ビル・エバンスが聴きたくなった
マイルスの「Someday My Prince Will Come」を聴いたら、ビル・エバンスの「Someday My Prince Will Come」が聴きたくなった。まあ、自然な流れである。
ということで、エバンスの「Portrait in Jazz」である。このアルバムは、ジャズ・ピアノ・トリオの名盤中の名盤。僕もジャズを聴き始めた頃、このアルバムを購入した想い出があるが、このアルバムはすっと入れた。とにかく判りやすいのだ。変に捻ったところは無いし、アブストラクトなところも無い。でも、今の耳で聴くと、結構、高度なこと、やっているんだけどね。それを素人に、それと判らせないところが名演名盤である所以である。
まずは左のジャケット写真を見ていただきたい。良いジャケットである。きっちりと髪を分けて、ポマードでキッチリと固めている。ネクタイもキッチリ締め、フォーマルなジャケットを羽織っている。古い時代を感じさせるファッションではあるが、何故が古さを感じさせない。というより、素晴らしく「ダンディ」に見えるのは僕だけかなあ。エバンスの写真の上を飾るタイトル・ロゴもオシャレである。
このジャケットの雰囲気そのものが、このアルバムの演奏の雰囲気と同じ。名盤とはそういうものなのである。ジャケットのイメージそのものが、アルバムの演奏内容そのものな場合が多いのだ。とにかく、このアルバムを聴いたことが無い人は、なるべく聴いて欲しいなあ。ジャズ・ピアノ・トリオの基本形がここにある。とにかく、エバンスのピアノが美しく、躍動的なのだ。
どの曲を聴いても、どれもが珠玉の名演ばかり。名演ばかりだと、聴き進めるにつれ、だんだん「もたれてくる」のだが、このアルバムは例外。それだけ、シンプルでストレートな演奏なのだ。無駄の無い、リリカルな、それでいて躍動感溢れる演奏。まあ、大げさに言うと「奇跡」に近いアルバムである。
その中でも、名演中の名演として光り輝くのが、「Come Rain Or Come Shine」「Autumn Leaves」、そして「Someday My Prince Will Come」、そしてラストの「Blue In Green」。「凛とした静けさ」と「跳ねるような躍動感」のコントラスト、そして、優しくもあり、時に攻撃的にもなるインタープレイが感動的だ。
ピアノと、それを伴奏するベース&ドラムという図式ではなく、三者対等なジャズ演奏。ここまでくると「ジャズは芸術だ」という言葉に納得する。
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私が最初に知ったのが、コンピレーションの中に入ってるビル・エヴァンスでした。ジャズを聴く耳なんて全く持ってなかったのですが、そんな私でも美しさが分かる曲でした。でも、注意しないと、ビル・エヴァンスだけを聴いて完結しちゃいそうで、怖いなぁとも思いました。
投稿: yuriko | 2006年9月30日 (土曜日) 21時20分
yurikoさん、ど〜も。
そうですね。ビル・エバンスは、そのピアノ・タッチの美しさ故に、確かに初心者にとって「危ない」ピアニストですよね。
日本では、ピアノと言えばクラシックのイメージが強く、初心者のうちは、ジャズ・ピアノにも「クラシック」的雰囲気を求めてしまうことが多くて、そんな時、エバンスのピアノがピッタリ来ちゃうと大変。他の「ジャズ的な黒いファンキーな音」のピアニストの演奏にいけなくなっちゃうんですよね。
ジャズは、基本的には黒人の音楽がルーツなので、「黒くてファンキーな」ピアノが主流ですから、これは大変。この「初心者エバンス症」に陥った、幾人ものジャズ初心者の方を僕は知っています。
投稿: 松和のマスター | 2006年9月30日 (土曜日) 22時07分
昨年度よりアナログオーディオに揃え、同時にJAZZを聴き始めた新参者です。
すぐにビルエヴァンスにどハマりしました。
マスター曰く初心者にとっての「危ない」ピアニストですね…
オスカーピーターソンや元来好きであったキースジャレット、レッドガーランド。
今を生きるブラッドメルドー、新進気鋭のガブリエルラッチン、エスペンエリクセンと趣向を変えてみたり同じ匂いを追ってみたりしても、結局エヴァンスが一番いいという「初心者エバンス症」になっています。
投稿: JBL4311 | 2020年11月29日 (日曜日) 12時25分