペットやサックスのフロント楽器も無い。ただただ、ピアノだけの演奏が続く。確かに、ピアノって、左手でベースとビート、右手で旋律、しかもどちらの手でも和音が出せるので、「ひとりオーケストラ」と呼ばれることもある楽器だが、ただただ、ピアノの演奏が続くのって、なんだか飽きてしまうような感じがする。
でも、それは杞憂ってもの。ジャズ・ピアノの名手のピアノ・ソロって、多彩でノリが良くて、インプロビゼーションの展開が素晴らしい。そして、それぞれの個性がモロ出て、とにかく聴いていて楽しい。
今日、聴いたソロ・ピアノのアルバムは、Oscar Peterson『Tracks』(写真左)。このアルバムを聴くと、ピアノ・トリオでは、スインギーで端正、超絶技巧なピアノなピーターソンが、ソロでは、スインギーに加えて、ファンキーで粘りがあって疾走感溢れる、それはそれは実に黒いピアノを聴かせてくれる。
右手は言わずもがな、左手が凄い。ゴーンとタッチ一発から始まって、ファンキーでスインギーに、和音から何から、いったい何本の指があるんだ、と思うくらいの凄いテクニックで、ベースラインを彩っていく。ビートも効きまくって、いや〜、スカっとしますね。そして、感動する。
ジャズって、ピアノとか、トランペットとか、何か楽器を演奏した経験があると、ジャズ・ミュージシャンのテクニックの凄さが、体験的に判るんですけどね。そこが、ジャズが難しいと思ってしまうところかも知れない。
このオスカー・ピーターソンの『トラックス』、LP時代からの愛聴盤で、LPサイズで見るジャケットは、白が綺麗で、ピーターソンの横顔イラストも雰囲気があって良かったですね〜。CDサイズになって、ちょっと小振りになったのが残念です。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« 東京は、やっと雪でした... | トップページ | 日本ジャズ大賞『アビス』 »
コメント