« マイルスの「定盤中の定盤」 | トップページ | 初心者向けと笑うことなかれ »

2007年11月24日 (土曜日)

ジャズ中級者向けの「E.S.P.」

朝晩は冷え込むが、日中は暖かい一日。しかし、今年は一気に冬がやってきた。残暑は長く、冬は一気にやってきて、今年は秋を愛でる日が少なかったように思う。

ちょっと風邪気味で、昨晩は早々に寝て、今朝はグッスリ寝た。朝は7時に目が覚めたのだが、今朝はしっかりと2度寝が出来た。午前中は車で買い物に出て、午後は暖かいうちに、干潟にウォーキング。夕方は、テレビの英会話番組の録画で少しばかり勉強。

合間合間にジャズを聴いたりして、ノンビリした一日。このところ、アコースティック・マイルスを聴き直していて、改めて、感心することしきり。今回、またまた改めて感心したのが、Miles Davis『E.S.P.』(写真左)。1965年1月20–22日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。マイルスの1960年代黄金のクインテット揃い踏みの初スタジオ録音盤。

ウェイン・ショーターがマイルスの傘下に入って、初めてのスタジオ録音のアルバムである。ウェインが参入する前に、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウイリアムス(ds)のリズム・セクションは、マイルスの下、完全に新しいジャズの世界に突入しており、テナーは、ジョージ・コールマンではあったが、旧来のスタンダード中心のライブ録音が中心に、それはそれは「新しいジャズ」を感じさせる演奏を繰り広げていた。

しかし、ウェインが参入してからは、そのグレードが違う。全てメンバーのオリジナル曲、演奏内容は、モード奏法をベースとした、限りなくフリーに近い演奏が特徴的。完全な、アブストラクトなフリーインプロビゼーションでは無い、最低限の演奏上の秩序を守りつつ、後はドバーッと自由な演奏を繰り広げる。
 

Miles_esp

 
現在のジャズ・シーンの中で、この「E.S.P.」と同等のレベルの演奏ができるミュージシャンがどれだけいるのか。というか、いないんじゃないか。常日頃は「ジャズは進化しているのか」と問われると、「進化している」と答えるのですが、この「E.S.P.」を聴くと、その自信が揺らぐ。それほど、高度で進化したジャズがこのアルバムの中に詰まっています。

このマイルスの「E.S.P.」というアルバムは、決して初心者向けのアルバムではありません。ジャズの歴史、ジャズの奏法、ジャズの理論などの座学系の勉強も少しづつしながら、ジャズを聴き込んできた、ジャズ中級者向けのアルバムです。

少なくとも、モード奏法って何、ということが、最低、体験的に判っていないと、何が優れているか判らないアルバムです。スタンダード中心のハード・バップを聴き慣れた耳には、なんだか、ユルユルでスカスカの、ちょっといいかげんな演奏に聴こえるのではないでしょうか。まあ、それがモードであり、それが「間を大切にする」当時のマイルス・ミュージックの特徴なんですが。

ちょっと難しいアルバムではありますが、ジャケットもなんだか爽やかで、ジャズの当時の新しい息吹を感じさせます。マイルスもバリバリに吹き倒していて、適度なテンションも心地良く、ジャズ最先端の演奏がここに記録されています。

しかし、この「E.S.P.」を聴くと、ジャズについても、少しは座学系の勉強も必要だなあ、って感じます。そして、モードって、まずは演奏技術が問われる奏法なんですよね〜。ジャズを聴く側も、出来たら、楽器の演奏経験があれば、もっと理解が深まるアルバムだと思います。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

« マイルスの「定盤中の定盤」 | トップページ | 初心者向けと笑うことなかれ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャズ中級者向けの「E.S.P.」:

« マイルスの「定盤中の定盤」 | トップページ | 初心者向けと笑うことなかれ »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー