ハード・バップのプロトタイプ
今日は梅雨の中休みか、なかなかの好天。風も適度にあって、あまり湿気を感じない。外を歩いても、日差しは夏の日差しできついが、湿気を感じないだけ、歩きやすい。このところ、梅雨空が続いていて、精神的にも、ちょっと鬱陶しい感じがあったので、今日は、なんだかノビノビする感じ。
こんな日の音楽は、モダン・ジャズでも聴いて、ノンビリしたいもの。そういえば、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の常連の方から、マイルス・デイビスの「ウォーキン」を手に入れたよ〜、というメールをもらって、無性にマイルスの「ウォーキン」が聴きたくなって、このところ、マイルスの「ウォーキン」を結構聴いている。
改めて、Miles Davis『Walkin'』(写真左)。1954年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Lucky Thompson (ts), J. J. Johnson (tb), David Schildkraut (as), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。
それまで、麻薬で不調をかこっていたマイルスが、自力で麻薬を断ち、彼の立直り、復活を印象づける名演奏として名高いもの。それも、ただ、復活を印象づけるだけではない、この「ウォーキン」には、ジャズ演奏の代表的スタイルである「ハード・バップ」のプロトタイプとしての要素がぎっしり詰まっているのだ。
ジャズの定評として、ハード・バップの誕生は、1954年2月ニューヨークの名門クラブでのライヴ、アート・ブレイキーの「バードランドの夜」とされる。まあ、この話は大袈裟で、ハード・バップというスタイルが、一夜のうちに「オギャー」と生まれ出るなんてことはないので、この「バードランドの夜」の演奏も、ハード・バップのプロトタイプのひとつとして挙げられるということだろう.
しかし、このマイルスの「ウォーキン」は、ハード・バップというスタイルが一番判りやすい、プロトタイプ的な演奏として、ジャズ初心者の方から、ベテランの方まで、広く推することのできる名盤だと僕は思う。
特にタイトル曲「ウォーキン」を聴いて欲しい。冒頭テーマ演奏のユニゾン・ハーモニーの付け方が、まったくもって、ハード・バップ的である。アドリブの部分については、さらに顕著で、「間の取り方、緩急の付け方、強弱の付け方、そしてタイミング」を創意工夫して、ビ・バップよりも遙かに長いアドリブをクールに表現する。そして、そのアドリブでのバッキング。アドリブをしている傍らで他のミュージシャンがバッキングするなんて、ビ・バップの時代には無かったこと。
つまり、ハード・バップは、個人の演奏を尊重しつつ、グループ・サウンドの醸成に力点を置いた、演奏スタイルであることが理解できる。ビ・バップの様に超絶技巧な高速テクニックだけを要求するのではない、「ハード・バップ」は、非常にアカデミックな、そしてクールな演奏スタイルであることが、この「ウォーキン」を通じて、大変良く判る。
そして、一番ハード・バップの特徴として挙げられるのが、ベースとドラムの役割の向上。ビ・バップでは、リズム・キープと、アドリブ演奏の引き立て役という限定された役割に限定されていたが、ハード・バップではその役割が、グループサウンドの醸成という枠の中で、かなり変化し、向上しているのが良く判る。リズムの打ち方にも、様々な工夫が施され、アドリブ楽器と同様、「間の取り方、緩急の付け方、強弱の付け方、そしてタイミング」を創意工夫して、グループサウンドの醸成に貢献している。
まあ、そんな難しいことを感じなくても、このマイルスの「ウォーキン」、ハード・バップを代表する名演・名盤として、ジャズの好きな、全ての方にお勧めできる逸品です。それと、古い昔の歩行者用信号機の写真を使って、「Walkin'」とシャレた、印象的なジャケットも素敵です。
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今聴いてます(^^)♪~~
投稿: yuriko | 2007年7月 6日 (金曜日) 21時21分
yorikoさん、どーも。
いいでしょ〜「ウォーキン」。これぞハード・バップです。
「ぱっぱら〜らっ、ぱっぱら〜らっ、ぱっぱら〜らっら〜」
冒頭の表題曲「ウォーキン」のテーマを、このところ、結構、
口ずさみながら、歩いていたりします(笑)。
投稿: 松和のマスター | 2007年7月 7日 (土曜日) 09時34分