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2007年6月 7日 (木曜日)

やっとバドが判ってきた感じ

今日、なんの脈略も無く、ふと思ったんだが、近くに公立高校があるんだが、通学途中の高校生を見ていたら、昔、流行った「ルーズ・ソックス」なるものが、完全に陶太されている。そうかそうか、そうだよな。あれって、どこがいいんだか、日本人の体格に絶対に合わない靴下だった。足が長くなくてはならんし、そもそも、ルーズ・ソックスって、だらしなくて、不潔感があって、すこぶる良くない。それが、陶太されたということは、喜ばしいことではないか。

などと、他愛も無いことを考えながら、会社へ行く。今日は、ちょっと精神的にリラックスしたくて、ピアノ・トリオのアルバムを探す。そして、選んだのが、バド・パウエルの「Bud Powell's Moods」。'54年〜'55年のヴァーヴ録音作品。

この頃のパウエルは、体調・精神状態ともに、凄く不安定で、出来不出来の波が激しく、硬派なジャズ・ファンからすると、聴くに値しないアルバムばかりだそうだが、僕はそうは思わない。この「Bud Powell's Moods」も、僕は、なかなかの内容ではないか、と思う。

パウエルのピアノは、その超絶技巧な早弾きテクニックが素晴らしいと言うが、それなら、テクニックの安定度合いという面で、アート・テイタムやオスカー・ピーターソンの方が上だと思う。ドラム・ベース・ピアノという現代ジャズ・ピアノ・トリオのフォーマットを確立した人、という触れ込みもあるが、それはたまたまだろう。時が来れば、誰もが、この「ドラム・ベース・ピアノ」のフォーマットで演奏しただろう。

Bud_moods

僕が思うに、パウエルの素晴らしさは、相当に強いアタック、強いタッチで演奏の輪郭を最大限に際だたせながら、演奏の抑揚、強弱、陰影を見事に表現したことにあると思う。

この奏法は以前に無かった、突然変異的な奏法である。それまでは、クラシック・ピアノの奏法をベースとした演奏か、客の邪魔にならないような、静かで判り易い演奏に終始するカクテル・ピアノか、聴いてノリの良いスイング・ピアノか、そんな旧来型のジャズ・ピアノの奏法の中で、パウエルの、強いアタック、強いタッチで、グイグイ前へ出た演奏は、実に新鮮であり、実に爽快である。使い古された言葉だが、実に男性的な演奏である。

どの曲も、相当に強いタッチで、グイグイとドライブしながら、ノリの良い、それでいて、繊細で計算された表現のパウエルのピアノが楽しめる。ところどころ、指がもつれたり、フレーズが出なかったりしているが、気にするレベルではない。確かに、全盛期に比べれば、問題となる箇所はあるが、全体として、十分な水準を保った秀作だと僕は思う。逆に全盛期のパウエル演奏より、表現の豊かさ、メリハリの効かせ方、シンプルな味わい、という点では、このアルバムの方が内容が良い感じがする。

はるか昔、ジャズを聴き出した頃、ブルーノート盤の「ウン・ポコ・ローコ」 の3ヴァージョンで始まる「ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1」を聴いた時、何回聴いても、その良さが判らず、聴く度にイライラしたことを覚えている。そうなんだよな。テクニックがずば抜けている訳でも無い、ドラム・ベース・ピアノという現代ジャズ・ピアノ・トリオのフォーマットでの演奏がずば抜けて優れている訳でも無い。

そう、パウエルのピアノって、相当に強いアタック、強いタッチで演奏の輪郭を最大限に際だたせながら、演奏の抑揚、強弱、陰影を見事に表現したことにあると思う。これが、結構、ワン・アンド・オンリーで、パウエル派などという分類言葉があるが、創始者のパウエルだけは突出している。そんな「トンガッた」ところが、僕は好きになってきた。
 
 
 
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