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2007年5月 1日 (火曜日)

『Clifford Brown and Max Roach』

初心に返って「名盤」を聴き直す。今日は、伝説のトランペッター、クリフォード・ブラウンである。ハード・バップ期初期の卓越したプレイヤーであり、「ブラウニー」の愛称で親しまれている。そのテクニックは唯一無二。マイルスを遙かに凌ぐ。今までのジャズ・トランペッターの中でも、ブラウニーに匹敵するテクニックを持つトランペッターは、ウイントン・マルサリスくらい。

しかしながら、このブラウニー、1956年6月26日、リッチー・パウエル(バド・パウエルの弟)の妻、ナンシーの運転する車にリッチーと共に便乗してフィラデルフィアからシカゴに向かう途中、ペンシルヴァニア・ターンパイクで交通事故死。25歳の若すぎる死だった。彼のディスコグラフィーを振り返ってみると、公のデビューが1953年だったので、彼の活動期間は、約3年程度だったことになる。当然、彼の残したレコーディングは多くない。

今回、久し振りに聴いたのは『Clifford Brown and Max Roach』(写真左)。1954年8月の録音。ブラウニーとローチの双頭バンドのスタジオ録音の初期。メンバーは、Clifford Brown (tp) Harold Land (ts) Richie Powell (p) George Morrow (b) Max Roach (ds)。ジャズ入門書では名盤の類として紹介されているが、はたしてそうだろうか。

冒頭の「Delilah」から、グループ・サウンドという観点からは、まだまだ一体感ができておらず、それぞれの楽器のバランスが良くないように思う。ブラウニーのペットは素晴らしい。そのテクニックとフレーズの紡ぎ出しは素晴らしい。しかしながら、少しぎこちない感がある。スタジオ録音ならではの緊張感が邪魔をしたか。

Richie Powellのピアノは淡泊で少しイマジネーションに欠ける感じがする。ローチのドラムはどこか不安定だ。唯一、ハロルド・ランドのテナーは良い。ランドは快調。久し振りに彼のテナーを聴いたが、なかなかのもの。彼のテナーがあって、ブラウニーのペットが映える。その対比が、このアルバム最大のハイライト。
 

Clifford_max

 
25歳の若さで夭折。活動期間は僅か3年。ブラウニーの録音は少ない。その少ない活動期間の中で、名演を残すチャンスは僅か。よって、彼の録音アルバムの全てが、その内容が最高の水準を誇り、最高のグループ・サウンドを聴かせるとは限らない。

今回聴いた「Clifford Brown and Max Roach」は、残念ながら、一連の録音中のベストではない。他にもっと優れたブラウニーの演奏がある。彼のペットを核としたグループ・サウンドがある。たとえば、「Clifford Brown with Strings」「Study in Brown」「Helen Merrill with Clifford Brown」の3枚の方が、遙かに内容が優れていると思う。

それでも、ブラウニーのトランペットについては、素晴らしいの一言。確かに、アルバム毎に、若干の出来不出来はあるが、他のトランペッターと比べたら、彼の演奏の記録は、全てが、完全に抜きん出ている。

「名盤」を聴く。アルバム全体のグループ・サウンドを聴くことと、リーダー・ミュージシャンのソロ演奏を聴くこととは観点が違う。「名盤」の条件とは、アルバム全体のグループ・サウンドと、リーダー・ミュージシャンのソロ演奏が、共に最高の内容を示すことにある、と僕は思う。
  

 
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