懐かしの「これもジャズ」・その2 『Velvet Darkness』
今日は、信号機トラブルで、快速のダイヤが大幅に乱れて、仕方が無いので各駅停車に乗ったら、これが凄い混雑で、会社に着いた時には、もうグッタリ。結構、各駅停車も遅延したんだが、それでも遅刻しない僕はエライ。長年社会人をやっていると、遅刻しない「備え」っていうものがあって、ちょっとしたトラブルなら、遅刻することはほとんど無い。
そんな大混雑の電車の中、そんな中での今朝の通勤音楽は、Allan Holdsworthの 『Velvet Darkness』(写真左)。1976年の作品である。このアルバムがリリースされた前年、ホールズワースはTony Williams(ds)の「Lifetime」(バンド名です)に参加して、その名を挙げた。
このアルバム、CTIレーベルからのリリースで、CTIレーベルとは、ジャズの名門レーベルであるVerveで仕事をしていた敏腕プロデューサーCreed Taylorが興したレーベル。70年代に流行ったクロスオーバー/フュージョン的な音作りを特徴としていた。当時停滞気味であったジャズに新しいスタイルを提供し、商業的にも成功したレーベルである。
このアルバムでの参加メンバーは、ロック〜ジャズ系の超一流セッションマンでウェザーリポートにも在籍したAlphonso Johnson(el-b)、The Mahavishnu Orchestra やJeff Beck『Wired』での驚異的なドラミングを聴かせ、現在ではシンガーやプロデューサーとして活躍するNarada Michael Walden(dr),Tony Williams LifetimeのメンバーであるAlan Pasqua(key)、そしてホールズワースである。
ホールズワースはといえば、超絶技巧のギターで、その名を馳せた、とにかく凄いテクニックで弾きまくる「ギター職人」である。その「ギター職人」に、バックが当時、フュージョン界での「そうそうたるメンバー」である。このアルバムは、そのホールズワースの初リーダー・アルバムである。
面白いことに、ホールズワースは、このアルバムについて「失敗だった、気に入っていない」などということをインタビューで答えている。なんだか「セッションのつもりで録音したら発売された」ということらしい。確かに「練られたアルバム」という印象は無い。限られた時間内での「一発録り」的雰囲気がプンプンする演奏である。でも、この雰囲気が「なかなか良いんだな」。
とにかく、才能のあるミュージシャンの作るアルバムは凄い。そんな、劣悪な録音環境にもめげず、これほどのクォリティの作品を作り上げるんだから、凄いとしか言いようがない。確かに、「やっつけ仕事」っぽい感じなのだが、冒頭の「Good Clean Filth」、ディストーション・ギターのヘヴィーなテーマから始まる曲で、この歪んだハードなギターの音を聴くだけで、ゾクゾクする。格好いい、その一言。
ディストーションの効いた、歪んだギターのヘヴィーな音だからといって、ロックとは一線を画している。バックのリズムが違うのだ。そして、ホールズワースのギター・ソロの「ノリ」も、ロックのそれとは明らかに違う。ホールズワースは、ロック・ギタリストでは無く、フュージョン・ギタリストであり、ジャズ・ギタリストであると、僕は思う。
確かに、ホールズワースのリーダー・アルバムには、この「Velvet Darkness」より優れたものは多々あるだろう。でも、このアルバムの持つ「初々しさ」と「シンプルさ」が僕は好きだ。初ソロアルバム用として特別に(プロデューサからの依頼で)用意された、アコースティク・ギターをフューチャーした、ちょっと短めの曲もあったりするが、これはこれで、ホールズワースの歌心が感じられて、ちょっと素敵な小品となっている。
ミュージシャンの意に合わない、劣悪な録音環境でのアルバムが、内容が悪いとは限らない。ミュージシャンの気に入らないアルバムが、内容が悪いとは限らない。これが、ジャズ/フュージョンの面白いところで、このアルバムは、その「良き一例」である。
当時は、「なんでもあり」の「融合(フュージョン)」の時代。今の耳で聴いても、これって「ジャズだよね」。時は1976年、今となっては懐かしの時代。でも「これもジャズ」「これもフュージョン」。良いモノは良い。
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