良いぞ「モンタレーのマイルス」
ジャズの世界には、「まだ、こんなものがあったんですか〜」っていう音源が残っていることがよくある。どうして今まで、正式にリリースされなかったんだろう、と思うものが沢山ある。
今回、米国西海岸の恒例フェスティバル「Monterey Jazz Festival」が、50周年を迎えたことを記念して、同フェスとコンコード社の提携による新レーベル『Monterey Jazz Festival Records』を発足。貴重な未発表ライブ音源がCD化されることとなった。これは期待できるシリーズである。
今日は、そのシリーズの中で、今年の8月の発売された、マイルス・デイヴィスの「Live At The 1963 Monterey Jazz Festival」(写真左)を聴きながらの通勤の往き帰り。
メンバーは、Miles Davis(tp), George Coleman(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)。「マイ・ファニー・バレンタイン」「フォアー・アンド・モア」という傑作ライブ・アルバムを生み出した「マイルス・クインテット」による未発表ライブ音源である。確か、このメンバーによるクインテットの西海岸お披露目となったライブだと記憶している。
この「Live At The 1963 Monterey Jazz Festival」であるが、これこそ「なんでこんな音源が、正式にリリースされずに残っていたのか」と不思議に思うほど、素晴らしい内容である。しかも、音質が良い。冒頭の「ウェイティング・フォー・マイルス」の存在が粋である。マイルスがステージに現れるまでのステージの雰囲気が実に良い。何気にトニーがドラムのチューニングをバラバラッとやって、アナウンスが入る。う〜ん、良い雰囲気だ。
そして、マイルス登場。パラパラパラパラッ、とミュートのかかったトランペットを吹き上げて、「枯葉」のテーマにいきなり入っていく。ヒェ〜っ、格好ええぞ。格好ええぞ、マイルス。この「枯葉」の演奏、シンプルなアレンジといい、マイルスの奔放なブロウといい、バックの先進的な演奏といい、歴代の「枯葉」の演奏の中でも屈指の名演だ、と僕は思う。
バックの演奏も素晴らしい。まず、一番に感心したのが、トニー・ウイリアムスのドラム。後にも先にも、こんなジャズ・ドラミングを聴いたことが無い。自由奔放、切れ味抜群、臨機応変なドラム。素晴らしい。
そして、ハービー・ハンコックのピアノ。ビル・エバンスの様に弾いているのだが、ビル・エバンスのコピーではない。ビル・エバンスにファンキーな味わいを加えて、モードとコードを縦横無尽に行き来する弾力と爽快感のあるピアノ。
ジョージ・コールマンのテナーは健闘している。コルトレーンの様に吹いては意味がないのだが、どうしてもコルトレーンの様に吹いてしまうのはご愛敬。もともとが、マイルスの要求するレベルが高すぎるのだ。よくよく聴いてみると、コールマンは健闘している。当時のテナーとしては先進的な響きがする。
ロン・カーターのベースも納得の演奏。このアルバムのロンのベースを聴いてみると、マイルスが、トニーが、ハービーが、ロンのベースを重用したかが良く判る。モードとコードを柔軟に弾き分け、決して、旧来のウォーキング・ベースには戻らない。実にクールなベースである。ピッチが狂っているのはいつものこと。それを割り引いても余りある、この頃のロンのベースである。しかしながら、ボウイングはいただけない。切れないノコギリの様に、ギコギコやっている様は大減点。
「枯葉」に続き、「ソー・ホワット」「星影のステラ」「ウォーキン」とヒットパレードの様に、有名曲が並ぶ。どの曲もマイルスは絶好調。自由闊達かつ繊細、硬軟自在、縦横無尽な、驚異的なブロウを聴かせる。このマイルスのブロウを聴けば、マイルスのトランペットは、歴代随一の演奏能力の持ち主であることが判る。ウイントン・マルサリスも真っ青である。
良いライブです。「どうして今まで、正式にリリースされなかったんだろう」と不思議で不思議でたまりません(笑)。
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