アルバムの評価の基準って・・・
今日は朝からぐずついた天気。なんだか梅雨空って感じなのだが、まだ早いだろう。でも、鬱陶しいことには変わりはない。
さて、昨日は、適度に「トンガっていて」、適度に「伝統的な」ジャズとして、テナー・サックス奏者の「ブッカー・アービン」をご紹介した。この「ブッカー・アービン」のそれぞれのリーダー・アルバムの日本での評価を見てみると、なかなか面白いことに気がつく。
日本では、ジャズのテナー・サックスの奏者は、なぜか判らないが、ジョン・コルトレーンが絶対とされる。ジョン・コルトレーンが、ジャズのジャンルにおいて、テナー・サックスの演奏を極めた最高のミュージシャンである、という解釈。つまり、ジョン・コルトレーンを最高の演奏者として、他のテナー・サックス奏者を評価するという「コルトレーン至上主義」が、今でも、まかり通っている。
例えば、先にご紹介した「ブッカー・アービン」のリーダー・アルバムの中で、最高傑作は『ザ・ソング・ブック』とされることが多い。そうだろうか。このブッカー・アービンの『ザ・ソング・ブック』を聴くと、彼のテナーの音が、コルトレーンとほぼそっくりなことが良く判る(詳細を見ると相違点はあるが・・・)。そして、曲名を見渡すと、ほとんどがスタンダード・ナンバー。つまり、コルトレーンに似た、ワンホーン・カルテットによるスタンダード・ナンバー集と言うことで最高傑作という評価。
そうだろうか? ジャズとは「個性を楽しむ」音楽ではなかったのか。「個性を楽しむ」という観点では、適度に「トンガっていて」適度に「伝統的な」ジャズとして、やや「トンガった」方に寄っている『ヘビー!!!』の方が彼の個性の一端と彼の優れた演奏テクニックを楽しめるし、かなり「トンガった」方に寄っている『スペース・ブック』の方が、ちょっと過激ではあるが、彼の個性的なブローイングを心ゆくまで楽しめる。
この2枚に比べると、『ザ・ソング・ブック』は、演奏テクニックが素晴らしいのは、それぞれ同じだが、コルトレーンと奏法が似通っている分、彼の個性が明確でなく、聞き流しているとコルトレーンと間違いそうだ。つまり、ジャズ鑑賞の楽しみとして「個性を楽しむ」という面では、物足りないアルバムと言うことが出来る。コルトレーンとよく似ていて、コルトレーン以上では絶対にないのだが、なかなかに健闘していて、ワンホーン・カルテットで、スタンダードが中心というだけで、最大の評価を与えるのは、演奏家に対して、失礼なのではないだろうか?
ジャズの演奏に「絶対的」な演奏は無いと思うし、「絶対的に優れた」演奏家はいないと思う。「演奏の個性を楽しむことのできる音楽ジャンル」として、様々なミュージシャンを、彼らに対してリスペクトの念を抱きつつ、様々なアルバムを聴き、それぞれの演奏家の個性を楽しむことが、「ジャズに親しむ」の早道ですね。
ジャズの演奏に「絶対的」な演奏は無いと思うし、「絶対的に優れた」演奏家はいないが、「最悪な」演奏と「最悪な」演奏家はいる。それは、「個性が無い」演奏と「楽器が下手な」演奏家だろう。
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Booker Ervin part IIです。
Heavy! は確かに力作です。僕もとても好きな1枚です。その他、Setting the Pace (Prestige), Cracklin' (Roy Haynes with Booker Ervin, New Jazz), The Tranceなどはどうでしょうか?ロイヘインズ作ではScoochieが気に入っています。
何しろErvin のアルバムを聴くと元気が出ます(笑)。ちょっとオーバーかな?でも40歳にて他界するなんて・・・
投稿: KOJI | 2007年5月31日 (木曜日) 21時39分
KOJIさん、ど〜も。松和のマスターです。
う〜ん、アービンと言えば、ブログで挙げたアルバムの他には、
ブルーノート盤 『ジ・イン・ビトウィーン』を最近、時々聴き
ます。フロント2管のユニゾンやハーモニーをはじめ、ジャズ
の楽しさが溢れているところが心地良いです。アービンも溌剌
としていて、気持ち良くテナーを吹いているみたいで、加えて
フルートまで吹いている。
昔はアービンはほとんど聴かなかったのですが、彼のテナーは、
なんかクセになりますね。今では、時々、聴きたくなります。
投稿: 松和のマスター | 2007年5月31日 (木曜日) 23時17分