ピーターソンの思い出...
オスカー・ピーターソンが逝ってしまった。これでまた一人、お気に入りのジャズ・ミュージシャンが、あの世に旅立ったことになる。ジャズを聴き始めて、30余年。ジャズを聴き始めた頃、バリバリ現役で活躍していたミュージシャンが一人一人と鬼籍に入るのは、実に悲しい。
オスカー・ピーターソンには、お世話になった。とにかく、彼のジャズ・ピアノは判りやすい。なにが凄くて、なにが素晴らしいかが、一聴して判る。スイング感とはどういうものか、インプロビゼーションとはどういうものか、実に判りやすく教えてくれた。
彼は、生涯に録音したアルバムは200枚以上とされるが、驚くことに、彼のアルバムに「駄作」は無い。どれもが「一定水準を保った」アルバムばかりである。確かに、カクテル・ピアノっぽい、軽音楽っぽいアルバムもある。が、それでも、ジャズとしての最低限の矜持は保っていた。
さて、オスカー・ピーターソンのアルバムの中で、今まで一番良く聴いたアルバムは、と思い返してみたら、『ナイト・トレイン』(写真左)だった。
収録された曲は有名スタンダード中心だが、これが、どの演奏も絶品。ベタなスタンダードの「我が心のジョージア」までもが、立派なジャズに仕立て上げられている。冒頭の表題曲「ナイト・トレイン」は、機関車が走る様が、トリオ演奏で活き活きと表現されていて、実に楽しい。
加えて、感動の名曲、名演は、ラストの「自由への讃歌」。1960年代、キング牧師を中心とする「公民権運動」に賛同し、真の自由の実現を願って、ピーターソンが自ら作曲した名曲。敬虔な祈りにも似た感動の名演。
そうそう、もう一枚あった。『プリーズ・リクエスト』(写真右)。ジャズ初心者向けのガイド本に必ずといっていいほど出てくるアルバムなので、初心者向けのジャズ・アルバムと誤解されている向きもあるが、とんでもない。
一聴すると、実に判りやすい演奏なので、そんな誤解をしがちなのだが、実に高度な演奏を繰り広げているのだ。聴けば聴くほど味が出る、って感じのアルバム。聴きやすさ、親しみやすさと芸術性の高さとが両立している、素晴らしいアルバムである。
ピアノ・トリオの基本、見本のようなアルバムです。しかも、録音が良く、音が素晴らしく良い。ジャケットも「さあ、お客さんリクエストありませんか」とでも語りかけているようなニッコリ笑ったピーターソントリオの写真が良い。
う〜ん、この『プリーズ・リクエスト』のジャケット写真のピーターソンの笑顔を眺めていたら、なんだかジーンとしてきた。この『ナイト・トレイン』と『プリーズ・リクエスト』、これからも僕の愛聴盤であり続けるに違いない。
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