ジャズ中級者向けの「E.S.P.」
朝晩は冷え込むが、日中は暖かい一日。しかし、今年は一気に冬がやってきた。残暑は長く、冬は一気にやってきて、今年は秋を愛でる日が少なかったように思う。
ちょっと風邪気味で、昨晩は早々に寝て、今朝はグッスリ寝た。朝は7時に目が覚めたのだが、今朝はしっかりと2度寝が出来た。午前中は車で買い物に出て、午後は暖かいうちに、干潟にウォーキング。夕方は、テレビの英会話番組の録画で少しばかり勉強。
合間合間にジャズを聴いたりして、ノンビリした一日。このところ、アコースティック・マイルスを聴き直していて、改めて、感心することしきり。今回、またまた改めて感心したのが、Miles Davis『E.S.P.』(写真左)。1965年1月20–22日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。マイルスの1960年代黄金のクインテット揃い踏みの初スタジオ録音盤。
ウェイン・ショーターがマイルスの傘下に入って、初めてのスタジオ録音のアルバムである。ウェインが参入する前に、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウイリアムス(ds)のリズム・セクションは、マイルスの下、完全に新しいジャズの世界に突入しており、テナーは、ジョージ・コールマンではあったが、旧来のスタンダード中心のライブ録音が中心に、それはそれは「新しいジャズ」を感じさせる演奏を繰り広げていた。
しかし、ウェインが参入してからは、そのグレードが違う。全てメンバーのオリジナル曲、演奏内容は、モード奏法をベースとした、限りなくフリーに近い演奏が特徴的。完全な、アブストラクトなフリーインプロビゼーションでは無い、最低限の演奏上の秩序を守りつつ、後はドバーッと自由な演奏を繰り広げる。
現在のジャズ・シーンの中で、この「E.S.P.」と同等のレベルの演奏ができるミュージシャンがどれだけいるのか。というか、いないんじゃないか。常日頃は「ジャズは進化しているのか」と問われると、「進化している」と答えるのですが、この「E.S.P.」を聴くと、その自信が揺らぐ。それほど、高度で進化したジャズがこのアルバムの中に詰まっています。
このマイルスの「E.S.P.」というアルバムは、決して初心者向けのアルバムではありません。ジャズの歴史、ジャズの奏法、ジャズの理論などの座学系の勉強も少しづつしながら、ジャズを聴き込んできた、ジャズ中級者向けのアルバムです。
少なくとも、モード奏法って何、ということが、最低、体験的に判っていないと、何が優れているか判らないアルバムです。スタンダード中心のハード・バップを聴き慣れた耳には、なんだか、ユルユルでスカスカの、ちょっといいかげんな演奏に聴こえるのではないでしょうか。まあ、それがモードであり、それが「間を大切にする」当時のマイルス・ミュージックの特徴なんですが。
ちょっと難しいアルバムではありますが、ジャケットもなんだか爽やかで、ジャズの当時の新しい息吹を感じさせます。マイルスもバリバリに吹き倒していて、適度なテンションも心地良く、ジャズ最先端の演奏がここに記録されています。
しかし、この「E.S.P.」を聴くと、ジャズについても、少しは座学系の勉強も必要だなあ、って感じます。そして、モードって、まずは演奏技術が問われる奏法なんですよね〜。ジャズを聴く側も、出来たら、楽器の演奏経験があれば、もっと理解が深まるアルバムだと思います。
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